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2024年10月             第66回感染管理抄読会の紹介

2024年10月の感染管理抄読会で取り上げた論文の紹介です。
今回のテーマは、バーチャルリアリティを活用した標準予防策のための教育に関する論文でした。

論文タイトル
Effectiveness of game-based virtual reality phone application and online education on knowledge, attitude and compliance of standard precautions among nursing students
(看護学生の標準予防策に関する知識、態度、および遵守に関するゲームベースのバーチャルリアリティスマートアプリとオンライン教育の効果)

書誌情報
PLOS ONE. 2022 ;17(11):e0275130.
doi: 10.1371/journal.pone.0275130. eCollection 2022.

この論文を選択した理由
今年度、私の所属部署はCOVID-19とクロストリジウムのアウトブレイクがあり、感染対策を強化するとともに医療者の感染予防対策不足が指摘されました。改めて感染管理についての教育が、いかに重要であるか考えさせられました。バーチャルリアリティ(VR)を用いた教育ということで、今の時代を反映した研究であることに興味を持ちました。看護学生を対象とした研究ですが、臨床の看護師教育にも活用できるのではないかと期待し、この文献を選択しました。

抄録
ゲームベースのVRスマートフォンアプリケーション(VRスマホアプリ)は、臨床応用の準備としてリアルな環境を作り出し、学生の標準予防策の知識と遵守を向上させることができる。標準予防策に関連するオンライン教育とゲームベースのVRスマホアプリの効果を検証するために、3年次および4年次の看護学生126人を対象に実験的研究を行った。学生は無作為に2つのグループに分けられ、実験群にはオンライン教育とゲームベースのVRスマホアプリを使用し、対照群には従来の教育を行った。本研究は、講義や中間・期末試験と重ならないように、2019年7月から8月にかけて実施された。対象の看護学生に対して標準予防策に関する知識、態度、遵守を評価するツールパッケージが事前・事後テストとして用いられた。その結果、標準予防策に関する知識、態度、遵守状況は、2つのグループ間で異なっていた。実験群の看護学生の成績は、オンライン指導とVRスマホアプリによって有意に向上した。本研究は、看護学生におけるオンライン教育とVRスマホアプリの有効性を実証した。

抄読会を終えての感想
VRを活用した教育ということで、今の時代を反映した研究であることに興味を持ち、臨床現場で生かせると期待してこの論文を選択しましたが、抄読会では、方法や結果の示し方についていろいろな意見が出て、ディスカッションすることができました。たとえば、無作為化の方法や教育内容についての記述がないこと、表と本文の値が一致していないことなどの指摘がありました。また、介入群における介入後のテスト平均点が50点以下と低く、教育効果が本当に得られたのか、評価方法に問題があったのかという意見もありました。
ゲームベースのVRスマホアプリについても、最後まで内容が不明であり、期待した知見が得られた訳ではありませんでしたが、今後こういった研究が増えていくことが予想され、研究を参考にする際に気をつけなければならないと思いました。論文をクリティークする力がまだまだ不十分であることもわかりました。ディスカッションで様々なご意見を頂き、論文を読むときの視点についても学ぶことができました。

                         (大学院生:H.T.)

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