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職業別でみる新型コロナ感染症のリスク

今回は血清の陽性反応から職業別に感染リスクをまとめた論文を紹介します。医療・介護従事者が感染リスクが高いと言われていますが、病院や施設では様々な職種の人が勤務しています。今回は、職場や職種によって、感染リスクが異なるのかについて述べている論文を紹介します。

以前の記事にコロナウイルスワクチンの効果についての論文や高齢者施設における感染対策の論文も紹介されておりますので、ぜひそちらもごらんくださいね。

論文タイトル
Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Seropositivity among Healthcare Personnel in Hospitals and Nursing Homes, Rhode Island, USA, July-August 2020
(米国ロードアイランド州の病院および介護施設における医療従事者の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2の血清反応(2020年7月~8月))

論文の概要
【背景】
医療従事者はCOVID-19への感染リスクが高いとされている。
【方法】
2020年7月17日から8月28日にかけて、アメリカ ロードアイランド州の15の病院と56の介護施設で血清疫学調査を行った。
【結果】
9,863人の医療従事者における全体の血清陽性率は4.6%(95%信頼区間4.2%~5.0%)であったが、病院関係者と介護施設の職員では4倍のばらつきがあり、病院職員(3.1% 95%信頼区間2.7~3.5%)、介護施設職員(13.1% 95%信頼区間11.5~14.9%)であった。また、介護施設では、新型コロナウイルス感染症病棟で働く職員の有病率が高かった(24.1%、95%信頼区間20.6~27.8%)。調整後の分析では、病院の看護師と受付・医療助手は、医師よりも血清反応を示す可能性が高かった。老人ホームでは、看護助手、ソーシャルワーカー、ケースマネージャーが、作業療法士、理学療法士、言語療法士よりも血清反応を示す可能性が高かった。すべてのケースで介護施設の職員は、病院の職員に比べて血清陽性率が高かった。
【結論】
職業を問わず、介護施設の職員を感染から守るためには、検査や、トレーニングなどの予防をさらに強化することが必要である。

コロナ禍を支える医療介護職の感染リスク
介護施設では利用者と密に接するため感染のリスクが高いと考えられますが、本論文でも病院職員に比べてCOVID-19の陽性率が約4~5倍という結果が出ており、施設での感染対策の難しさを改めて感じました。
また、職種別にリスクの高い職種が明らかにされており、業務内容やかかわり方の違いなどからリスクの高い行動を予測できれば施設における感染地策の参考にできるのではと考えました。

今回の論文の評価は…
臨床活用度 C                          
論文の評価 C

論文の評価の理由とディスカッション内容
論文全体としての目的が広く設定されており、方法や結果がわかりにくくなっている点や、結果を根拠にしたこと以外が考察で述べられている点などから論文の評価、臨床活用度ともにCとしました。

ディスカッションでは、目的があいまいである点、結果や考察に一貫性がない点などがあげられました。タイムリーな話題や大規模なデータを取り扱っていても、目的や結果のまとめ方ひとつで研究としての評価が大きく左右されるということを改めて考えました。
また施設では限られた時間や人員の中で、介護度や感染リスクの高い利用者にケアを実施していること、施設でのケアや関わり方に合わせた予防策が必要性を感じた論文でした。

書誌情報
Emerg Infect Dis 2021 Mar;27(3):823-834. doi: 10.3201/eid2703.204508.

(博士前期課程 M. A. )

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