なぜ町田ゼルビアは叩かれるのか?ここ2年の出来事を振り返る①
最近ネット上では常に話題の中心であった町田ゼルビアが、遂にSNS上での誹謗中傷に対して刑事告訴に踏み切った。
そもそもなぜ町田は叩かれるのか?
メディアはサッカーメディアも含めてロングスローやボールへの水かけが批判を受ける主な要因にしている。それは分かりやすいからなんだろうけど、それでは説明不足だと思う。
個人的には、ここ2年での様々な出来事を経ての今回の事態であるように感じる。
ということで、ここ2年の町田の物議を醸した出来事を振り返る必要があるのではないかと思ってこの記事を書きます。
批判浴びて当然と思うことも他もやってるだろってことも、別に町田は悪くないという出来事もあるけど、そんなことで?ってことでも人は怒るものである。
そのために起きた出来事は、悪い悪くないにかかわらずまとめていきたい。
前段(町田の簡単な歴史)
その前に町田の簡単な歴史から。
FC町田ゼルビアは東京都町田市で活動していたFC町田を母体にして発足したチーム。
Jリーグ入りは2012年だが、この年はJ2最下位で1年でJFLに降格。(現状唯一の降格によるJリーグ退会のケース)その後2014年のJ3発足で再びJリーグ入りし、2016年にJ2再昇格。
2018年にはスタジアムがJ1ライセンスを満たせず、4位に入りながら昇格プレーオフに参加できないことも。
ここまではJ2最低クラスの人件費で運営していたチームだが、2019年からサイバーエージェントが親会社となり資金力がアップ。
そして5年目の2023年には親会社の藤田晋社長が自らクラブの社長に就任。
この年から下記のようなJ2の主力総取りのような大幅な選手補強を敢行。同時に青森山田高校で高校サッカー選手権や高円宮杯を制覇するなど高校サッカー界で名を轟かせた黒田剛監督を監督に招聘。
プロでの選手もコーチ経験も無い指導者を監督に据える前代未聞の体制ながら開幕から上位に付け、シーズン中盤からは一度も首位を譲ることなくクラブ史上初のJ1昇格を達成した。
そして今季は、開幕2戦目でJ1初勝利を上げると連勝を重ねて首位に。夏まで首位をキープし続け現在は3位と、シーズン終盤まで優勝争いを繰り広げるサプライズを見せている。
ただこの2023年から、他チームサポーターからの批判が増えてきたように思う。そしてJ1昇格と優勝争いの中でさらにヒートアップし、とうとう今回の事態に。
ということで2023年からここまでの出来事を振り返っていきたい。
町田の出来事・キーワード(2023)
ロングスロー
ゴール前でのスローインで、ゴールに向かって長い距離を投げるロングスロー。
ゴールを狙う手段としても高校サッカーでは多用されているが、未来の無い手段やつまらない、サッカーの本質を損ねるなどの批判は根強い。
黒田監督が率いていた青森山田高校でも多用されていたが、黒田監督はプロチームである町田でもゴールを奪う手段として積極的に使うように。
2023年の初陣から早速多用するようになった。
このようにしてロングスローは町田サッカーの代名詞の一つとなっていった。
一方で、上記のつまらないという評と同じかそれ以上にロングスローの助走にかける時間やタオルでボールを拭く行為に対して批判の声は多い。
前者は遅延行為ではないか?という点、後者は道具を使っているという点が批判の大きな理由である。
ただし助走もタオルで拭くことも町田に限った話ではない。
このように他チームでも普通に行われていることではある。
ただ町田はロングスローの回数がダントツで多いために目に付いてしまうのだろう。
下記は今季の折り返し時点でのロングスロー回数だが、2位に4倍近い差を付ける回数のロングスローを行っているのである。
そしてロングスローの時のタオルは争いの種となっていく。
時間稼ぎ
バスケのように時間制限もなく、ピッチも広いサッカーでは、時間稼ぎは特に試合終盤に当たり前のように行われている。
有名なのはコーナーフラッグ付近でのボールキープによる時間稼ぎ(鹿島がやっているイメージが強いために「鹿島る」というネットスラングも)や倒れた時にゆっくり起き上がったり痛がったりするような行動。
後者に関しては、サッカーはコロコロ転がって痛がる奴ばかりというサッカーdisをよく見かけるなど評判は良くない。そして町田は主にこちらの批判を受けてきた。
ロングスローに代表されるように、勝利のために様々な手段を徹底してくる黒田監督のスタイルであるが、他サポからすればイライラする要因でもある。
Twitter(X)では4/12のジュビロ磐田戦から時間稼ぎへの苦言の投稿が目立つようになっている。そして5/13の東京ヴェルディ戦後の監督コメントでは、城福監督が町田の時間稼ぎに言及した。
「時間稼ぎと思われるような倒れ方をしている状況に、より手応えがあったからこそ悔しいと選手たちは感じていて、早く立ってほしいという思いで見ていたと思います。」
さらに7/13の試合後にも城福監督は以下のコメントをしている。
「相手はとにかく倒れて、やれないかと思っていたあとにまたプレーする。それに対して、選手は辛抱強く、我慢強く、それで追い付いたからこそ、サッカーで勝ちたかった」
「時間を分断する行為がものすごく多いというのは、J2を戦ったうえで感じている。自分たちのリードで極端にそれが出てくるチームと、自分たちがリードしてもほとんど変わらないチームがあり、我々は後者だと思っている」
このような公式コメントもあり、町田は時間稼ぎをするチームという印象が広まっていったように思える。
秋田戦でのノーゴール
4/8に行われたブラウブリッツ秋田戦の前半、秋田の青木のロングシュートが明らかにゴールラインを割っていたにもかかわらず主審はノーゴールの判定。VARの無いJ2故に起きてしまった誤審であった。
なお試合はその後にゴールを決めた秋田が勝利。
その後JFAの審判委員会でゴールシーンは誤審と認められている。
試合後にGKのポープウィリアムは自身のnoteで、ゴールだと認識していたが審判が見えていない可能性があるだろうと入っていないような振る舞いをしたと公言した。
(なおこのnoteはプロ選手とは?ということを考えさせられる必読の内容。おそらく同じ立場なら同じような行動をする選手が大半ではないだろうか。)
藤原優大退場と乱闘
4/12に行われた磐田戦、ボールの奪い合いで相手を突き飛ばした藤原優大が一発レッドカードで退場となった。
試合後には黒田監督が不可解な退場とコメントし、ネット上で批判を受けている。
またTwitterでは発言への批判に加えて「荒い」、(上述のように)「時間稼ぎ」という批判コメントが多数あり、この頃から町田に対してこの2つの批判が起きていることが伺える。
なお試合後にポープウィリアムは磐田の松原后から酷い発言をされたとSNSで怒りの投稿をしており、双方にとって後味の悪い試合となっている。
熊本戦でのトラブル
4/29に行われたロアッソ熊本戦では、試合後に判定を巡って両チームが入り乱れる事態に。その際にミッチェルデュークが熊本の大木武監督に侮辱的なジェスチャーをしたのではないかと物議を醸した。
さらにピッチ外では、熊本サポーターに暴言を吐いた町田サポーターがいたという投稿も。
選手とサポーター双方に悪印象を抱くようなトラブルであった。
バスケスバイロン移籍
2023年7月、バスケスバイロンが東京ヴェルディから町田へ移籍した。
この時町田はJ2の首位、ヴェルディは2位だったが、同じJ2クラブからの引き抜き、さらに直下の順位のチームの主力を引き抜くという異例の移籍劇だった。
黒田監督とバスケスは青森山田高校でも監督と選手の関係性だったので、それも影響したと考えられる。
すぐ上の順位で同じ東京のチームへの主力移籍に当然ながらヴェルディサポーターは激怒。
さらに3日後に両チームの直接対決の試合というタイミングでの移籍であり、選手紹介ではバスケスと黒田監督に大ブーイングが起きた。
(なお記事書いてる自分もヴェルディを応援してるので、この移籍劇に激怒していたことは、利益相反の公表的な感じで書いておきます)
客観的に見ても、この補強は町田批判がヒートアップする出来事であったように感じる。
松本大輔の移籍
8/3に、松本大輔の鳥栖からの移籍が発表された。
だが松本はレンタル移籍によりレノファ山口でプレーしていた選手であり、こちらもJ2からの引き抜きである。
レンタル移籍の選手が試合に出れていないために他に再レンタル移籍という形は時々あるが、レンタル先で主力になっている選手を引き抜く移籍は極めて少なく、容赦のない補強であった。
「悪いベテラン」
夏にライフスタイル誌のGOETHEのwebサイトで黒田監督特集が組まれた。
その中で、「良いベテランと悪いベテランという区別があるんです。いいベテランはチームにとってプラスになるけれど、悪いベテランはチームにとってマイナスにしかなりません。」という発言があった。
これに対し、直前に2013年から在籍していたベテランの深津康太の岩手への移籍が発表されていたことから、直後にそんな発言をするのか、明らかな選手批判ではないかという批判が起きた。
当然ながら関係性は不明である。
また深津も出場数が減っていた中でオファーを受け、まだ試合に出たいために移籍したとコメントしており、どのチームでも普通にある移籍劇であったことは念の為付け加えておく。
エリキの負傷リリース
スピードとシュートの上手さでゴールを量産していたエリキが8月の清水戦で負傷交代となる事態に。
後に左膝の靭帯断裂の大怪我であると発表され、シーズンを棒にふることとなった。
怪我のリリースで、前半5分のプレーにて負傷
※その後、前半34分までプレーするも、続行不可能となり前半37分に交代と怪我に至る具体的な記述がされていたが、これに対して嫌な書き方という批判が起こった。
他の選手の負傷リリースで具体的な記述がされていないこともあり、清水のせいにしたいのか?と捉えられてしまった。
秋田戦の再試合日程発表
7月に開催される予定であった秋田対町田の試合が大雨の影響で試合中止に。
再試合は3ヶ月後の10/14となったが、再試合日程発表後に、秋田が日程決定への経緯について公式コメントを発表。
「対戦相手クラブのスケジュールを最大限配慮した開催候補日を複数案提示したにもかかわらず、期日までに対戦相手クラブからの回答・承諾を得ることができず、その後、別日の提案を受けておりましたが、スタジアムの確保が不可能だったため先に当クラブが提示した日程での検討を打診しておりました。」と書かれており、明らかに町田に怒りを抱いていることが伺える声明であった。
なお町田の原フットボールダイレクターは連絡に齟齬があったことを認めている。
この出来事に対しては、連絡もまともに出来ないのかという批判と、昇格争い真っ只中のために有利な日程にしたくて遅らせたのではないかとい勘繰り(10/14はリーグ戦の組まれていない週であった)からの批判が沸き起こった。
アデミウソンの移籍
前述の通りエースのエリキがシーズン絶望の大怪我を負った町田はFWの緊急補強を敢行。
過去にガンバ大阪でプレーしていたアデミウソンを9月に獲得した。
だがガンバを退団したのは酒気帯び運転の検挙が原因であり、加入には賛否が巻き起こった。
なお3試合1ゴールと大きな活躍には至らず、シーズン終了後に退団。現在はブラジルでプレーしている。
ということで、ここまででも色々な出来事があり長くなったので、2024年の出来事は次の記事で。
最後はお口直し?にエースのエリキのゴール集を。
(J2でこの選手を相手にしないといけなかったのは相当厄介だったよね)