Review -OKAMOTO'S 「KNO WHERE」
「友達にも聴いてほしいな。」日常の中で気に入った曲に出会うと決まってそう思いインスタグラムのストーリーズで共有する。かれこれ3年以上続けている。
ストリーミングサービスの共有機能を使ったりCDやアナログ盤の現物を撮影したりして投稿するのだが、基本的に自分の言葉は添えていない。下手なコメントで受け手を納得させようとしたくなくて、「気になったらチェックしてみてね」程度の気持ちでいる。初めの気持ちと矛盾しているかもしれないが。でしゃばっていると思われたくないという思いがある。
しかし、ある作品に対してはインスタグラムのホーム画面を右にスワイプした後も感情が一向に収まらい。それが4人組ロックバンドOKAMOTO’Sが新たにリリースした「KNO WHERE」だ。
おそらくこれは僕にとっての2021年No. 1作品となるであろう。それくらい心に刺さった。発売から2週間が経つが、気持ちは高揚したままずっと聴き込んでいる。
CDが手元に届いてから3日ほど経った時か、もっとこの感情を他の人に伝えたいと思っていた。しかし、依然として友達にはなかなか会えない時期だ。直接話をすることは難しい。そこで、ここへレビューを残すことに決めた。
予め断っておくが、僕は音楽家でなければ音楽評論家でもない。だから芯を突くような批評が出来るだけの知識は無いし文章力も無い。
レビューと言ってしまったが、これから書くものは要するに「友達」に向けた作品に対する「感想」であると思ってほしい。しかし、そこから少しでも好きってこの気持ちが伝わってくれたら幸いである。
僕が感じた本作品の魅力は2つある。
①17曲もあるのに飽きない
まずこのアルバム、収録曲数が全17曲だ。
17曲もある!リリースが発表された時の率直なリアクションだ。イントロが魅力的でなければリスナーは聴くことを止めると言われる時代にこの曲数はかなり思い切った決断だなと思った。(後で知ったことだが、パンデミックによってアーティストは制作時間を確保できるようになったのか、あるいはリスナーも音楽を聴き込む時間ができていったからなのか、結果的に海外ではアルバムは長い構成になってきているらしい。)
しかし、一曲目から通しで聴いていても退屈するパートが無い。理由を考えてみたが、曲ごとのアレンジが多彩であることが重要なポイントだろう。17曲もあるがロックバンドらしいストロングな曲だけでなくバラードもあり、加えてクラブでかかりそうな曲や弾き語りのインタールード的な曲などが並立している。自分の耳が判断するに似ている曲は無いと言ってもいい。
また、17曲ありながらアルバムの総時間は1時間3分だ。この長さもリスナーを飽きさせない要素の一つだろう。そこまで長くないので移動中や家事をしている間に聴ききってしまうことが出来る。参考までに、aikoの最新アルバムは収録曲数13曲で総時間は1時間1分だった。長いことが悪いとは思わないが、あくまで参考として紹介した。
②単純明快で今に寄り添うメッセージ
アレンジとは対称的に、リリックに込められたものは全編を通してはっきりしていて、それは彼ら自身のロックそしてバンド音楽に対する愛情と、それをこれから先も演奏し続けて後世に残すという現在進行形の意志だ。
それを伝えるリリックが各曲の随所に現れるが、その多くに分かりやすい言葉が使われていて耳馴染みが良い。シンプルな言葉はロックとの相性も良い。
それに加えて、パンデミックの最中にある社会に対する嘆きとも受け取れる言葉もあり、現実が反映されていることで曲の世界とリスナーとの距離が近いものになっている。
以上がKNO WHEREの魅力である。これは余談なのだが、リリックの中にタイトルが入っている曲はそうではない曲よりもポップに感じる。本作品はというと17曲中9曲(#2, #3, #4, #5, #6, #10, #11, #14, #16、#13も含めれば10曲)がこれに該当している。特に#2と#3はタイトルをリフレインしていてノリやすいので単体でも聴くことをオススメしたい。
とはいえ、やはりアルバムは一曲目から通して聴く方がより味わえるし、特にこの作品はそうするべきだ。アレンジの違うそれぞれの曲が互いの魅力を引き出し合いその中に込められたメッセージを強く感じることが出来るはずである。
こんな現代社会だからこそ、1時間3分だけ音楽を聴くことに時間を使ってみるのはいかがであろうか。
参考資料
「KNO WHERE」特設サイト https://www.okamotos.net/special/kno_where/
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