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"仕事を移譲する"とはどういうことなのか

ここ1年間で様々な仕事を任せてもらえるようになった。また仕事を人にお願いし、小さな組織として動くことも増えた。その両輪の中で発見した「仕事を移譲していく流れ」についてまとめていく。

仕事を覚えるとはどういうことか

そもそも仕事の移譲の前に、仕事を覚える必要がある。

僕にとって「仕事を覚える」とは以下の3つのフェーズを踏む。

仕事を覚える3段階

1. 属する組織にすでにあるやり方を一通り覚える
2. 組織外の知識を得て、アレンジ案を実装しFBループを回す
3. 自分の限界を知り人を頼る。得た知識で人を育てる。

つまり守破離である。いわゆる「一人前」とはフェーズ2に到達することをいうのだろう。個々のフェーズでは、以下のように必要なサポートや本人のマインドセットが移行していく。

  1. 周りのサポートが必要な依存状態

  2. 独立独歩する自立

  3. 相互依存的な自律

このマインドセットの変遷は仕事の領域ごとに起こり得る。また、1つの領域でこれを経験した人は自身で再現できるので成長が早く進む。

仕事の移譲はフェーズ3で起きる課題である。自分の限界を知り人を頼るようになると自然と総力を上げて仕事を回すことの価値が見えてくる。その後、人を育てていく価値が理解できるようになる。

仕事を頼む流れ


ここまでは「仕事を覚える」側の視点を見てきた。では「仕事を頼む」側に立つとどのような景色が見えるのだろうか?

昨年書いたnoteから引く。仕事を依頼する人は以下のような順序で仕事を人に依頼していく。

仕事の依頼フロー

1. 仕事の要件が決まる
2. 仕事を仕上げられそうな人を頭に思い浮かべる
3. 軽い手伝いとして頼む
4. 手伝いの質が良ければ実案件を振る
5. 再度、オファー(本業化)する

上記のnoteでは「仕事を振ってもらうためにフェーズ2で想起してもらえる人になろう」という話をした。

実際に「仕事を頼む」側になると想起できない問題

「仕事を頼む側」からすると意外と思いつかない

一方で、実際に仕事を依頼する立場になってみると「そのタスクを十分に倒してくれそうな人が思いつかないケース」に割と遭遇する。

そういう場合は

  1. 誰かを組織内 / 組織外から見つけて力を貸してもらう

  2. 今、組織内にいる人で適性を見つけて育成していく

の2パターンの手が取れる。パターン1は社内の場合は依頼で済み、社外の場合はニーズに応じて契約を巻き依頼する形になる。

今回はより難しいパターン2について深く触れる。

仕事を手放していく流れ

仕事を手放していく流れ

* 向いている人を見つける
* 段階的にタスクを渡していく
* 1人で倒す様を見届ける
* すべてを任せて挑戦してもらう

向いている人を見つける

まず移譲していきたい仕事に向いている人を探す必要がある。その人が未経験の場合は2つの探し方をしていた。

  1. 頼む人の認知特性を知る (仕事の領域的特性)

  2. 大聖堂型かバザール型か (仕事の時間的特性)

頼む人の認知特性を知る (仕事の領域的特性)

本田式認知特性研究所より

認知特性というものがある。視覚・聴覚・言語のどれを優先して情報を取得しているか?という人ごとの認知傾向を表すものである。これを知ることで「どういうコミュニケーションや仕事が向いているのか」をある程度洗い出すことが出来る。

例えば、Webエンジニアなら視覚優位の人はフロントサイドエンジニアに向いているだろう。技術広報ならばアイキャッチ制作や動画制作に向いている。

認知特性に沿うと自然と積み上げている量も多いので、仕事をお願いしても成長が早くうまくいくことが多い。「その人のデフォルトの認知方法」を知ることで本人にとってやりやすい方法でコミュニケーション・アウトプットを行うことが出来る。

大聖堂型かバザール型か(仕事の時間的特性)

エンジニアリングマネージャーのしごと

『エンジニアリングマネージャーのしごと』いわく、人には2種類のタイプが居る。

  • 大聖堂を積み上げていくコツコツタイプ

  • バザール(市場)をふらふら歩いて興味があるものに食いつくタイプ

大聖堂型の人はスケジュールがはっきりしていて自分のペースで積み上げていく仕事を好む。この人タイプの人は長期的で自己裁量がハッキリ見える課題に向いている。反面、突然振ってくる仕事や急遽の変更を嫌う。

バザール型の人はその時々で興味が移ろいゆくため短期的で魅力的に映る仕事が向いている。その時のワクワク感が冷めないうちにシュッと実装する短期的な仕事や変化の多いタイプの仕事を好む。一方で積むタイプの仕事や長期的に先が見える仕事を嫌う。

認知特性自体があっていても、このタイプを見間違えると、お願いした方々がどんどんつまらなさそうでやりにくそうな顔になっていく。ここも確認したい。

段階的にタスクを渡していく


階段を1段ずつ登ってもらう

向いている人が見つかったらどんどん仕事を渡していく。このとき注意すべきなのは「恐怖を感じない程度にゆっくり渡していく」ことだろう。

コンフォートゾーンから一歩だけ踏み出したようなタスクを少しずつ渡していく。そうすると特に抵抗なく着実に仕事を覚えてもらうことができる。

ちなみにお願いする側の焦りによって本人が持ちうる成長速度より速く覚えるように急かしてもうまくいかない。成長に必要な回数や気付きを得ないと上手く進まないので「思ったよりも早く伸びない」はあくまでも依頼側の都合でしかないことに注意したい。

1人で倒す様を見届ける

ここまでくれば守破離の守まではほぼ来ている。もうほぼ自立している状態に近い。それを確かめるために、一度1人ですべてのタスクを担当してもらい、それを後ろで見守るだけにする。そこで大きな失敗がなければ問題がないとみなす。

いつでも失敗して良いように自分が後ろで見守り、本当に質を損ないそうな時以外は何もしない覚悟を持つ。

すべてを任せ挑戦してもらう

既存の谷を超える

守破離の破離、つまり「既存の状態を打ち破り新たな状態を作る」を担ってもらう段階に来た。ここまで来ると既存のやり方で人を育てることができる。またすでにあるものを変えて、新たな状態に持って行くことができるようになる。

なぜ仕事を移譲する必要があるのか

ここまで具体的な移譲方法について書いてきた。では、そもそも何故仕事を移譲する必要があるのだろうか?

移譲する最も強い理由は「挑戦する時間を創るため」である。

  • 人に仕事を渡すことで既存の仕事をやる時間が減る

  • トップラインを伸ばす動きにシフトできる

  • 結果として組織全体のトップラインを上げることができる

未知に飛び込むためには今の仕事以上にエネルギーも時間も必要になる。それを乗り越えた結果、組織全体のトップラインが上がっていく。チームにとってトップラインを作る動きを自分しか担えないならば、その仕事を無くすかチームメンバーに既存の仕事を寄せて時間を作るしか方法がない。

組織全体を伸ばすために人にどんどん仕事を渡して「挑戦」が必要になっていく。

あわせてよみたい

おわりに

仕事の移譲の方法についてまとめた。ちなみに移譲自体もHowでしかない。最終的にはそれを何のためにやりどういう理想状態を作りたいのかが大切である。

以上。


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