かつての風景の記憶を静かに伝える 『すすきみみずく』
池袋駅東口から少し歩いたところにある『雑司が谷鬼子母神堂』に、可愛らしいツクリモノが売られている。
なんでも、昔々貧しい子が、母の病気を治すためここへお百度参りしたところ、神さまが現れ「このすすきみみずくをつくって売りなさい」と仰るので、その通りにすると飛ぶように売れ、子は母に薬を買うことができたそうな。うーんなんだかやけにプラグマティックな神さまだ。
ともあれ、誰もが一度は見たことがある(?)このすすきみみずく。今は材料がとれずに製作が困難なのだとか。
それを知った時にようやく気づいたのだけど、このすすきみみずくの素材は、かつて武蔵野の茅場から集めてきたものだったのだ。
高層ビルが立ち並ぶ池袋も、当時は一面すすき野が広がっており、かの貧しい子は、黄金色の野に分け入り、この愛らしいつくりものをこさえていた。
その姿はすでに消え去り、みることは出来ない。そんな中、このすすきみみずくは、かつての風景の記憶を静かに伝えてくれているように感じた。