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令和7年司法試験に向けた過去問ランク表 民法
この記事では、令和6年の司法試験の傾向を踏まえて、令和7年の司法試験の対策になる過去問を挙げます。
単に、「この論点が危ない」という意味で過去問のランクをつけるのではなく、近年の傾向を踏まえ、試験委員が求めている能力を高められる過去問をランクとして上げていきます。
まず、令和6年の司法試験民法の特徴を述べます。
設問1(1)ア ではマイナーな論点が出され、ここでは条文操作を求められたというよりも、民法の基礎がわかっているか、という点が問われました。つまり、成立要件、有効要件、効果帰属要件を理解しているかが問われています。加えて、占有権原とは何か、という基本的事項を踏まえて、論述することが求められていました。
他方設問1(1)イ では、比較的多くの受験生が気づく条文を摘示させて、その要件を当てはめさせるという問題でした。
設問1(2)ア では、近年の傾向からは珍しく、いわゆるオープンクエスチョン型の問題でした。つまり請求2の法的根拠を特定する作業が求められ、ここでも法的根拠の特定として条文を指摘して、当てはめる、という作業が求められましたが、この条文の指摘として(出題趣旨によると)ややマイナーな条文を挙げなければならず、条文の検索能力が問われていました。
設問1(2)イ も同様に、請求3の法的根拠を特定する作業が求められ、この点で、条文検索能力を確かめる問題が出題されていました。
設問2は超有名な条文を指摘して当てはめをさせるという問題でした。条文自体は問題文からすぐに気づくため、要件をネチネチ当てはめるという問題で、そこで合否に差がついていました。
以上から、令和6年に関していうと、論証を書くというタイミングがかなり少なく、論証を覚えてそれを吐き出す、というよりも、条文の要件に関する定義をしっかりとおさえ、その定義を踏まえて、適切に当てはめができるか、ということを確かめる問題であったのと同時に、未知の条文であっても全要件をしっかりと検討して当てはめることができるか、という能力を問う問題であったといえます。
そしてその過程で、民法の基礎の理解を確かめる問題であったと思います。
そこで、令和5年は、というと、設問1ではややマイナーな条文操作と判例の射程を問う問題でかなり差がつきやすい問題でした。
他方、設問2は誰でもわかる論点を出題してきて、論証を吐き出す、という典型問題が1つ、その後少し応用的な問題が1つ、
設問3は超典型論点が出題されていた、ということで、論証を書くという作業がメインの出題でした。
令和6年とはかなり毛色が異なる出題傾向でしたが、再現を見る限り、論点論証でも大きな差がついており、結局、基礎基本が合否を分けていると考えています。
この2年分からは以下のとおりのことが言えると思います。
①誰もが知っている条文をしっかり挙げて当てはめができるかどうか
②誰もが知っている論点をしっかり挙げて当てはめができるかどうか
③あまり引いたことがない条文をしっかり挙げて当てはめができるかどうか
④判例の射程を問う問題
この4つに区分することができると思います。
そして再現答案や採点実感を読む限り、差がついているのは①,②でした。
そこで、Aランクとしては①②を含む過去問とします。
以上、この4つを含む過去問を上げていきます。
Aランク
R4(①②③).R2(①②③)、R1(①②③)、H27(①②)、H25(①②④)、H23(①②)、R6(①②③),R5(①②④)
繰り返しますが、論点単位で来年以降の対策をすることを目的としてAランクとして設定していません。そのため、R6もAランクとさせていただきました。
R6で問われた条文や論点について、来年以降すぐに出るかと言われるとそうではないと思いますが、論点単位の勉強は過去問を通じてではなく、お手持ちの問題集で十分です。過去問で学ぶべきことは、過去問の傾向(どういう出題をされて、どこに点数が入っていて、どのように書けば評価されるのか)を掴むことだと考えます。
そのため、これら過去問を論点単位として勉強するのではなく、例えば、R4を解いたあとには必ず、答案の書き方、民法の考え方まで復習をしてほしいと思います。そういった観点から復習とすると、条文を適切にあげる大事さ、論点論証に至る前段階の思考過程というどの問題にも共通する考え方が身につきますので、こういう観点から、過去問に取り組んでいただけたらと思います。
Bランクとして
上記Aランクの令和の過去問以外、H30、29を挙げます。
これらは比較的応用度が高い問題ですが、Aランク過去問によって、条文を適切にあげる大事さ、論点論証に至る前段階の思考過程、が身についた後だと、論点発見や条文抽出のスピードも上がってきますので、Aランクを仕上げた後に取り組んでほしいと思います。
何度も言いますが、論点として出題可能性があるか否かという観点からは選んでいない(むしろ選ぶべきではない)ので、論点の総復習としては、お手持ちの問題集を潰してください。
Cランクはそれ以外、ということになります。
私見ですが、過去問を全年度潰すというのは、時間的に絶対無理ですので、AB以外のランクの過去問については、かなり優先順位は下がります(他の科目をやりましょう)。
ご参考になれば幸いです。