免許更新センターで記入用のペンが有料であることが引き金となり対象構わず怒り狂う話。
四方八方に散る怒り
この話の面白さは、関係のないものまで怒りの対象になっていること。なぜペンが有料なのか、という怒りは3年前の施設改装に遡る。
この怒りは一般的に正常なもので、そこそこウケる掴みの部分。共感指数としては平均台。しかし木村は、それとは直接結び付かない部分にも怒りを散らす。ここが凄い。
例えば、
・買ったペンを親切で置いて行かない奴ら
・頑固にマニュアル接客をする職員の奴
・小さく書かれた持参物の注意書き
まさに木村祐一の真髄。
これ以外にも直接怒りは表していないけれど「それにもキレんの?」っていう面白さもある。それは次の項で。
彼をモデルに作ったんじゃないかと思えてしまうような映画(「フォーリング・ダウン」)があるんですけど、これ大好きなんですよ。
この映画と木村から学べることは、公平性と偏見(常識と非常識 )それぞれの円が交差した部分が面白いということ。つまり、なんで怒ってるのか理解できるけどそんなにキレること?みたいなバランス感覚。個人的には強引に論理立てた偏見の笑いが好き。これは共感ディテールの採用基準のひとつと言えるかもしれない。
これは完全に非常識に寄っているし、分かるけど強引ちゃうかってなると思います。でもここまでくると常識的な理論からは外れても、積み立てた怒りの勢いだけでいくらでも笑いになってしまうのが面白いところです。
イヤミな説明過多
「関係ないものまで怒りの対象になっている」ことの可笑しみ。ひとつ大きな怒りに直面すると、もう周りのすべてに苛立ってくる現象。経験あると思います。
この説明いる?っていう。
これ書類記入用の台について説明をしてるんです。同じく不満げな口調で。別に記入用の台が後に関係することはありません。ブチ切れしすぎて関係のない台にまで怒ってるんじゃないかと思うと、段々面白くなってきます。
木村流の文法
ガキの使い「浜田雅功の快脳!マジかるハマダ」ダウンタウンの理不尽シリーズのひとつ。
理不尽な要求に応えられなかったガキメンバーが楽屋に帰った浜田に謝罪しに行くという展開。その中で松本人志がこんな言葉を残しています。
そして、月亭方正が謝罪します。
滅茶苦茶です。何言うてんねんお前さっきから、と案の定めちゃくちゃ怒られます。
文法を守っていない文章は人を惹きつけます。僕はそう信じてます。意識的に守らないのではなく感情が高ぶりすぎて滅茶苦茶になった文法が魅力的で面白いんです。その法則を応用すれば意識的に人間臭い文章は作れます。
木村さんの場合、この文章です。
これです。この無秩序さが本当に大好きで、文頭に「なんで」「おかしい」と感情的なワードが優先されてるんですけど、「なんでペンお前これ書くだけ」の文法を正すと「お前、なんでこれを書くだけのペンに」となります。これだけ荒らしても意味は伝わる訳です。
+α 木村語
来なっ・しくさって・腹いせ
・来なっ(くなっ)
来るなっの一文字省略ですけど響きも鋭いし他の動詞でも応用できそうで、単発で笑かすワードとしての威力はデカい。
・しくさって
木村らしい嫌味な表現。しやがって、より灰汁が強いというか攻撃性が強い。
・腹いせ
腹癒せ=怒りや恨みを他の方に向けて紛らせ気を晴らすこと。使っていこ。