見出し画像

僕はやっと認知症のことがわかった2

【第4章:「長谷川式スケール」開発秘話】

長谷川式スケールを作るきっかけとなったのは、長谷川さんの恩師である方からの言葉がきっかけでした。できるだけ短時間(30分以内でできる)かつ、体力が低下した高齢者でも負担なく可能な検査方法。そして、高齢者の方となると様々な考慮が必要になってきます。手が震えてうまく書けない人を考慮して、”書かせない”こと。視力の低下を考慮して”視覚的”評価にしないこと。また、知能が正常な人なら簡単に答えられるけど認知症の方にとっては難しい質問にしなければならないという評価スケールを考えられました。

スクリーンショット 2021-01-24 19.33.48

(1974年公表:この頃は簡易痴呆検査スケールと呼ばれていた)

1991年に改定された改訂長谷川式簡易知能評価スケールでは、

スクリーンショット 2021-01-24 19.42.04

11問→9問になり、時代にそぐわない質問が省かれました。
確かに、出生地なんてのは、答えたところで確かか確認する方も大変ですし、日本の総理大臣なんてその都度変わりますよね。恥ずかしながら、大東亜戦争の終了年なんて私ですらわからない質問ですからね。

【第5章 :認知症の歴史】

「認知症」とは今でさえ聞き慣れた響きですが、一昔前は

”痴呆症”(ちほうしょう)

といった呼び方で世間に知れ渡っていました。この頃は、”痴呆症”になれば周囲から隠して生活したり、そのためには納屋に閉じ込めて人目に当たらないようにする事なんて当たり前の時代でした。その結果、”痴呆症”の方は大声で奇声をあげたり、家族に暴力を振るったりして、大変問題行動が見られていました。(そりゃ真っ暗な納屋に何日も閉じ込められたら誰でも発狂したくなりますよね…)
しかし、この”痴呆症”は差別用語と言われ始めました。これは、「痴」「呆」ともに「愚か」「馬鹿」という意味を持つ漢字であることから言われています。そして、差別用語として問題提起したのを受けて2004年に”痴呆症”→認知症に改正用語されました。
ちなみに、”痴呆症”の新しい呼び方を決める為に、国民から意見募集を行いました。その結果は、

1位:認知障害(22.6%)
2位:認知症(18.4%)
3位:記憶障害(13.6%)
4位:アルツハイマー(症)(11.4%)
5位:もの忘れ症(11.3%)
6位:記憶症(7.5%) 

ん??なぜ、1位に選ばれた認知障害じゃなくて認知症になったの??と思った方は鋭いですね〜。そうなんですよ。
1位となった「認知障害」は国民からの意見募集で一番高い得票数でしたが、一方で精神医学の分野での「認知障害」は多様に使われており、これを新用語とした場合には「痴呆」としての意味が混同して混乱を招く恐れがある。しかし、「認知症」は新用語なため、こうした混乱が生じる恐れがない。という点やその他諸々な理由を加え、最終的に”痴呆症”は「認知症」として名称が変更されました。

【第6章 社会は、医療は何ができるか】

”クルマの運転”
認知症となってまずやめなければならないのは、車の運転です。長谷川さんは昔から車の運転が大好きでした。長谷川さんの中では、大きな車でなく、軽自動車であれば大丈夫かなという思いが頭の片隅にはあったそうです。しかし、車の運転は自分だけではなく、他人の命を奪ってしまう可能性も考えて思い切って免許返納をされました。認知機能の低下が著明になった人は、安全、危険の判断も出来なくなります。認知症の人こそ、自分は大丈夫だと薄っぺらい判断をしてしまい、大きな事故を起こしてしまいます。その点、長谷川さんは自分で判断ができるうちに免許返納をされました。ちょっとそこまでなら…で重大な事故を起こしたら元も子もないですからね。

”地域ケア”
認知症の方を見ていくのは、その家族だけでは難しいこともあります。例えば散歩をしに行ったがなかなか帰ってこない。行方不明になった認知症の方は多く存在しています。長谷川さんは認知症になってこんな体験をされたそうです。
ある日近所を散歩していると、何かの拍子に転倒してしまいました。知らない女性が駆けつけてくれて「大丈夫ですか」と声をかけてくださいました。その後、他の女性が現れて、「この人近所の人なので家まで送りますよ」と言ってくださり自宅まで送ってもらった経験をされたそうです。その時、私が(長谷川さんが)求めていた地域全体で認知症の人を見ていくっていうのはまさにこういうことだ!!と感じたそうです。確かにこのような景色が当たり前に広がる地域であれば、家族も安心できるし、家族が認知症であることを隠す必要もありません。むしろ、「私の家族は認知症なので、もし困っている所を見かけたら声をかけてやってください」と堂々と言えますよね。そんな地域にするには、皆さんの理解が必要であると私は心から思います。

”水曜会”
現在日本では、医療・介護保険により様々なサービスがあります。老人ホームと呼ばれる特別養護老人ホームや介護老人保健施設、サービス付き高齢者住宅、グループホームなど挙げきれないほど日本には多く存在しています。長谷川さんは、勤めていたとき認知症の方とその家族が利用できる「水曜会」というものを開いていました。それは、今でいう通所リハビリテーションのような形のものでした。

デイケア(通所リハビリテーション)とは、医療機関や介護老人保健施設など、介護医療院で行っている通いでリハビリを受けられる介護保険サービスです。

そこでは、毎朝バイタル(血圧・体温等)チェックをしてそこからは各々でTV見たり体操したり、さらにはボーリングなどレクリエーションを交えながら一日過ごしてもらう形式で行っていたようです。毎週楽しみに来てくださる利用者様が多く自宅でも穏やかに過ごすことができる方が多くなり、当事者やその家族には大変好評であったそうですよ。

【第7章: 日本人に伝えたい遺言】

長谷川さんは認知症になった今でも、講演会や人前に立つ仕事をされています。まだまだ、やり終えていないこともあるみたいです。それは現在、介護指導者となる方が増えてきましたが、その指導者自身へのアフターケア(もっと知識を増やしてもらうための勉強の機会増加)にもっと力を入れていきたいとおっしゃっていました。また、長谷川さんは、常々おっしゃっていましたが、認知症の正しい知識を皆さんに知ってもらいたい。認知症になったからといって突然人が変わるわけじゃないし、昨日まで生きていた続きの自分がいる。認知症は固定ではないし、朝は良くても夕方から悪くなったり、いい時悪い時がある。正しく認知症を知って欲しいと折り返し書籍に綴っていました。


いかがでしたか?作業療法士として病院勤務している24歳の若造がこんなに熱く記事を書いてしまいました。しかし、「認知症」は現在日本でも社会問題となっており切っても切っても切り離せない関係になっています。自分の親や兄弟、さらに自分自身がなり得る病気です。もちろん予防策はありますが、誰がなってもおかしくない病気なのです。正しい知識を持っていることで、自分や近しい人、さらには地域の人を自分の手で守ることができます。この記事を読んだことがきっかけで、誰かにとって有意義な時間になっていただけたならこれ以上幸せなことはありません。

〜N〜


いいなと思ったら応援しよう!