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『芸術を創る脳』刊行記念 酒井邦嘉さん×前田知洋さんトーク&サイン会<旧ブログより>

※本記事は2014年に執筆されたものです。一部加筆修正しています。

年末年始で、『芸術を創る脳: 美・言語・人間性をめぐる対話』を読みましたが、非常に面白かったのです。その著者で、自分の大学の先生でもある酒井教授と、大好きな前田さんのトークショーとなれば、行かないわけには行きません(笑)

トークショーでは、終始笑いの絶えない場を作り出し、見た目も考え方もそっくりなお二人による脳の話や芸術の話が繰り広げられました。Twitterを利用した質問(大学でもやったらいいのになぁ)もタマリッツのトークショーの際と同様に行われていました。ハッシュタグは#げいつくで、これを追えばトークショーの内容がまるわかりです(笑)トーク中のキーワードとしては、「ハイテクスト文化、ローコンテクスト文化」「再帰性」といったところが挙げられるかな、と。再帰性を説明するために、さまざまな絵(Roger. N. Shepard氏)を紹介してくださったのも興味深かったです。

それにしても驚いたのは、酒井教授が本当にマジック好きということ。まさかモルガンのソフトコインを持っているほどとは…笑。

あと、当たり前なのですが、酒井先生は説明が非常に上手です。クリアに、ばしっと伝えるべきことをこちらに伝えてくるのはやっぱり大学教授だからかなぁ。(でも、授業が下手くそな先生もいるけど…笑)前田さんも相変わらず(?)ジョークを交えながら先生と素敵なやりとりをしていました。


最後には、ばっちり前田さんのマジックを最前列で拝見させていただき、お二人のサインも頂きました。

さて、イベントの話ばかりしてしまいましたが、

そもそもこの本『芸術を創る脳』はどういう本なのでしょうか。

この本は、酒井邦嘉教授(東京大学・物理学)と4人の芸術家との対談をまとめた本です。

酒井教授は、大学教授でありながら、様々な分野の芸術にとても造詣が深く、(失礼な話ですが)この一流の芸術家たちと対等に話ができることにも相当驚かされました。

指揮者・作曲家、棋士、マジシャン、画家という4人の、一見全く異なる芸術家との対談をしながらも、いずれにも共通した要点があることに驚かされました。勿論、酒井教授の本業である脳科学や言語、という側面からの切り口であれば、ある程度似たような話になるのも頷けるのですが、それ以外の切り口で見たときにも共通点があるのです。

酒井教授が自身であとがきにおいて、4つの対談を通した3つの要点を見いだしていらっしゃいます。

本の内容に大きく触れてしまうのでここで詳しく書くことは控えますが、4つの一見離れたフィールドから導かれた芸術に内在する共通性を、酒井教授が言語化してくれています。ここを読むと、4つの対談もすっと頭に入ってきます。(さすが、頭がいいなぁ…)

おこがましい話ですが、ここで整理されていた以外に、私は「連続性」というキーワードも重要ではないかと思いました。(一部、本で述べられてはいますが。)


音楽(指揮者の曽我さん)では、例えばモーツァルトは連続性がある部分もあり、それが理路整然として美しく、楽しい。その連続性をある意味で裏切る意外性も、音楽では重要、と言います。

将棋は、打ち方の連続性を読み取ることで、駒の動きだけで誰かわかるというし、その連続性の意外さが羽生さんであれば羽生マジックと言われる所以である、と。

マジックにおいては、身体の動き、トリック内の連続性がすんなりしていないと、観客に違和感を抱かせてしまう。

絵画では、芸術そのものの歴史的連続性であったり、自分の書いてきた作品、そして人生の連続性として今の作品がある、ということ、になるのではないでしょうか。

ディテールの部分は異なるかもしれませんが、おしなべて、全て近いニュアンスではある気がします。芸術における「連続性」というキーワードは、無視できないものではないでしょうか。やや、天下り的な論法かもしれませんが、やはり(社会的にあまり芸術として捉えられることがない)マジックも将棋も、こういう文脈においては間違いなく「芸術」と定義できるものだと思います。

また、学問を少しかじっている自分としては、学問もかなり芸術に「近い」と考えます。

特に科学はそれが顕著ではないでしょうか。自然界の真理を解き明かそうとするものは、自然界に法則があることを前提とし、その法則を見いだそうと努力します。そして、往々にしてその法則は美しい。

オイラーの等式e^{i\pi}=-1なんかは、ちょっと別格。(トークショーで、酒井先生や前田さんはアインシュタインの相対論でのe=mc^2や重力場方程式を述べていらっしゃいました!)


ただ、科学においては客観性が確立されている部分が純粋な芸術とはやや異なるのかな、と。

主観的な部分(感覚や感性)を限りなく捨て去り、客観的なもののみ残す、ということは少し異なるのかもしれません。うーん、よくわからなくなってきてしまいました。

なんだかもやもやとした終わり方になってしまいましたが、未読の方は必読です。マジシャンであろうとなかろうと、非常に楽しめる内容です!

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Shuta Takada
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