ソーシャルセクターのMission、Valueを言語化するプロセスの話
私たちHLABは2011年にサマースクールのプロジェクトを開始し、2020年には10年目になりました。ということで(?)10年目の節目に、昨年から段階的に会社のMission、Valueを明確に定義しました。今回は、その策定プロセスと内容についてシェアしたいと思います。
ソーシャルセクターというのは存在の定義上、ミッションに基づいて団体が組成されます。我々も長い間ずっと暗黙の了解の中で活動してきましたが、今回は10年目というタイミングでミッションを結晶化し言語化する、ということは非常に意味あるものでした。
なぜこのタイミングで見直したのか?
さて、そもそもなぜこのタイミングで見直したのかからお伝えします。
1.創業メンバー間に共通見解としてミッションっぽいものはあったけれども、きれいに言語化されていなかった
2011年以降の活動を通じて、「ピアメンタリング」「異なる人生を歩む人々からの学び合い」「リベラルアーツ」のようなキーワードは、組織として大事な価値を伝える言葉としてたくさん使っていました。ソーシャルセクターですから、伝えたい価値、起こしたいインパクトありきの活動なので、それらについては創業メンバーや長い間関わってくれている学生チームには共有されていました。ただ、それが完全に結晶化し、きれいに言語化されていなかった、ということが課題でした。そうすると、新メンバーに対してや対外的な説明で限界が出てきたのです。
2.メンバーの大幅入れ替えがあった
実は2019年には新メンバーが3名入社、代表はアメリカに旅立つなど様々な要因が絡み、この数年間のHLABを知る現場メンバーは私だけとなりました。新たにジョインしてくれた人には創業メンバーもいたのでHLABをある程度理解してくれていたものの長期間離れていたこともあり、改めて会社のミッション・バリューを定義し浸透していく必要がありました。
3.組織構成員数の増加に伴うマネジメントが変化した
人数の増加に伴いマネジメントも私個人からの直接的なものではなく間接的なものも増え、(私を含む創業メンバーと)ダイレクトに仕事を一緒にしない社員、大学生インターンも増えてきました。ますます共通言語・行動指針としてのミッション・バリューの言語化が求められた瞬間でした。
ミッション策定プロセス
その組織や個人が社会において果たすべき使命であるミッションについては、創業メンバー中心に、組織が目指す社会はどのようなものか、ブレストし構造化→ひたすら言葉を磨いていくプロセスとなりました。ほぼ、トップダウンで決めたものといえるでしょう。
組織の実現したい社会の姿をメンバーでディスカッションしながら、Google Documentを使用して各自がひたすら書き下し、言葉を結晶化していきました。加えて、含めたいキーワードや思いを込めた単語を各自がリスト化し、構造化することを通じて最後に1つにまとめていきます。幸い、ほぼ出てくるキーワードや思いは同じで揉めることはなかったのですが、どのようなワーディングを使うかは最後まで悩みました。特に、英語で我々が使い続けていた"where diversity meets learning"をどのように日本語で表現するか?手段も我々にとっては大事なので敢えて入れてしまおうか、ということで、結果、長くなってしまったものの、次のような社会を目指したい姿として設定しました。
異なる人生を歩む人々が、
その違いから刺激を受け、学び、共創する。
そして、これをHLABは以下の手段で実現します。(一般的にはこれがVisionにあたるものかもしれません)
HLABはそんな社会の実現を
学びの体験、空間、コミュニティのデザインを通じて行います。
バリュー策定プロセス
組織(とそのメンバー)が大事にしている価値観としてのバリューは、よりメンバーを巻き込んで策定しました。現在働く社員、学生インターンと共に合宿を実施しました。ポイントはミッション策定時以上に現役メンバーを巻き込んでボトムアップで決めていった点です。
まずは、他社のミッション・バリューを見ながらどのようなものがバリューに表現されているかを理解します。その後ポストイットでひたすら(ミッションの達成のために)「わたしは、◯◯する必要がある」の「◯◯」に入るものは何か、みんなで考えていきました。(以下は議論中の写真なんですがやたらみんな笑ってますねw)
そこから各自が、そのポストイットに書いたものの意図をプレゼンし、みんなでああでもないこうでもない、と議論していきます。特に、同じ単語でも解釈が異なることもあるため、議論の際には超具体的なシーンを話し合い、それはHLABに合っているね、それは違うね、というかたちで話し合います。このプロセスがめちゃくちゃ大事で、これくらい具体的なレベルで話し合わないと本当にメンバーの意識が揃ったことにはなりません。例えば、「行ったことがない居酒屋にふらっと入ってみることはHLABで言う『越境』になるのか?」といった感じです(笑)
その後、似たようなものを構造化し、余計なものを整理していくと、だいたい5つくらいのカタマリに分かれてきました。当然ながら1日の議論では終わらず、のべ3日くらいかかった記憶がありますが、最終的に日本語を磨きつづけ、補足文も追加しました。その結果が、これだ!
このバリューのこだわりは、「日常的に使いやすく、行動に促しやすいワーディング」「カタカナを使わない」ことです。
バリューはメンバーの行動の指針にもなるものです。そのため、日常的に使えるフレーズであることが大事で、これを口に出すことで浸透を図る狙いがあると共に、行動を促します。実際、既に「実験しよう、の精神でやってみよ!」「その態度、とにかく学びに変えてなくない?」とかそういう言葉が飛び交っています(笑)「~しよう」というワーディングにもその意図が込められていますね。
また、海外とのやりとりの多い団体のためにいつもカタカナ語で溢れている(しかも私も外資コンサル出身ですし....笑)ため、敢えて日本語で統一し理解の齟齬が起きないようにしました。手前味噌ですが、とてもよいものになったな、と思っています。(もちろん最終的には英語版も作成しています)
ちょっと長くなってしまいましたが、ここで決めたバリューをどう浸透させていくか?はまた別の機会に...。ちなみに今はリモートワークの中なので、学生インターンが作成したSlackのバリュースタンプ全5種類(以下イメージ)が大活躍中です!ほんとSlackのスタンプはオススメ。
最後に:YouTubeはじめたよ!!
ソーシャルセクターはミッションが固まっていても、バリューでメンバーの行動指針まで設定しているところは、あまりないのでは?ということに今回リサーチしている中で気づきました。実際にメンバーが増えて組織が大きくなってきたとき、バリューを皆で創るプロセスが、全員の思考を研ぎ澄ます作業となるためとても良い共通経験になると同時に、とても便利です。オススメ。
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