Part3: 世界のB2B Fintech
日本一便利な法人向けオンラインバンクを目指すFinswer Bank(フィンサー
バンク)を作っている、株式会社Finswer COOの田口です。
前回は、現代のFintechがどのように発展しているのかを見てきました。さまざまな金融機能・非金融機能をユーザーの利便性が高い形にしてリバンドンドリングすることが現在のトレンドです。
さて、ここまでFintech全般に関して記載してきましたが、今回はB2B領域にフォーカスを当てていきます。
B2B Fintechは、僕らのサービスであるFinswer Bankがターゲットにしている領域であり世界のFintechトレンドの中で最も熱い分野の1つでもあります。
なぜ、いまB2B Fintechが熱いのか
例えばBCGさんのレポートでは以下のような記載があります。
とはいえ、なぜいまB2B Fintechが注目されているのでしょうか。
COATUE(運用資産700億ドル超の投資ファンド)のレポートによると、以下のような現実的な理由が挙げられています。
企業の利益の伸び率はGDPの伸び率と強い相関がある一方で、個人の支出とGDPの伸び率ではそこまで大きな相関がない
下の資料において、アメリカにおける1997年から2021年のGDP成長率は69%。同期間の個人の支出(左のグラフ)の伸び率は29%の一方で、企業の利益の伸び率は70%。
要すれば、GDPが増加すれば企業の利益も増えるが、個人の支出はそこまで増えない、ということです。
そのためBtoC Fintechを伸ばすためには、様々なサービスをクロスセルしなければならない
上記で見たように、B to Cの場合は、放っておいても利益が上昇しにくいという性質があります。
そのため、シングルプロダクトだったRobinhood(赤線)はARPU(1ユーザーあたりの売上)が伸び悩んでいた。CashApp(緑線)はサービスの種類を続々と増やしてクロスセルさせることで成長を維持。
顧客保持率で比べた時、B2Cの最もうまくいったケースのみがB2Bと競争できる
B2Cの平均顧客保持率が94%の一方で、B2Bは125%。
このようなそもそもの事業モデルの特性として、B2B Fintechは、B2C Fintechよりも成長を実現しやすい、とされています。
さて、抽象的な分析はここまでにして、実際に世界ではどのようなB2B Fintechプレイヤーが活躍しているのでしょうか?
ここでは、B2B Fintechの中でもFinswer Bankと同じ事業ドメインでもある、B2B決済領域で活躍している企業にスポットライトを当てていきます。
世界のB2B決済領域のプレイヤーはどのように発展してきたのか?
法人における決済領域は、支出管理の領域と銀行領域の大きく2つに分けることができます。
記載した企業例はユニコーン化している企業も多く、スタートアップの世界でも特筆して盛り上がっている領域です。
そして面白いのは、支出管理領域と銀行領域のどちらに軸足を置くかによって、サービスの伸ばし方にも差があることです(ただしこれは、あくまで「軸足」の問題であり、後述するように他方の領域に進出することが常であることは、先に断っておきます)。
ここでは、
支出管理領域からスタートした企業例として、アメリカのB2B Fintechの代表例ともいえるRampとBrexを、
銀行領域からスタートした企業例として、同じくアメリカのB2B Fintechの代表例であるMercuryとフランスのQontoを取り上げます。
支出管理領域からスタートしたRamp, Brex
RampとBrexは、法人カード領域で世界で最も勢いのあるスタートアップ、と言って良いでしょう。
Brexは2017年に創業し、時価総額はすでに$12.3 Billion(日本円で約1.8兆円)。Rampは2019年に創業し、時価総額$5.8 Billion(日本円で約8600億円)です。
いずれも、対象とする企業や国、これまでの価格戦略などで差異がありますが、法人カードによる支出管理が祖業であるという点については同じです(日本でいうところのUpsiderさんと同じ領域です)。
銀行領域からスタートしたMercury、Qonto
次に、銀行領域からスタートしたアメリカのMercuryと、フランスのQontoについてみていきます。
Mercuryは2017年に創業。すでに10万社もの顧客を抱えており、2022年の夏頃からはすでに黒字化しているスタートアップです。2023年にシリコンバレーバンクが倒産した際に、多くの顧客を獲得しました。
Qontoは2016年に創業し、すでに45万社もの口座を獲得しています。EU圏の同業他社の買収を進めています。2022年時点で約50億ドルの評価額で資金調達をするなど、EU圏を代表するB2Bフィンテックプレイヤーです。
それぞれどのような機能を提供しているか
この点を整理してみると、大きく3つのパターンがあることがわかります。
①支出管理領域→銀行領域パターン:Brexのように、まずは法人カードを中心に支出管理領域のプロダクトに重点を置いてから、銀行領域のプロダクトに広げているパターンです。Brexの場合は元々、法人カードの決済手数料がメインの収入源だったこともあり、支出管理領域のプロダクトを伸ばしにくかったという背景もあるかもしれません。
②支出管理領域特化パターン:rampのパターンです。rampもBrex同様、法人カードが祖業ですが、マネタイズポイントを決済手数料よりもむしろ、関連サービスのサブスクリプションに置いていた背景があります。そのため、支出管理に必要な各種サービスを提供しやすいビジネスモデルだった、と言えるかもしれません。
③銀行領域→支出管理領域パターン:MercuryやQontoのパターンです。既存の銀行のサービスが使いにくいことに着目し、利便性の高いオンラインバンクを作る。その後、入出金に関連が深い請求書支払いや請求書発行などに展開する。
また、提供する機能によってマネタイズポイントも変わります。こうしたバリエーションの多さも、フィンテックならではの面白さでもあります。
まとめ
このように、一口にB2B決済領域といえども、欧米のメガベンチャーたちは異なる山の登り方をしていることをみてきました。
それでは、この領域は日本においてどのような状況にあるのか。Finswer bankがどのような山を登ろうとしているのかといった点について、次回は見ていこうと思います。