6月第3週:あえて沈黙
ユーロ2020、開幕しましたね。開幕戦は先週の6月12日。なんだけど、僕が試合を見始めたのは今週からなもので。その試合を見てて思い出したことを今週の週記として書こうかなと。(もっと週記っぽいこと書けよって思うんだけど「思い出したこと」が今週ずっと頭に残ってたので許して)
サッカーに馴染みの無い人に一応説明しておく。「ユーロ2020」とは、ヨーロッパの国の頂点を決めるサッカーの大会だ。「2020って何やねん、今は2021年やろがい」って話ですが、コロナで2020年に開催予定だったものが一年延期になっただけの話だ。
さて、そのユーロ2020は観客を入れて行われている。コロナ後にサッカーの国際大会で観客を入れて試合してるのは多分これが初めて。画面越しからも国際大会ならではの観客の高揚感が伝わってくる。観客がいるスタジアムを見ながら、僕はある別の試合を思い出していた。
■別の試合↓
まずはこの動画を見てくれ。忙しい人はこの試合唯一のゴールシーン 3:10〜 のシーンだけでも見てくれ。
ご覧の通り、素晴らしいゴールが決まる。ゴールが決まった後、実況の下田恒幸氏はしばらく沈黙した。ゴールが凄すぎて言葉が出なかったわけではない。彼がゴール後に沈黙したのはきちんとした理由がある。
この動画のFAカップ決勝戦は今年の5月15日、ロンドンのウェンブリースタジアムで行われた。今年のイングランドでのサッカーの試合は、コロナの影響で全て無観客で行われていた。それがワクチンの効果もあり、この試合はイングランド国内で今年初めて有観客で行われた。
日本からイングランドのサッカーを見ているファンとしても、スタジアムに観客が入っているのを見るのは久しぶりだ。久しぶりに聞く現地の観客が大声で歌うチャントは胸に響いた。
そんな試合でゴールが決まり、観客が狂喜乱舞する中、実況の下田恒幸氏はあえて言葉を発さなかった。久しぶりに観客が戻ってきたスタジアム、ゴールの熱狂をそのまま装飾無しで視聴者に届ける選択をしたのだ。日本のイングランドサッカーファンは、現地ファンのゴール後の熱狂を噛み締めるように見入った。「喋る」ことが仕事の実況者が「黙る」ことで試合の興奮を伝えた、実況の歴史に残る粋な演出だったと個人的には思っている。
僕もこんな粋な演出ができる人間になりてえなぁ〜。こういう粋な演出ってどうしたら出来るようになるんだろうね。そんなことを考えてユーロ2020を見てた一週間でした。
◆今週の一曲
4分33秒
ジョン・ケージ
演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団