映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』Vol.2/アイドルG@鹿児島 7人のBeauty
前回のあらすじ
大久保彩華(22)は国民的アイドルグループASGを2年前に卒業、地元の鹿児島に帰ってFMラジオで「セブンカラーズ」結成をアナウンスすると、鹿児島大学では、中国からの留学生・李星星(19)、韓国からのパク・ジョナ(19 )が反応した。JAに働く神木あかり(23)、ヘアメイクアーチストの森永絵莉花(23) 、沖縄出身ダンサーの姿那智(20)、フィリピンの歌手兼リモート英語教師イザベル・ガルシア(23)は、鹿児島市内それぞれの場所で生きている。7人はセブンカラーズに結集するのだろうか・・・彩華のマネジメントを請け負う西郷は、チラシに「彩華」と印刷した島津プリントの坂本勇気(26)に電話でイチャモンをつけたが、彩華の希望は「彩花」の芸名から本名に戻すことだった。
ーーイザベル「(PC画面の裕子に)アイドル?セブンカラーズ?」から直結ー
クローズアップの星星(ティンティン)とパク・ジョナの会話/夢中で喋る星星/ウンウンうなづくジョナ/背景は、大学構内だが、フォーカスアウトしている。
星星「大久保彩華は、14歳で博多のHSGに入りマシタ!」
ジョナ「お父さんお母さん、いないんでショ」
星星「その時はお母さんはいました。お母さん亡くなったのは、去年です。彩華は、17歳で、東京のASGに選抜されました。作曲の才能がありマス」
(幼稚園児・彩華の写真がフラッシュ)(カワイイ)(小学3年)(可愛すぎる)(女子中学生はもう今の顔)(HSGに応募した写真)(どれも可愛い) (17歳でASG)(可愛すぎる!!)
× × ×
クローズアップで彩華ファンA君とB君の会話/早口でまくしたたるA君/彩華のことなら負けないB君/背景は、鹿児島市内だが、アウトフォーカス。
A君「大久保彩華の曲はASGには使われてない。HSGのには一曲使われてるけど。『春一番を待っている』いい歌だったのになー。大好きだった。大人の事情ってのがあるのかな」
× × ×
ジョナはうなづく。星星もA君と同じことを言っていた。『春一番を待っている』は知ってる。ジョナも好きだった。彩華の曲だってことも。
× × × A君「ASGでセンターを一回だけやったのが『スーパーロッカー・ラブ!』。鈴木ガムの作詞作曲で・・・」
(ロッカー然とした鈴木ガムの写真がフラッシュ)(エラそーな鈴木ガム)(まあ、でもカッコいい)(ロックだぜ)(好きな人は好き)(キライな奴は大キライ)(ロッカーがアイドル歌謡を作った!?)(そういうコラボがあるくらい、ASGは走ってたのだ)(アイドルこそロックだぜ)
× × ×
B君「そん時、多分、鈴木ガムにやられちゃったんだよ」(あちゃー)(ファンなのに、そんな言い方)(するんだよね、ファンは)(恋愛とは言いたくないから)(ステージでファンと恋して欲しい)(見えないところでならセックスしてもいいさ)(見えるところで他の男と恋するな!)
× × ×
ジョナ「卒業して、恋を選んだのネ」 韓国でもありがちなこと。
星星「音楽性が一致したんですが、鈴木ガムはアメリカに行きマシタ」
ジョナ「音楽は全部アメリカがいいとは思わない。ダンスミュージックは韓国がいいyo」
星星には言ってないが、ジョナは、15歳までは韓国SMタウンの練習生だった。”少女時代”に憧れるアイドル予備軍だった。でも、自分の限界を知って、止めたのだった。
× × ×
A君「アイドルミュージックは日本が一番だと思う」
B君「それが別れた原因だろ。鈴木ガムはアイドルミュージックなんてバカにしてんだよ、楽曲を提供したくせに。そりゃ、初めての男だと言っても、彩華はキレたんだろ、可哀想な彩華。アイドルにはアイドル道があるんだ」
ファンが考えるような、単純な話だろうか?
× × ×
ジョナ「アヤカは、鈴木ガムの歌でセンターやった」
星星「ジョナ、よく知ってるじゃん」“じゃん”は日本ぽい言い方!マスター!
× × ×
鈴木ガムの写真を、暗い自分の部屋で燃やす彩華。
炎で、照らし出される彩華の眼。
× × ×
女子高生・矢ヶ崎裕子、パソコン画面のイザベラに言う。
裕子「先生は、大久保彩華と合うと思う」
イザベル「そうですか?」
裕子「音楽が合う、と思う」
確信、持ってる裕子。
裕子は、イザベラ先生にパソコン前で歌ってもらったことがある。すごく上手い。だから、セブンカラーズになるものと信じている。信じたい。それが、彩華ファンで、いまイザベラファンの裕子の願い。そうしたら、私も真面目に英語勉強する。
<彩華の家>昼間
ちょっと古めの一軒家。彩華はここで生まれ育った。母の実家だ。14歳で博多に一人で行き、HSGに。帰って来たとき、大好きな母は、この家にはいなかった。
彩華は、母の写真が置かれた仏壇の前で、涙をすすりあげ、手を合わせた。
何かあったのだろうか? かなり泣いたみたいだ。
笑っている母の写真。彩華が選んだ。彩華が18歳の時の40歳の母。30歳にしか見えないけど。元気よく、笑っている。亡くなるなんて、あり得ない時の。
× × ×
彩華は、改装した客間に来た。防音壁をはめて、簡易スタジオとして、録音が出来るようになっている。ASG卒業の時は、これが出来るくらい稼いで貯めていたが、かなり使って、一年分の生活費くらい残ってる。
キーボードを開けて座る彩華。書きかけの楽譜を前におく。
彩華「・・・・」
弾きだす。繊細な音色。
この音楽が、以下のシーンに流れてゆき、歌の伴奏となる。
<JA鹿児島>
夜になっている。蛍光灯の灯りは白い。
一人だけオフィスに残って、パソコン前で作業しているあかりの心に、彩華のキーボードの旋律が流れている・・・
ふと作業をやめて 立ち上がり 窓の方へ歩くあかり
その途中 課長の机の上にある セブンカラーズのチラシを チラ見して
夜の窓に 映った自分を 見るあかり
続くエレクトーンに ストリングスが重なり 歌う気持ちになる
あかり「♪窓の外は夜 私はオフィスに一人
待っている人なんていない 空しい宵闇
窓に映る私に聞くわ あなた このままでいいの?
<結婚式場・花嫁控え室>
音楽はJAから同じものが続いているが、時間は昼に戻っている。
鏡を見ていた 絵莉花 誰かに答えるかのように 歌い出す
絵莉花「♪このままでいいと 思ってた
人を綺麗にしたい 私の仕事 好きだった 誇りもある
でも 急に思ってしまったの
私 綺麗になりたい 私自身が 綺麗に」
<バタヤン・ダンス学院・練習場>
音楽は控え室から同じものが続く。
那智、鏡の前で歌う。誰かにアンサーしているようにも感じる。
那智「♪綺麗になりたいだけじゃない
綺麗だって 言われたてみたい
可愛い って言われてみたい
そんなホントを隠して カッコつけて 踊ってるのよ
でも 踊ってるとぜんぶ忘れる
気持ち良くなる カッコよくなる」
音楽のテンポが上がって、ダンスミュージックとなり、那智、激しく踊る。
背景の場面が変わってアミュ広場になり、周りはフラッシュモブの人たちになるが、今の曲のリズムに合っている。那智のダンスも今の曲で、同じく続く。
<ガールズバー・ステージ>
ステージで歌うイザベル。同じ曲が続いている。
イザベル「♪ニッポンて 楽しい国だって思ってた
アイドルがいっぱいで 歌がいっぱいで
幸せいっぱいで
でも 生きてゆくのが very hard
I want be happy someday
いつの日か 幸せになりたい」
< 間奏を彩華が弾き、それぞれがそれぞれの場で歌う>
あかり「♪でも もし アイドルになれたら」
絵莉花「(セリフ)アイドル? 考えたこともない。女優ならあるけど」
那智 「♪アイドルになったら 頑張ってみせる
歌もダンスも やってみせる」
イザベル「♪お金が欲しいだけじゃない
I don’t want just money.
わたし生きがいが欲しい I want to be my life.」
<FM局の事務室>
音楽は間奏が続いているが、時間は戻っており、西郷が彩華に、デジタルビデオテープを渡している。
西郷「これ、お母さんから、亡くなって、半年経ったら渡してくれと頼まれていたんだ」
彩華「・・・?」テープを受け取る。
<彩華の家>
同じ音楽が続いている。
テレビモニターに映った彩華の母が、画面に話している。それを見ている彩華。
仏壇に手を合わす前に、時間が戻っている。
お母さん「彩華、セブンカラーズは私からのお願い、私が西郷さんに頼んだのよ。彩華はアイドルをしていた時、輝いて眩しかった。でも、私が病気したんでこっちに帰って来てくれたでしょ。嬉しかったけど、申し訳ないと思ってるの。夢を途中で諦めさせちゃって」
彩華「違うのお母さん、違う。お母さんのせいじゃ無い」
お母さん「アイドルの時、大変だったり、傷つけられたりしたこともあったと思う。私も昔、近いところにいたから分かる。でも、彩華の方が本物よ。彩華には力があるの。人と人の架け橋になる力が。それで私が名前をつけたの、セブンカラーズって。虹の架け橋。彩華、もし迷っていたらセブンカラーズをやって。私、応援してるから・・・でも、おせっかいだと思ったら、忘れてね」
彩華「お母さん!」
と泣く。・・・これが、涙の理由だった・・・
彩華「♪お母さん ありがとう そんなふうに思っていてくれて
私 迷っていない
もう一度やってみる
アイドル やりがいある仕事
好きになってもらう仕事
頑張ること 汗かくこと 笑うこと 泣くこと
一生懸命やる
私 もう一度やってみる
でも一人じゃ出来ない くじけちゃう
仲間が欲しいの」
<以下はそれぞれの場所になり、MV的な編集で音楽に合わせてゆく>
あかり「♪仲間になりたい」
絵莉花「♪一人じゃないなら」
那智 「♪選ばれるなら」
イザベル「♪Pleas watch me!」
あかり 絵莉花 那智 イザベル 彩華
「♪ 欲しいのは みんなの声援 ガンバレの声
それから仲間
スターじゃなくてもいい アイドルがいい
仲間がいるなら
スターにはなりたく無い アイドルがいい
仲間といたい
なんてったってアイドルよ
やってみる ためしてみる
楽しいじゃない
人を楽しくさせるって きっと楽しい
そのためにがんばるの」
歌い上げる5人。力強い。音楽終わって・・・
<鹿児島精華女子大キャンパス・教室>
休み時間。
一枚のセブンカラーズ募集チラシを、後ろの席で二人で見ている星星とジョナ。
ジョナ「日本人だけに限る、って書いてないヨネ」
星星「私、ダンス得意ではないんです」
ジョナ「教えてあげる。習ってたからネ」
星星「ジョナ、あなたはもしかして・・・」
ジョナ「SMタウンの研究生だった。デビュー出来なかった。『少女時代』に憧れてた」
こんなジョナの、いたずらっぽく可愛い顔、星星は初めて見た。一緒にセブンカラーズに応募しようって、思った。
< 彩華の家・玄関先>
ドアを開ける彩華の前に立っている勇気。もう、彩華は泣いてない。
彩華「はい?」
勇気「島津プリントの坂本と言います。チラシをデザインした者なんですが、あなたのお名前を間違えてしまって、どうもすみません」
彩華「大丈夫ですよ、本名に戻すつもりだったんで」
勇気「そうお聞きしたんですが、社長がお怒りのご様子でして」
彩華「社長? 西郷さんは社長じゃないけど・・でも、大丈夫ですよ、そういう人なんで」
勇気「良かった」
彩華「それでわざわざ?」
勇気「はい。失礼かと思うたんですが、昔、こちらに伺った事があって、懐かしく思うて」
彩華「え?・・(思い当たる)あっ!」
勇気「はい」
彩華「坂本元気さん?」
勇気「本当は勇気なんです」
彩華「それで!・・」(感情がこみあげる)「あの時はありがとうございます」
勇気「いや・・・」
彩華「母は亡くなりました」
勇気「存じてます」
彩華「・・・母は探してくれたんですよ」
勇気「ええ・・・」 そうだったろう、とは思ってたが・・・
<彩華の回想>
橋の上———————
小学3年生の彩華、数人のバカっぽい男子生徒に囲まれて虐められ、クマのヌイグルミを奪われ、それを取り返そうとするが、パスして回される。ほんとにこういうバカがいる。泣いている彩華。バカたちは笑っている。何が楽しいのか。彩華が可愛すぎるから、いじめたいのか。頭悪すぎる。
クマが川に投げ捨てられた時、学ランの少年が飛び込んで来て、男子を蹴散らす。そう、彼が勇気だ。バカたちは、強い奴が現れると、ただの弱虫になってしまう。バカたち、必死に逃げてゆく。
× × ×
河原—————学ランの少年・勇気、川に入って浮いているクマを拾う。自分がびしょ濡れになっても構わない。
岸から、泣きながら見ている彩華。ヒーローが来たんだって、まだ分かってない。
× × ×
帰り道——————
学ランの少年と彩華、手を繋いで帰る。
ヒックヒックしながらも、クマを持っている彩華。
× × ×
彩華の家前————
彩華の母が、彩華を迎え入れて、学ランの少年から話を聞いている。恐縮してお礼を繰り返す母親。彩華は母親にすがって、少年を見上げている。
彩華の声「助けてくれたお兄さんは、坂本元気って名前だけ言って、帰って行ったのを、私も覚えています」
勇気の声「本名を言うのが恥ずかしくて」
<彩華の家・中>
彩華の母親の写真がある仏壇に手を合わせる勇気。
彩華「いじめはあの後、少し収まったんですが、中学に入ったらまた始まっちゃって、母が博多に行くのを勧めてくれたんです。アイドルはいじめから脱出するためだったんです、最初は」
勇気「大久保彩華があの時の子だっていうのはすぐに分かりました」
彩華「一回、イベントで告白したこともあるんです、私の王子様は坂本元気って人だって」
勇気「名乗り出るのもおかしいから」
彩華「ご対面みたいな番組になったのに」
勇気「でも、セブンカラーズって、良か名前じゃなかですか」
彩華「母がつけてくれたんです。チラシも、いい感じでありがとうございます」
勇気「今、ネットで出した方が効果ありますけどね。ウチは、ネット広告もやってて、それから紙にするいう事の方が多いんです」
彩華「そうなんですか、私もそう主張したんです」
勇気「そんなら、これサービスでページ作っておきますよ」
彩華「エッ、嬉しい!」
勇気「いろいろアイデアありますよ。印刷屋はいろいろ考えないと生き残れんで」
彩華「じゃあ、お願いします! 宣伝隊長になって欲しい」
勇気「あ・・・はい!」
彩華「すごい! 私の王子様が宣伝隊長!」
勇気「あ・・いや(照れる)」
聞いた・・・彩華は、「私の王子様」って言ったよ。
< 旅行代理店・マルジュウ>
旅行案内をしているカウンター近辺の後方にある応接セットで、西郷と中国人の周元(33)が話している。怪しい?中国人・・・というほどでもない。
周元「中国人の旅行、九州はこれからもっと増えるネ。鹿児島も桜島、有名ネ」
西郷「こんど、新しい地元アイドルグループも出来ますよ」
周元「誰も知らないアイドル、観光の売りにならナイ」
西郷「だから、これからの話です」
周元「何年先?」
西郷「・・・近い将来」
細かいこと言うな、中国人・・・まあ、お金の国だからな。
<鹿児島公会堂前>
後藤アナウンサーが手持ちカメラに向かって喋りながら、入口へ向かう。背後の公会堂には多くの人々が次々と入ってゆく。
<TV画面になる>
後藤アナウンサー「我らが鹿児島のヒロイン、大久保彩華さんが呼びかけてスタートした新しいご当地アイドル『セブンカラーズ』のメンバー募集に応えて、多数の応募者から厳正な審査が行われて一次、二次を24名が選抜通過、本日が公開最終選考となり、6人が一般のお客様の前で選ばれ、彩華さんと共に7人のセブンカラーズが誕生します!」
映画は早い。もう一次、二次選考終わって、最終選考!
2千人が応募した、っていう話。そこから24人に絞られた。そこから6人を今日、選ぶ。つまり、4人に一人しか選ばれない。
<公会堂入口>
一般の入場者に混じり、一人で来たあかり、敏夫と来た絵莉花、一人の那智、イザベル、星星とジョナらが緊張した面持ちで入ってゆく。
みんな、一次も二次も選考通過したのだね!
ザザ!と電気信号が入り、TV画面が乱れる。
....to be continued
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