映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』Vol.5(終)アイドルよ、武道館じゃなくて世界を目指せ!
<鹿児島県民交流センター>
7人は一曲、歌い終わった!
嵐のような声援が、客席に沸き起こっている。声援はパワーをくれる。
紅潮したメンバー7人の表情は、まぶしい笑み。荒い息づかい。
汗の噴き出す笑顔を見て、更に声援を送る客席。パワーが倍加する。
表情がもっとまぶしくなる。輝いている。
客席と舞台が一体になって・・・
セブンカラーズは、ここに再スタートをきったのだ!!
<ごみ収集場・朝>
捨てられているゴミ袋。白く半透明な部分から「・・の国で歌え」の字が読める。
そのゴミが、サッと収集されて、収集車は去ってゆく。
<週刊ビーム編集部>
東京タワーが見える。ここは東京だ。煙草OKの雑多なオフィス。
自分のPCでセブンカラーズのYouTube画像を見ていた千葉房雄(50)、少し、いや、かなりヤクザっぽいおっさんだ。業界にどっぷり浸かってるようなタイプ。
ガラケーをかけ、相手が出るまでに煙草に火をつけ、椅子の背もたれにのけぞる。
<鹿児島市内・街中>
敏夫、歩きながら着信あったスマホを取って見て、驚く。
「も、もしもし・・千葉さんですか」
その名前にびびってしまう敏夫。東京にいた時の上司だ。
上司と言っても、アルバイトでこき使われた人で・・・
お酒は、たくさん、おごってもらったけど。
× × ×
千葉「よお、久しぶり。セブンカラーズの動画見たぞ。お前、アレやってんだよな、すぐに分かったよ」
佐賀敏夫が鹿児島で業界にしがみついてるのは知ってたから。彼のセンスも。
× × ×
敏夫「えっ、わかったんですか。すっごいですね、さすがです」 ちょい嬉しい
× × ×
千葉「大久保彩華って男いないの?」
× × ×
敏夫「(いきなり、なんだ、そのことか)・・いません」
× × ×
千葉「お前ヤってないの?」
× × ×
敏夫「何言ってんすか、やってませんよ」 相変わらずだな・・・
× × ×
千葉「でも、誰かとはヤってんだろー 当然よぉ」
× × ×
敏夫「なに言ってんすか、彩華はそんなんじゃないすよ」
× × ×
千葉「鈴木ガムとだって、やりまくってたじゃねえか」
× × ×
ムカつく言い方。そんなふうにしか見れないのか!
敏夫「あれは、ちゃんとした恋愛ですよ」
千葉さんが最初に記事にしたからな。
彩華は、そのことを忘れてはいないだろう。
× × ×
千葉「地方って自由だからな。鹿児島、自由そうだもんな〜。男との写真、撮って送れよ。大久保彩華なら、まだバリューあるし」
× × ×
やだね〜、つか、無いって、そんなもん。
敏夫「今、地元のセブンカラーズで頑張ってますから」
× × ×
千葉「それだけだと記事に出来ないけどさ、鹿児島に帰ったら男が出来たってハナシだと写真載せられて、東京でまた売れるきっかけにもなるんだよ」
“ザ・芸能界”ってやつですねー やだねー 今度は、あんなことさせない。
× × ×
敏夫「いやあ、千葉さん、彼女今そういう感じじゃ無いんで」
× × ×
千葉「武道館目指してるんじゃねえのかよ」
× × ×
敏夫「えッ? いや、武道館なんて話は・・そんな事考えて無いと思います」
いきなり、なに、武道館て・・・
× × ×
千葉「馬鹿野郎、武道館目指さないでアイドルやるなよ。とにかく何かネタつかめ。こっちは協力してやろうってんだから、有難いと思えよ」
× × ×
敏夫「はあ・・・」
疲れるな・・・アイドル雑誌でアルバイトしていた時代を思い出して疲れる。
アイドル=武道館目指すって、そればかりじゃないだろ。
<彩華の家・夜>
彩華と勇気、頭を突き合わせて宣伝計画を練っている。
彩華「YouTubeに入って来るCM広告料は西郷さんに処理して貰ってるけど、大きくなって来たら、どこかで線引きして、7等分しないとな・・・」
経営者のような顔をしてる彩華。
勇気、ビジネスパートナーとして答える。
「それはこっちでもやっているのがあるから、統合するようにしてるよ、信頼して貰えば」
彩華「もちろんしてる、すっごく信頼してる」
勇気「嬉しいよ」
ふと目が合って、目と目で暫く語り合う間があって、表情が変わる彩華。
沈黙を破るように、
彩華「私たち・・・」
と、大きな瞳を開いて勇気を見つめる。瞳は震えている。
目をそらす。理性を出そう。彩華の目は綺麗すぎる、吸い込まれる。
勇気「・・もう、帰らないと」
彩華「ご飯一緒に食べない?」
家族みたい。
勇気「食べたいけど」
恋人みたい。
恋人じゃない。信頼なんだ・・
彩華「・・けど・・けどだよね」
人の目がある。
勇気「うん・・じゃあ」
と、立ち上がる。
廊下――勇気を送る彩華。
奇妙な緊張した間がある。
玄関先でーーー
勇気「じゃあ、お疲れさま」
彩華「来てくれてありがとう」
勇気「うん・・じゃあ」
彩華「・・」
ドアを開け、出てゆく勇気。
彩華「(ドアにつぶやく)好き」
と、目をつぶり、気持ちを噛みしめ、押し殺す。
言葉にして、言いたかったの。
< 彩華の家・前>
勇気、歩いて去ってゆく。これで良かったんだ・・・
向かい側の電柱の影のところに、敏夫が立っている。カメラは持ってない。
敏夫「・・・」
やっぱり、勇気はいた・・・でも、この時間で帰るんだから、つきあってるってことじゃないだろうけど・・・別につきあってても、いいんだけど・・・「警戒しろよ」って注意すべきか・・・いや、そんなこと、俺に言う権利あるの?・・・・「記事にしたい奴がいるから」って言ってあげた方がいいのかな・・・千葉さんから電話もらってすぐにこういう(スパイみたいな)事するのって、俺もどうかしてるけどさ・・・そんなことより、明日はMVの撮影だ。
<セブンカラーズのテーマMVの映像>
質素だけどカラフルなバックで、メンバー7人(彩華センター、絵莉花、あかり、イザベラ、星星、那智、ジョナ)がカメラ目線で歌いながら前進して来て、歌い終わるのを、小幅なクレーンダウン。
<広めのスタジオ>
簡易クレーンを自分で操作して、カメラを回しているのは敏夫だ。
クレーンの上下の動きは、1メートルしか出来ないが、操作は慣れている。
歌のプレイバックが終わった。
敏夫「はい、カットぉ。・・本日終了!お疲れ様!!」
メンバー7人、ラストのキメポーズの緊張から解放され、
「おつかれさま〜」と口々に言う。
慣れない感じの学生スタッフが、5名、両サイドからカメラのところに集まって来て、敏夫の指示で、テキパキと片付けが始まる。
彩華「(予定見てメンバーに)明日は全休で、明後日はザビエル公園8時集合で、近くのホールでチャリティコンサートに行きます」
他メンバー「はい」「わかりました」「OK」「ザビルの前ね」
敏夫「えー、時間のある人、ちょっとMVのことで意見聞いたりしたいんだけど」
他メンバー、敏夫とお互いを見比べる。え? なに?
敏夫「ダンスを単純に繋げるだけじゃ、面白く無いな、と思ってるんだ」
彩華「(敏夫の顔つきが違うのに気づいて)それって、普通のMVみたいにダンスヴァージョンだけじゃなくて、本格的に作りたい、ってことだよね」
敏夫「作るなら、いろんなドラマを描きたいんだ。7人いるんだし」
絵莉花には、分かった。敏夫の顔と声が真剣だ。映画を作りたいんでしょ。
監督になりたかった敏夫の血が騒いでる・・・って分かって微笑んだ。
敏夫なら、いいものを作るって知ってるよ。
<ファミレス>
結局、全員残って、まちまちなものを食べながら、敏夫の話を聞いている。
敏夫「最初に彩華がFMラジオで呼びかけるところからスタートしてさ、それぞれが集まってセブンカラーズが出来上がるのミュージカルぽく、面白く描いていくっていうのはどう?」
彩華「それをリアルに同じFM局に行って撮る?」
敏夫「そう。農協とかにもロケしたい。実際に農協の人とかにも出てもらう」
あかり「正式にお願いすれば場所は断らないと思いますが、出るのはどうかしらね、課長、いやがるかも」
敏夫「出たがると思うよ(^^) その前にみんなから聞きたい。どうしてアイドルになりたいと思ったとか、今の気持ちとか、それを取り入れてストーリーにする」
星星「新しい歌も必要になるんじゃないですか」
敏夫「そうだね。それで、どんどんフィクションな方向へ展開してゆく。突然、何故かみんな女子高生になってしまうとか」
絵莉花「(吹き出す)女子高生・・コスプレがやりたいんでしょ」
敏夫「君たちまだ似合うよ、女子高生の制服は」
ジョナ「着たかった、日本の女子高制服」
敏夫「だろー^o^」
那智「シナリオ、とかは・・?」 意外にシビアに突っ込む。
敏夫「実は少しづつ書いてるんだ。それで、ヘイトの奴らを音楽の力でブッ倒して、世界に進出してゆく、っていうような、どんどん未来が広がってゆくような感じの・・・」
絵莉花「映画にしたいんでしょ」 わかってるよ
敏夫「まあ、MV的ミュージカルふうムービーとでも言うか」
イザベル「ムービー、いいね、好き」
敏夫「でも、最後は桜島をバックに水着でダンスして欲しいね」
一同、手が止まる。敏夫をジッと見る。
敏夫「( ̄◇ ̄;)・・・だって、アイドルは水着だろ」
<マルジュウ・応接場>
西郷を前に敏夫が説明、周元も聞いていて、勇気もいる。
敏夫が監督しようと企画を立てたMV大作の相談だ。
西郷「そんな、MV、今の予算じゃ無理じゃなーい?」
敏夫「はい。だから今相談してるんです」
西郷「周さん、出します?」
周元「面白ければ出します」
敏夫「面白くするためには予算が必要なんです」
周元「そのためにはセブンカラーズもっと有名になる必要ありますね」
勇気「いま、全国でもかなり有名になって来てると思いますよ」
西郷「なんか話題が必要なんじゃないかな、全国区になって武道館目指すには」
敏夫「えっ、やっぱり武道館目指してるんですか」
勇気「彩華は考えてないんじゃないか、そんなことは」
周元「武道館、良く分からない。なんで目指す?」
西郷「まあ、アイドルの頂点、ていうか・・そのためのブレイクってやつが、なんでもいいから話題があった方が・・」
敏夫「・・・」 いろいろ目まぐるしくアタマが動く
<鹿児島空港>
出口で千葉とスタッフ3人を出迎える敏夫。
千葉「佐賀ちゃん、お久しぶり〜」
敏夫「どうも、お久しぶりです」 表情が硬ってる
千葉「鹿児島で頑張って来た甲斐あったね〜」 業界スマイル
敏夫「運が良かったんです」
千葉「収録出来るスタッフ連れて来たよ」
敏夫「ありがとうございます」
千葉「それで、ネタあるんだろうね、ネタ」 飢えたオオカミみたいな顔してる
敏夫「・・いちおう・・」 目が泳ぐ
千葉「一応?じゃ困るんだけどな」 陰謀をめぐらしてるような顔してる
< 同・電話ボックス>
ボックス内でスマホをかけている敏夫。
敏夫「そういう事で連れて行くから、坂本君とか、なるべくみんな呼んどいて」
<県民交流センター・廊下>
受けている彩華、険しい表情。その名前に聞き覚えがある。
彩華「週刊ビームの千葉って、私の記事、最初に出した奴だよ」
× × ×
敏夫「知ってるよ。でも、千葉さんところは力があるんだ」
× × ×
彩華「会ったら感情が押さえられないかも知れない」
× × ×
敏夫「それでもいいよ。彼に何か動機を与えたいんだ」
× × ×
彩華「動機って?」
<県民交流センター・ホール>
セブンカラーズ、テーマを歌い踊っている。
熱狂する観客。
そこに現れた千葉、観客と舞台の間に入ってゆく。
千葉「・・・」
舞台を見上げている千葉。照明がその顔を照らし、陰謀をめぐらすかのような表情が不気味に見える。
< 同・控え室>
メンバーをインタビューする千葉、メモ帳を持っていながら、なかなか言葉を発しない。
メンバーの脇には、西郷、勇気がスタッフとしている。
敏夫は、中間のポジションに座っている。
千葉「(決意するように顔を上げ)正直言ってここまでレベルが高いと思ってなかった(感動で言葉に詰まる)すいません、地方だと思ってナメてた自分が恥ずかしい」
千葉の顔つきと、言ってる内容の落差が激し過ぎて、本心を言ってるとは、なかなか受け取れないが、本心を言ってるのだった。セブンカラーズに感動してしまっているのだった。
彩華たち「・・・!」
千葉「君たちがアイドル界に与える衝撃はテラバイト級だ」
敏夫、緊張が溶けて、初めてニヤッとする。
千葉「俺は感動しちまったんだ!セブンカラーズサイコーだよ!」
と、ポロリと涙を流す。ホンモノそれ!?
メンバーたち、やっと、千葉が本心を言っているのだと分かって、大喜び。
千葉「東京に帰ったら、民放各社に連絡してCSとかでも動画流してもらうよ。火がつくのは時間の問題だ。もう、ついているとも言えるが、別にスキャンダルみたいな下らない話題は全く必要ない、おれ、かなり誤解してた。レベルが高すぎる。ただし、もしもこっちのフックでペイライン超えて利益が出たら手数料を・・」
西郷「20パー出しますよ」
千葉「30パーは?」 ズルい顔に戻る
西郷「25パーなら」 真剣に見つめ
千葉「25パーオッケー!」 即断即決
西郷「では、お手を拝借!」
全員で三三七拍子。
チャチャチャン、チャチャチャン、チャチャチャンチャン!
千葉「ありがとうございますー、大久保さん、いつぞやはすみません」
顔は怖いけど、言葉は誠実。
彩華「は・・はい」 なんか、うろたえている。信じがたい。
千葉「彩華ちゃんの成長した姿が、捻れていた俺の心を真っ直ぐにしてくれたんだ」
彩華「捻れていた・・とは?」
千葉「あの記事は俺の下品な嫉妬心から生まれた。俺は最初から君のファンだった! ごめん! サイン下さい! 今日の日付で。俺が生まれ変わった今日の」
と、メモ帳を彩華に差し出す。彩華はびっくりしているが、他メンバーは微笑んで受け止める。でも、彩華は、まだ受け止められない。どれだけ傷つけられたと、分かっているのか、この人は・・・でも、言葉は、きちんと選ばれている。
敏夫「(呟く)正しいアイドルは、人の心を清める」
これで良かったんだ。千葉さんのなかにあるものに、賭けてみたんだ。そうしたら吉と出た!
<同・廊下>
スタッフと帰ってゆく千葉を送っている敏夫。
千葉「あの脇にいた坂本っていう宣伝」
敏夫「勇気が?」
千葉「あれが彩華の恋人だろ」
敏夫「まさかぁ」
千葉「隠さなくなっていい。そうだろ」
敏夫「いやあ」
千葉「別に記事にはしない。そんなことしなくたって売れてゆくぞ、いや、売りたい・・そうなんだろ?坂本は」
敏夫「違いますって!」
千葉「いいんだ。彩華にはいい恋して欲しい。それはアイドルの自由だ。でも、まだ表には出さないで欲しい。全部のファンの恋人でいて欲しいからな」
敏夫「千葉さんて、生粋のアイドルオタクだったんですか」
千葉「俺にアイドルを語らせるな、生きてる時間が勿体無いと思うなら。語ると永遠に語ることになる。それよりセブンカラーズを世間に知らしめる方が前向きだ」
敏夫「そうですね、ブレイクさせましょう」
千葉「でも、セブンカラーズには武道館なんかより・・・」
ここで一瞬、千葉オヤジの目が、少年のように輝いた・・・
< マルジュウ>
周元、西郷・敏夫・勇気に告げる。
周元「北京公演やりましょう、段取りします」
一同「え〜ッ!!」
周元「MVムービー作りましょう、お金出します」
一同「おお〜」
< 同・廊下>
周元と星星が中国語で話しているので、字幕が出る。
周元「私は周家では末っ子ですから日本の南だけを任されていたので、幸運にもお嬢さんと出会えました」
星星「李家では、周家に感謝していますよ」
周元「これは、きっと私の手柄になると思います」
星星「ご家族に幸福が訪れますようにお祈り致します」
<県民ホール・控え室>
舞台衣装を着ているメンバーに西郷が告げる。
西郷「北京を皮切りに、ソウル、マニラとアジアツアーを組むことが決定しました!」
メンバーの中で、特に星星、ジョナ、イザベラ喜んで飛び跳ねる。
敏夫「シナリオも書けた。来週からMV的ムービーのクランクインだ! 今日の公演が終わったら読んどいてくれ」
と、レポート用紙の束を振り上げる。
彩華「じゃあ、みんな、今日もステージ頑張ろう!」
メンバー一同「イエ〜イ!!」
敏夫「タイトルは、『新しい世界はここに』だ!」
「少女時代」のデビュー曲が「Into the new wold 」(2007年)、そのPVは伝説的な秀作だ。
< 最初のFM局スタジオの金魚鉢>
この映画のファーストシーンと同じFM局ーーー
ーーー彩華、ヘッドホンを付けて最初のポジションにいる。
ラジオでセブンカラーズを呼びかけようと、マイクに向かっているところだ。
それを窓の外からムービーカメラが狙っている。カメラの周りには、スタッフがいっぱい。本格的に、プロが集まっている。
学生バイトも混ざっているが、カメラはプロだ。
カメラの脇には監督の敏夫。監督っぽい。監督っぽいって何?
見物人が大勢来ているので、助監督が人よけしている。
敏夫「(マイクで窓の中の彩華に伝える)じゃあ、撮影開始しますよ」 ドキドキ
彩華「(オーケーを手でゼスチャーする)」 余裕
敏夫「(更にドキドキ)いくよ、行きますよ、行くよ・・・ヨーイ、スタート!」
視点はカメラのものとなる
音楽がスタートし、カメラはジワっと移動して彩華に近づくと、カット割れ・・
彩華の背になって後ろ姿に回り込むが、正面にはファンたちが集まっていて、当然ムービーカメラは見えない。
彩華、カメラ側に振り向いてマイクに話す。
彩華「みんな、セブンカラーズを結成するわよ!」
<それぞれの場所でそれぞれが>
女子大で星星が、ジョナがーー
農協であかりがーー
結婚式場で絵莉花がーー
アミュ広場で那智がーー
ガールズバーでイザベラがーー
それぞれ意識的に顔を上げ、次のカットでは全身となってカメラ側に歩いて来る。
<イオンモール>
の舞台に、各方向から舞台衣装で集合して来るメンバーたち。
観客は最初はいないが、舞台上でメンバーがお互いを確認し合い、フォーメーションを組んでダンスし出すと、メンバー背中側からの視点では大勢の観客が現れ、声援を送っている。
歌が始まる。
「♪雨上がりの午後2時 青く輝いた空に
みんなが指差しているアーチ
あなたと私の架け橋 走っていくから待ってて
濡れてる髪が風でサラサラになるまでにたどり着く」
県民センターの舞台、スタジオの簡易バック、などもカッティングで入って来る。
<JA鹿児島>
伴奏が続いている。
制服姿のあかり、眼鏡を外して、立ち上がり、実際に以前のシーンに出ていた課長のところへ行って、
あかり「課長、私、セブンカラーズになります!」
課長「はあ? 何言ってんの、堅実な人生、捨てるの?」
あかり「♪セブンカラーズレインボー
レインボーセブンカラーズ」
と、ダンスしてくるりと回るとミニスカ衣装になって金髪になっている。
続いて制服の女子職員たち3人が前に出て歌う。
女子職員たち「♪セブンカラーズレインボー
レインボーセブンカラーズ」
呆れる課長
「勤務時間中だぞ」
あかり「課長も歌って下さい」
課長「なんで俺が歌うんだ」
と、抵抗しているが、あかりに手を掴まれて前に出ると、仕方なさそうに立って職員と一緒に歌う、
課長「♪セブンカラーズレインボー
レインボーセブンカラーズ」
上手い!
あかり「どうですか?」
課長「なかなかいいもんだな、歌って踊るのは」
あかりを中央にして、職員たちが全員ダンスする。
渋い表情の課長も最後にはにこやかに笑っている。
課長「あかりちゃん、ここやめても、農協の宣伝忘れないでくれよ」
あかり「はい!」
<結婚式場控え室>
鏡の前で、前と同じ花嫁をメイクしている絵莉花。
絵莉花「綺麗になりましたね、花嫁さん。今度は私が綺麗になってもいいですか?」
花嫁「もちろん」
絵莉花、いち回転してセブンカラーズの衣装となり、花嫁と一緒に踊る。
ブライダル職員も一緒に踊る。
絵莉花「幸せになって下さいね!」
花嫁「はい、ありがとう!」
絵莉花・花嫁「♪セブンカラーズレインボー
レインボーセブンカラーズ」
< アミュ広場>
場面は以前の広場の続きであり、人物も同じだが、ステージ衣装の那智が入って来ることで、那智を中心に輪となり、那智のダンスを周りで盛り上げる事になる。
バタヤンも那智を見ながら、楽しそうに真似て踊る。
<鹿児島精華女子大・大教室>
以前のシーンと全く同じ。音楽も止まって素音となり、授業が始まる前の教室のざわざわした雰囲気で、あたかもシーンが戻ったかのような印象になる。
スマホを聴いていた星星、講師が入って来るので片付ける。
講師「えー、今日は、本学に中国から留学して来ている李星星さん、韓国から留学して来ているパク・ジョナさんに、セブンカラーズについて講義して貰いたい」
と言った途端に音楽が始まり、星星、ジョナ、別々な席から教壇に駆け下りると、学生たち拍手で歓迎する。
教壇の前ではステージ衣装となった二人が、手拍子を取ると、学生たちも立ち上がって、その場で一緒に踊る。講師も背広を脱いでプロ並みのダンスを披露する。
講師「(ジョナたちに)君たちは、試験受けなくてもいいよ、忙しいだろ、Aをあげるよ」
すると、学生たちがエ〜!?と騒ぎ出す。
「不公平だ!」「外人逆差別だ」との声。
星星「あの、先生、私たち、ちゃんと試験受けます」
ジョナ「勉強してますから」
講師「そうか」
ジョナ「(学生らに)皆さ〜ん、一緒に仲良く勉強しましょう」
学生たち「おー!」
星星「一緒に歌いまショー、踊りましょー」
学生たち「おー!」
再び、教室はダンスと歌で賑やかになる。
<ガールズバー>
ステージでイザベラがセブンカラーズ衣装で、前シーンからの音楽に合わせて踊り、歌うが、客は白けている。以前と同じ男たちが座っている。
男A「近頃、外人が多くて、俺たちの仕事は取られてちまって、どんどん無くなってるんだ」
男B「日本人だけで背一杯なんだから、帰って欲しいよ」
その時、ステージに星星とジョナが現れて、3人のダンスとなり、他のは乗ってくる。
男A「(しかめ面)中国人・・韓国人・・(目尻が下がる)可愛い〜」
更に他の4人も現れ、フルメンバーとなり、お客は更に乗って来る。
男B「みんな一緒に踊れば天国じゃ!」
と、男A、B共に踊る。
男A「アジアは一つじゃい。俺は初めっからそう思ってたぜ」
大盛り上がりになる店内。
<イオンモール・イベント広場>
ステージで旧衣装のメンバーたち、客席後部で掲げられた「アイドルは日本のものだ 自分の国で歌え」の垂れ幕にたじろいでいたが、それぞれ一回転すると新衣装になり、決意の表情で客席後方へ降りてゆく。
5、6人のサングラスの男たちを取り囲むメンバー。たじろぐサングラスの男たち。観客らは注視している。
囲んで歌いながら踊るメンバーたち。
黒バックの空間にもなり、シーンカットバックする。
『ハミングバード』
「♪傷ついた心を癒すのはこの歌
あなたと争う気持ちはないわ
お互いに羽が折れてしまった小鳥
今は飛べないけれど
きっと飛べる日が来るわ
それまで ハミング ハミングバード」
男たちはサングラスを外し、反省して観客の中へ入ってゆき、一緒に踊る。
<〇〇高校への通学路>
走ってゆく足を追うカメラ。
それは高校制服姿の彩華の足。
校門前の週番の腕章を付けているのは絵莉花。
絵莉花「遅いわよ、大久保!」
<〇〇高校>
彩華の後から入って来る制服姿の那智、あかり。
那智・あかり「今日も遅刻だ!」
先に入っていて振り返るイザベル。
イザベル「内申書に描かれるわよ!」
教室の窓から見ている星星、ジョナ、階段を駆け降りて来る。
校庭に集まった7人、歌う。
『スクールデイズ』
「♪スクールデイズ なつかしい響き
スクールデイズ せつない想い
あの人が好きだった 言えなかった
戻りたい 伝えたい
キラキラ 輝く日々
だけど 本当は いいことばかりじゃなかった
それは知ってる 知ってるよ
教室の隅で 一人で本を読んでいたあの子
仲間に入れなかったあの子
私は あの子だったのかも知れない
だから 何も思い出さなくてもいい
そうしなくても 思い出は 突然 やって来るから
スクールデイズ」
メンバーたちが高校生だった時を思わせるようなショットが撮られる。
教室で、廊下で、体育館で・・・
× × ×
裕子、教室の隅で一人で本を読んでいる。
仲間に加われない。
その目の前に女子高制服のイザベルが現れる。
裕子「今日はパソコンじゃないのね、先生?」
イザベル「いらっしゃいよ、私たちの仲間に」
と、裕子を連れて行く。
咲子たちの前を通り過ぎ、呆然となるボス格の咲子。
× × ×
音楽室――
メンバーたちが、それぞれ楽器を持って集まっている。
裕子、歓迎される。
× × ×
体育館――
裕子をギターにして、女子高制服のセブンカラーズ、バンドを組んで演奏している。
楽しそうな裕子の表情。
裕子「セブンカラーズは、私と一緒に生きている。それがアイドル!」
< 浜辺>
『嵐の季節』
「♪はじめは 爽やかなそよ風だった
私の心に 優しく吹いた
あなたの声が 耳にのこった 優しかった 嬉しかった
帆をあげて ヨットは海に出る
きらめく 波しぶき
あなたの声が 風になり 海を走らせる
いきなり 風は強くなり
私の心は 乱れてゆく あなたが好き
風はもっと強くなり 嵐になって
もう帰れないよ 愛してる どこにいるの
Big storm・・・・・」
海を感じさせる場所で歌い踊るメンバー。
夕日の海に服のまま入ってゆく。
曲調が明朗になると、
晴天の空のもと、水着で上がって来るメンバー。
桜島の見えるところで水着でダンスするメンバー。
< ニュース>
中国のニュース(北京語)
「日本のアイドルグループ、セブンカラーズが北京で公演し、大きな人気を集めました」
韓国のニュース(韓国語)
「日本のアイドル、セブンカラーズがソウルで公演しました」
フィリピンのニュース(英語)
「日本のセブンカラーズが、フィリピンにやって来ました」
日本のニュース
「鹿児島の地元アイドルグループ、セブンカラーズが、中国、韓国で人気を集めています」
< 城山展望所>
桜島が遠く見える。
待っていた彩華に、急いでやって来た勇気が後ろから声をかける。
MVの続きなのか、この映画のラストシーンなのか、分からない。
勇気「彩華・・・」
彩華「(振り返る)呼び出したりしてごめんなさい」
勇気「昨日帰って来て、明日は東京だって聞いてた」
彩華「もう、宣伝隊長やってくれないの?(^^)」
勇気「僕なんかがやらなくても・・てゆうか、どうやっていいか分からないよ、こんなに大きくなってしまうと」
彩華「普通にやってくれればいいのに」
勇気「会社を辞めるわけにはいかないんだ」
彩華「嵐の季節・・・あの歌は私の気持ちよ」
勇気「みんな、君に気がついているよ」
周りを見ると、遠巻きに観光客が二人のことを見たり、見ないふりをしている。
彩華「わかってる・・アイドルは恋愛禁止だから」
と、勇気の手を触る。ドキッとなってしまう勇気。
二人の指がまさぐりあって、やがて指と指が絡み合う。
勇気「君のことを、ファンとして、見つめ続けて、応援し続ける」
彩華「好きだけれど、恋人にはなれない」
勇気「お互い、そう選んだ」
彩華「だから後悔しない」
勇気「ああ、後悔しない」
彩華「うそよ!」
勇気「うそだ!」
二人、見つめ合う。
彩華「私の王子様、大好き!」
その瞬間、画面がパッと白バックに輝く。二人は”恋の異空間”にいる。
キラキラと細かい星が二人のまわりを飛散している。
彩華がキスするのに応える勇気。
二人、抱き合ってキスし続ける。
(読んで頂き、ありがとうございます。ご祝儀あれば・・・)
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