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【創作】夏休みをとりもどせ

☀この記事はクロサキナオさんの企画参加記事です☀
#クロサキナオの2024JuneJaunt

https://note.com/kurosakina0/n/nca6ac9a35baa

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教師なんて。

7月と言えば 夏休みのはじまり。
誰もが承知の事実である。

そんなウキウキの夏休みのはじまりを
わたしはもう 何年も経験していない。

この部屋に引きこもって 何年になるだろう?

今日が何日かということを把握するのも
諦めてしまった。

この部屋から出なくなってからしばらくの間
中2のときの担任が扉の前まで来ていた。
今さら何を話し合おうというのか。
こうなったのは全てお前の調査不足のせいだ。

ずっとそう思って
話し合いには応じなかった。

***

親友なんて。

当時 わたしにはとりたてて
仲良しの相手はいなかった。
クラス替えのあと、人見知りのわたしは
自分と似たような 人見知り2人と
なんとなく一緒にいた。

大勢の中で 独りでいるのは寂しいし、
お昼ご飯を一緒に食べる相手くらい
欲しいという理由からだ。

ただ、それだけ。

あつこは物静かな大人しい子だった。
自分の意思があるのかないのか
意見を合わせるのが上手だった。
ゆかは時折見せる
感情の起伏をもった子。
人見知りゆえに、他人に攻撃的なことを
言ったりすることもあった。

それでも一応 学生生活。
部活こそやっていないが、放課後には
3人で食べ歩きしたり、カラオケ行ったり
それなりに謳歌していた。
このまま親友になれたらいいな。
いや、もう親友だよね。

と、思っていた。
わたしだけは。

***

虐めなんて。

夏休み直前、なんだか急に
2人がよそよそしくなった。
あとで聞いた話だが、2人は一緒に
7月に行われる夏フェスに行ったらしい。
わたしは誘われなかった。

ゆかがスキだと言ったバンドに対して
興味ない素振りをしたから…
それが理由だったとあとで知った。

たったそれだけのことで。

『子ども』というのはときに残酷だ。
既に半分は大人の入口に立っていたが
人を貶める心は健在だった。

夏休みが終わってからは
2人は口もきいてくれなくなった。
2人にとって わたしは空気なのだ
と、自分に言い聞かせて過ごした。

学校は面白くないところ。
もう行きたくない。
でも、親になんて言う?
その答えが出ないままだったので
仕方なく学校には行っていた。

ある日、見たことない紙切れを
自分のカバンから見つけてしまった。

『なんで生きてるの?』
『ブス』『◯ね』『学校来るな』
等々、殴り書きされていた。

紙を持った手が、
小刻みに震えた。

なんでこんなこと…

とめどなく涙が流れた。

そんな風に思われてたのか、と
自分が凄く汚いものに思えて
消えてしまいたかった。

と、同時に怒りも爆発しそうだった。
別に仲間外れにするならそれでいい。
わたしが独りで行動すれば
なにも問題はない。

なのに、どうしてここまで
傷つけられなければいけないのか…

悔しさのあまり、わたしは
担任に相談することにした。
それがそもそもの間違いだった。

担任は 教師になって3年目の26歳。
薄化粧にカジュアルな服装
いつもスニーカーの女子。
熱血を絵に描いたような
真面目なタイプの教師だった。

担任はわたしの話を聞いたあと
あつことゆかからも話を聞くと言った。

後日、担任から発せられた言葉は
わたしには寝耳に水。青天の霹靂。
衝撃的だった。

あなた、彼女たちを虐めてたんでしょう?

なんでそーなる?

あつこさんはお金を取り上げられた
ゆかさんは暴力を受けていた
そう言っていました。
お互いにその様子も見ていたと。

マジかコイツ。。
虐められてるのはわたしの方。
2対1でわたしの負け?
鵜呑みにすんな。役立たず。

なにを言っても無駄だと感じたわたしは
親の心配も無視して部屋にこもった。
親不孝と言われようが
そのときのわたしは心を閉じないと
わたしの全てが
空中分解するような気がしたのだ。

自分の部屋の鍵をかけ
数日間はずっと布団にくるまっていた。
そのうち お腹がすいたことに気づき
真夜中に冷蔵庫を漁るようになった。

そうして月日が流れた。

***

信用なんて。

わたしは今、あるSNSに在籍している。
どうでもいいことをサクッと投稿して
イイネをもらう。
いわゆるブログのようなもの。

ひきこもっていた間、ほとんどの時間を
このSNSに費やしてきた。

現在、フォロワーは10,000人を超えている。

実はさっき投稿されたフォロワーの記事に
わたし指名のお題が出された。

このSNSではリレー形式で
前の人が指名して 出したお題で、
書いたものを投稿するという、
歴史あるイベントが存在している。
20年くらい続けれられているらしい。

わたしに出されたお題は
『夏休みの思い出』

知らないんだろうけど
なんて酷なお題を出すんだろう。
わたしに夏休みの思い出なんてない。
むしろ、暗黒時代のはじまりの
思い出しかないのだ。

外に出ることを諦めた日から
わたしの暗黒の夏休みは終わっていない。
現在進行形。

あれ以来、あつことゆかとは
一切連絡を取っていないし
担任ももう来ない。

わたしだってキラキラな夏休みを
過ごしたかったんだよ。
中2のあのとき、そうできるって
信じてたのに裏切られたんだ。

そう思いながら
指名してきたフォロワーの記事を
スクロールしていると、
ふと手が止まった。

・・・あつこだ・・・

あのときはごめんなさい
ゆかの勢いに押されて
あんな結果になっちゃった
ハッキリしなかったわたしも
悪いんだけど
あれからゆかのキツさについていけず
学年がかわるころには離れてた
今さらなんだけど
もし良かったら一緒に
夏休みのやり直しをしませんか
また一緒にかき氷でも食べながら
他愛もないはなしがしたいです

嘘までついて裏切ってしまったこと
償わせてほしい
本当にごめんなさい

文末にはこんなメッセージが書かれていた。

今さらだよね。
謝られてもわたしの数年は
かえってこない。

あなたたちのせいで人間不信になった心が
あなたを信用すると思う?

あつこを責め立てる気持ちが
ふつふつと湧き上がってくる。

その反面、楽しく過ごしてた日々もまた
わたしの心を支配していく。

わたしはどうしたらいい?

***

絶望なんて。

電話の向こうであつこは泣いていた。

考えて 考えて 考えて 反省して、
やっと書けたメッセージ。
読んでくれると思えなくて
連絡くれるなんてなおさら思ってなくて
本当にびっくりしてる。

そう言ったあと あつこは感極まっていた。

許したわけじゃない。
だけど、あつこならわたしを暗黒から
救い出してくれそうな気がした。
最後にもう一度信じてみたいと思った。

それでダメなら
わたしはたぶん絶望する。
今度こそ消えてしまうかも知れない。

だけど、あつこの声を聞いて
妙な安堵を覚えたのはなぜだろう?
数年前になりたいと望んだ『親友』。
あつこは親友になってくれるだろうか?

今度こそ 信じても いいかな?


あとがき

中坊の頃、虐められていた。
この物語とは違う理由だけど、
ほぼ2年間 めちゃくちゃ辛かった。
教師には『虐められる方にも原因がある』
と言われた。
たしかにそうかもしれない。

だけど、グループごとに、
それぞれに ひそひそ陰口や
これみよがしに聞こえる声で
罵られるのはかなりキツイ。
あっちでもこっちでも
クラス全体に嘲笑われていた。

教師はどこまで調査をしてくれたのか。
教師なんて信じない。
親友なんていらない。
人なんて信じられない。

でも、本心は違うところにある。
独りでは生きていけない。
なんでも話せる親友は欲しい。

本当は、本当のところは、
人恋しい。。。

見えない誰かに助けを求めながら
いつか本物の友情に出会えたら
この心は救われるだろうか?



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