【短編】おもらしはソルティドッグの flavor がした。(後編)
🐶登場人物の紹介🐶
🍩棉吹ケンタ 28歳
同じ会社の涼来先輩に、純情な恋心と下品な下心を抱いているゲイリー
マン😸
今日は涼来先輩のおうちにお泊り中🙀
🍬鈴河涼来
ムカつく人間を自分の発明した精密機械「メピピュロスポポポーリン」に
ぶち込んで肉ダンゴにしちゃう(妄想)ヤバい奴😼
でもケンタには懐かれている。
🍏セヲハヤミ狛芳
涼来の同期で、涼来に好かれているノンケ。
かわいい顔で、すでに結婚しているよ。😹
🐤おことわり🐤
作品中、社会規範に抵触する描写がありますが、それを推奨するものでは
ありません。
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目が醒めたら、薄暗い部屋だった。
あ、涼来さん家で寝てたんだって思い出し、ぼんやりルームランプの明かりが点いている方に寝返り打つと、ソファの背もたれに鼻先がぶつかった。薄暗がりの中で手探りすると、俺の上には毛布かかっている。てことは涼来さんが掛けてくれたのか、スンマセンしっかり寝入っちゃって。
背もたれがうごいて、俺のほっぺにくっつく。これ背もたれじゃねえよ、人間だよ。人間の脚がおれの左頬の上に被さってきたんじゃん。
ってことは涼来さんじゃん。
わ!俺たち一緒のベッドで寝てるじゃん。
ベッドじゃなくてソファだよ。
同じだよ。
ナニコレ、ナニコレ、こんなにソファ広かった?って目が暗さに慣れたら、これソファベッドで先輩が背もたれ倒してベッドにしてくれたらしい、ってソファの取説なんてどーでもいーじゃん!俺たちが一緒に寝てる方がよっぽど大事じゃん!
いいの?いいの?
いいのって何がいいの?
決まってんじゃん!おセ・おセ・おセ・おセックスだよ。
いいんだよ、だってもう一緒に寝てんだもん。いっただっきまー……。
おーっと、待て待てケンタ。
と理性の声。
お前、性獣か?涼来先輩はな、2階のベランダから落ちても怪我しない特異体質とは言え、今夜はえらい大変な目に遭ったんだぞ、それもお前の所為でな。だいたい今夜のお前はガッツキ過ぎだ何がアナルへゴォールイィン!だ、よくまあそんな愚劣きわまりない言葉をぬかせたものだ俺は恥ずかしいお前は俺の恥部だそんなんだから疎まれているくせに執拗に先輩の尻を追いかけ回し、お前が走って来なければ先輩だってベランダに上らずに済んだんだ、お前には少しは理性というものが……。
いやその、それ言われると弱いんだけどさ、今先輩、脚むきだしでそれが俺のほっぺに当たって、ジョリジョリほおずりしている状態で、お前、俺なんだから俺がスネ毛フェチェだって知ってんだろ、先輩パジャマ穿いてくれねえから俺もついムラムラってよう、先輩なんで自分の部屋で寝てくれねえんだよ、脚まる出しでシックスナインの態勢で一緒に寝てる時点でさそってるだろーが!
性獣ケンタよ、冷静になれ。「ユリシーズ」のレオポルド・ブルームと妻のモーリーがどんな格好で寝てるか、お前知らんと言うのか?今のお前ら同様69の態勢だ、けれどこの夫婦、長いこと夜の営みをしちゃいない上にモーリーは別の男と浮気している、おまけに今夜のおまえがこの状況に辿り着くまでの愚にも着かん紆余曲折だとて、レオポルドのあの長い長い一日になぞらえることも出来なくない、つまりだな、涼来先輩から投げ掛けた彼の長い脚とお前の短い首のクロス状態は、お前を拒んでやってんだぜという浮薄なモーリーからの謎かけの知恵の輪だと推察して然るべきではないか。
なぜだか俺のメタ意識が俺そんなの読んでねえぞ?というジョイスをネタに説教垂れんだが、涼来さんてば、あーあ大人になっても寝相悪い人って精神が不安定らしいっスよ、と呆れるくらいめちゃくそ寝相悪くって、上体倒して覆い被ってくるもんだから、プロレス仕掛けられたみてえに俺あおむけにされちゃって、ちょっとの間だけ首から脚外れてふぅって息つけたんだけど、すぐ様ずりずりぃと身体をおれの顔の方へズリ下げて来るから、ブ、ブ、ブ、ブリーフで口と鼻の穴ふさがれちゃったよお、って俺は夜闇に苦しみながら嬉しんだ。
こ、こ、こ、これはフェラチオしねえ限り解除されないロックではなかろうか、メタ・ケンタよ、俺はニュービーズの香りほのかなブリーフに一晩中鼻を押し当て深呼吸するべきか・それともNext StageへGOか?と解答待ちの俺の耳にあまったれた声で寝言が。
「……ケンタ~……だめだよぉ……」
あ、やっぱりGOは駄目っすか?の割りには、円を描くように腰を振る寝相ってどうよ?ってな具合で執拗にブリーフ前部を押しつけられ、
「……狛くんが…気づいちゃう…から……静かに……あん……」
ふいぇ?
狛くんってあのセヲハヤミさんですよね?
えーと、えーと、これって、これって、いわゆるAVでゆうところの寝取られ物ってやつ?
先輩とセヲハヤミさんがカップルって設定で、そこん家にゲイ友設定という俺が泊まりに来て、じつは先輩と俺はかねがね互いを「この肉、旨そうだわい」と思い合っていて、セヲハヤミさん寝入ったのを機に互いの筋肉と贅肉を食べ合うというストーリー仕立ての、あの寝取られ物で正解ですか?というこのジャンル、俺ときたら主演二人より寝取られちゃう彼氏に感情移入しちゃうから、観てると胸が痛むのに、その胸の真ん中よりちょい脇っちょがやけにジンジン気持ちいいという複雑微妙な味わいで隠れた好物です、って俺のニッチな情報はどうでもよく、なんでこの夢?願望夢?俺どうすんの?と戸惑う俺はメタ賢者ケンタの顔を窺うと、そっぽ向いて質問されねーよーにしてやがる、意気地なし。お前そんなんだから初体験おそかったんだろーがとちょっぴり酸っぱい、いやいや、かなーりしょっぱい俺の青春の後姿を叱りつける耳に、
「……ケン……狛くん起きないうちに……はやく…ちょうだ…ぃ……」
マウナロア火山、今世紀最大の噴火。
……ハワイじゃなく、俺の頭ん中。
ほーれ見ろ!賢者ケンタ。先輩、俺を求めてんじゃねーかよ!じゃなかったら「……はやく…ちょうだ…ぃ……」なんて野郎×野郎のAVじゃ滅多に聞かんわ、レディースコミックでいいの?先輩お得意科目はまさかのメスイキですかっつう台詞ゆうかよ、お前さっき俺が先輩に疎まれてるとか何とか言ったけど、いちいちグダグダ止めに入るのも、要は拒否されたら傷ついちゃうもんっちゅう臆病由来の自己保身だろーがよっ。
すっこんでろと俺は賢者ケンタを脇へどかすと同時に得意の寝技(柔道部仕込みの正当なヤツっスよ)で先輩を下に組み敷くも、もお、ゆうこと聞かない悪い子ちゃん、先輩ってば即座にうつ伏せになって可愛いに違いない寝顔見せてくれないの、それだもんだから、お寝相悪いんだから~なんてお背中つんつんつついてお遊びしようかナなんて頭じゃ思ってんのに、このケダモノケンタってばちっともキャッキャできなくて、見るより早いが先輩のブリーフおもくそズリ下げてやがんの。
それでまた俺ってばバカだから、いっつも肝心なところで余計な回り道ばっかしてんだけど、そのまま先輩起こさぬように大人しくおしり撫で撫でするか、も一度ひっくり返して優しくチンポでも吸ってりゃいいのに、なぜだか無性に・急激に・雪崩のような勢いで「ああ!アナル!アナル!」なんて単語が脳髄貫いて、「ああもう!もっと明るい場所で先輩のアナル見たい!」とまるで何か恐怖的な物にとり憑かれた病人のような切迫感で思いやがるものだから頭抱えてのけ反っちまって、やりたいイタズラなら他にも沢山あるのに何もしない内になんでこのタイミングで手を止めてしまったのか、その夜後々までも激しく後悔したんだが、先輩おそらくクソ臆病で自分が痛いの怖いから男を拒み続けていたであろうアナルに違いないなんて思いついちゃって、ほら使い続けたアナルってヴァギナみたいに縦に長くなるって言うじゃん、俺がそーだもん(ワオ!)、あ、でも俺のは肛門筋がめくれあがって小陰唇みたいにぴろぴろしてくるっつうのはまだなくて、てゆうかこの先もそこまでの変形はなくていいんですよ、何の話してんの俺?おまんこなんてどうでもいいじゃん、今の俺完ぺき男好きでしょーが、そもそもおまんこさん随分長く見てねえからどんな形か色か忘れました、だからさ先輩のアナルは多分ちっちゃく窄まってんでしょって言いたいの!それとも寝言でメスイキお得意ぶってるけど、ただのオマセさんの夢じゃない実体験込みの寝言ならそれなりにそれなりの縦長なの?って知りたいの!
それなのに俺ってばもっとおバカなことに、そんなにアナル見てえんなら先輩のケツ肉さっさとパカーって手で開きゃあいいのに、今このタイミングで急激に全裸になりたくなって、ホントに全裸状態すきだなケダモノケンタ、もさって立ちあがってモサモサ服ぬいで「電気、明るくすっか」なんて2、3歩あるきだしたら、いきなりランプが消えて真の闇。
あれ?何か踏んだっけ?
スイッチ消しちゃったみたいだよ。
この部屋のどっかに先輩、ローション隠してんじゃないかって睨んでて、ウシシ見つけてやるべなんて画策してたのに、どうすんの?と、ボサーと暗闇に突っ立ってたら、俺の腕を掴む手が。
おっと?!
せ、先輩!
北陸あばれ太鼓祭みたいにドンドコ高鳴る心臓は、もちろん甘々な展開を予想してんだが、トアーッ!って雄たけびが聞こえそうなくらいの、でも無言の力で俺は倒され、あてて・今ゴチってなんか鳴った・あの・あの・痛いんスけど、と心の中じゃ叫んでるのにちっとも声が出ないんだよ、んっとに俺って臆病なのね。
だって!
暗闇の中でいきなり倒されたの!
怖いもん!
おめえ、そんなんだから柔道弱かったんだろ、と今更俺を叱っても何の役にも立たたんけど、ああそうだよそうだよ、高校時代ずっと思っていたよ、暗―くな。俺なんて幾ら柔道やったってどーせ気弱な童貞で、気弱な童貞だからどーせ柔道弱くって、柔道弱いから気弱な童貞なんだってよう。
部活の時間に先輩に寝技掛けられ、柔道着を洗っていないだけじゃない何か酸っぱい臭いの股間ゴリゴリ押しつけられながら、負けっぱなしなのは童貞の所為じゃないかって思ってましたよ、そのくせ生まれつきの老け顔ちゃっかり利用して性風俗に行く度胸もありませんでしたよ、ああそういや18歳未満は性風俗ダメなんすよね?そんな知識は当時ちっとも知らんくて度胸がないだけで行けなかったというチキンです。
えー?でも俺、同級生の男子が好きだったのに(前々回お話したるぅたんね)、なんでソープランド行こうか行かんか・行かんか行こうか・やっぱイカンわだから行かんわ・ウジウジ悩んどったの?
だからあれか、男好きの童貞だから女好きの男に負けっぱなしなんだろって思ってたんだな、でさ柔道部の1つ上の先輩にある人とある人がいて、その2人どこに行くもつるんで行くんだけど、ニヤニヤこそこそ話してるの聞くと、卒業記念だって言って2人でソープに行ったらしいの、卒業記念って言いながらまだ10月くらいじゃなかった?も~我慢できないんだからぁ。でさ俺の気のせいか知らんけど、なーんか顔つきがパアッて変わってるんだよ、男前になったつうか、単純だけどそれがもう羨ましくてな、俺もそういう男子の仲間ほしいようぉなんてゴリラのビートで胸叩いて、ひとりは蟹の甲羅みたいな顔でハンサムじゃないけど何故か当時はカッコよく見えて、でも柔道着の股間がやたらスグキ(ほら京都のアレ)の酸っぱい臭いの先輩で、もう一人はもうちょい顔がよくて、でもキューピーちゃんに見えなくもない何故か股間がマヨネーズじゃなく乳酸菌飲料の臭いの先輩で、それで、もう卒業式まであと何日って頃に久しぶりに2人が部室に顔出してくれてね、なんか色々話もしたんだけど、先輩たちが部室を出たあと校庭を肩組んでどっか行くんだよ、ひょっとしたら肩組んでなかったのかもしれないけど俺の目にはそう見えて、それ見てるとそうそう足繁く性風俗に行く訳ないのに、今日もダランとぶら下がった二人のおちんちんはどこかのお店にお勤めのお嬢さんの手に、なんてさあ、人を羨望し過ぎるとお腹下しますね、下痢気味のお腹さすりながら見送っていましたよ、暗―く、羨ましーく。
今思えば、彼らを相手にした女の人が羨ましかったんだろうけど、うーん、あの二人みたいになりたいってのもあったのかなあ、一人一人になりたいっていうよりああいう男子同士になりたいっていうのか、だって俺絶対そういう男子の仲間に入れないもん、ウキウキしながら同じところ(女性ですな)目指して行くって仲間。その後、俺は卒業まで柔道であの二人の強さを超えることはなかったんだけど、体重だけは簡単に超えました、ハイ。
なんて話してるけど、俺がどうなったかと言えば、ソファの前ってどうして必ずローテーブル置くんだろね?あれ堅い木で出来てるから後頭部から首裏にかけて押しつけられると、痛くて溜まらんのよ。でさケツから下はソファベッドにのっけられてるから、テーブルとソファのせまい間で身体を急角度の二つ折りでよ、おれの体型でこの姿勢とらされると腹部全域に広がる贅肉が俺の全域を圧迫して相当キツいんだっちゅうの。
でも身動き出来ねえんだよ、呼吸も出来んの、肩のところに全体重のっけられて、肩の裏っかわもテーブルに押しつけられてるから痛ぇんだけど強力固定で動かんくて、髪の毛ぬけるんかちゅうくらいの強さで頭つかまれて、おれのお口にはお歳暮で送って来る海苔の缶かっつう太さのチンポが捻じりこまれ、こんぐらいだともう凶器よ、ひゃあ~髪の毛ぬけるでしょっつう勢いで頭ゴンゴンに揺さぶられ、強制イラマチオ……いや、その、あの、こういうの嫌いじゃないけど、確かに好きだけど、好きなのはレイプ風プレイであって……これ、ほんとのレイプ?つう位、色んなとこ痛くって…………もおう~勘弁。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………初体験が22歳って遅いっすよね、やっぱ。……………………………いやさ、いやさ、俺の為にゆうけどさ、俺ってばその歳になるまでね柔道弱いのは童貞の所為か所為じゃないのか、なんてカビ生えそうな湿度の高けえ迷いをしつこく引き摺っていたんじゃないのね、だって俺、大学時代は飯盒炊飯研究会だったもん、もう柔道してねえもん、ほーら引き摺ってない。飯盒炊飯って知ってる?フリガナねえと読めねえべ、黒っぽい缶カンに米とか水とか入れて河原で火ぃおこして、あーそれから石ぃ組んで木ぃくべてっつうのもやって、ともかくまあ飯たくんだべよ、ノーマルにバーベキューやればわりと美味しい味にも当たるんだけど、うちのサークルってば「この雑草は食えるか食えねえか」なんつう非常にど~~でもい~~事をテメエらの身体使って人体実験してたのね、河原で炊いた飯を肴にだべよ、そんなのに俺は青春捧げてた訳さ、雑草喰って俺の人生に何か意味あったかよ?
でもさ、ちゃーんと彼氏も出来た訳。
仁仁くんっていう中国人の留学生の男の子、二つ年下でね、くわ~~今思い出してもかわいい。
俺の好みとしちゃ、ちょいと背の低い子だったんだけど、ホラおれってスラーっと縦長体型好きじゃん、でも、ぷちゃぷちゃした水分多めのお肌のうぶな感じがかわいくて、ひげの剃り方もちゃんと出来ないんだけど髭うすいから無精髭があんまり目立たなくて、口の上に点々とだけあってそれが素朴な少年ぽくって可愛くて、片言の日本語で一生懸命「ケンタさん、今日はあなたに会えてよかったデス」なんて真心伝えてくれんのもカワイくて、日本人でもこんな麗しい日本語使えねえよ、くうぅぅ俺のしあわせもん!俺ってば見守る兄貴の気持ちでその子の「寿限無」のお披露目を見に行ったのよ、あ、その子は落研だったのね、落語研究会。飯盒炊飯研究会じゃなかったのね、で別大学なの、知り合ったのはSNS。
あれ?
やっぱ雑草喰っても何の意味もなかったじゃん、なんでタンポポやドングリ喰ってたの俺?
だってさ俺の前の代の主将がさ(部長じゃなくなぜか主将でな)、ゲテモノ喰いに走ってってさ、でさその前の主将ってのもゲテモノ道の人でさ、なんか知らんけどそれ続けなきゃいけないみたいな空気感が濃いめに漂っていてさ、そのころ俺すでに自分の家じゃプリプリ牡蛎のふんわりグラタンだとか塩麹に漬けこんだウマ染みサクサク唐揚げだとか、ちゃんとしたモン作ってたのにね。
だってさ~~先輩が決めたんだよ。
俺の前にはすでに決まってたんだよ、ゲテモノ一択の道がね。
だから、しぜーんとスギナのマヨネーズ和え作れる訳。ツクシの佃煮ってあるじゃん、でツクシってスギナと仲間じゃん、だったらツクシは食うのにスギナ食わんのは何故じゃってなるじゃん?
で燦々とした日曜の河原、どっかのチビッ子達が駆けまわっている横で、スギナの煮つけとか脱皮したヘビの皮の天婦羅とか初めて見る名前も知らんキノコの味噌汁とか作ってるのさ、覗きに来たチビッ子たちは大はしゃぎさ、だって子どもってキタナイ物やキケンな物大好きだもん。でも不思議だよね~、んなモン作ってる最中はそれなりに楽しいんだもんな。
その後だよね腹壊して「何やってんだよ俺」ってなるの。
…………だからさ、俺ってば自分じゃ気づいてなかっただけでさ、その年までしつこく引き摺ってた訳でしょ、男好きの童貞だから男に負け続けるんだってゆう高温多湿な悩みをさ、だからさあ自分でやりたいことも決められんフニャフニャ男な訳でさ、だから強く相手に出られると、な~んかそれに乗っからなくちゃいけない気になる訳でさあ…………………………………ハイ仁仁くんの話ね、おれの青春時代の表側の子の話。
でさ俺、大学の3年で一人暮らしを始めたのね、で、俺の家と仁仁くんの家を行き合う仲にもなってね、まだお泊りはないんだけどいい雰囲気で、ウッシシ、見つめ合う瞳と瞳、ふとしたことで触れ合う小指と小指、そういう時ってさ、ああこりゃ俺たち両想いだなって確信するモンが伝わってくるじゃん、人間ってそういうの解るように出来てるのね~不思議、でさ、いよいよ~って時にさあ、
俺ってホントどうかしてる。
仁仁くんじゃない、ぜんぜん別の男とやっちゃったの。
そのぅ、つい出来心で。
いや、その、向こうから強く頼まれたので、つい。
あー今ひとの所為にしました、ハイ。
今まで俺が仁仁くんとの間に積み上げてきたもの(俺の勘違いじゃなければ多分あった、あのフンワリした物)、パアにしたのはこの俺です。
しかも、会ったばかりのその日にな、しかもほんとの名前も仕事も住所も何も知らん男とな。
その人ってゆうのがまあ、仁仁くんとは真逆のゴッツゴツの相当なマッチョでさあ、どうしてガタイのデカイ筋肉ボコボコ男ってムチムチに肥えた尻デカ巨体男を抱きたがるの?
ゲイビデオ売場の一角にひときわ淫らに爛れたパッケージで、ガテン系のごっつい兄貴がムチムチ兄貴を掘り込んで、ムチムチ兄貴がブタみたいに顔歪めてるのがバビョ~~ン!と置かれているけどさ、当時の俺ってば心はロマンチックだったから、そういうお店でそういう商品チラ見しながら、こういう性欲と性欲の激突!!って世界はなあ、お腹空かせたティラノサウルス対スピノサウルスに見えるべなんて、そのビデオのモデルになれそうなルックスなのに激突か激突じゃないかで線ひいて、こっち側に立っていた筈なのに………………やっちゃったのさあ、そういう兄貴と。
すんません、いろんなこと曖昧にした言い方しています。これがその兄貴に読まれると困るんで。察して下さいな。
その時の抱かれ心地が異常にレイプで、たとえて言うなら、ん~~~そうそう、今の俺。
すげーなげえ話でみなさんお忘れでしょうが、俺いま強制性交中でしょ、木で出来た机にゴッリゴリで押さえ付けられ頭ゴンゴンに揺さぶられオセーボの海苔缶ちんこゴフゴフ咥えさせられてんじゃん、こんな苦痛だよ?
だってあれ、俺のロストバージンだべ、もっとお姫様風に抱いてくれよぉ、ばかあ~、ってあいつに着いて行ったの俺じゃないか~、俺のばか~~
………………………………………酸素、少ないみたいです、
人間の海苔缶が気道を虐待しています、
脳に酸素が行きませぬ、
この、キラキラ見えるのなんでせう?
死ぬんじゃないだろうとは思います、
死ぬとか死とかじゃないんです、
氷点下20万度の太陽が反転してゐます、
ここは海です、
冷たい海です、
地球絶滅1万年後の海の延べ棒なのです、
海へと降りしきるのはリビドーの氷結で、
リビドーですから帰巣本能をインストールしていない氷結で、
無痛の海に降りそそげば、
よせてはかえす疼痛の波
それはそれはキラキラとした絶唱が………………
………………………………
………………………………………………幻覚が間歇的におさまると少しは物が考えられマス、海苔缶ちんぽを咥えされられている最中考えていたのは、「おれの口癖ってひょっとして〝どーせ俺なんて〟かもしんないなあ」とゆうことデシタ、こんな目に遭うのはどーせ俺の所為なんでスヨ、溜まった老廃物を体外へ掃き出すゴミ出し口みたいな扱いされるのは、どーせ俺が俺だからでスヨ、みーんな俺の所為ですよーダ。
だって暗闇の中で渾身の力で倒された時も、先輩ってば俺を優しく扱ってくれるつもりだったのに力の加減ちょっと間違えたのね、なんて平和ボケな性善説に則った一縷の希望的観測にボンクラな比重を置いてみたし、なんか堅い物が口に押しつけられた時は暗闇にビビりながらも、強引セールスに財布を取りだすダメ消費者みたいにうっかり口を開いちゃったし、その後まさかの窒息するんかって苦しみがエグエグ喉の奥を突くんだけど、しゃぶられている時って亀頭が奥歯に当たると中々痛いじゃん、先輩の亀頭をそんな目に遭わせないよう、気ィ遣って奥に行くほど口を大きく開けてるもん、今それやってるもん、会社で仕事手伝う後輩の心得みたいな気分っスよ、奉仕してナンボっすよ。
どーせ俺なんてこれ位の気遣いしか出来ないんですよーだ。
ハイ、またウソつきました。
どーせ俺なんて、嫌がったフリでよろこんでるんだろ。
な?
………………………でも本当は、愛を確かめ合って、しっとりと、それでいて中々じらし合っている交わりの方がいいんですよ、今度ちゃんと身体で伝えますからね、先輩。
あ~苦し。
いつからだろう。
目覚めとは、着床した絶望の第一番目の細胞分裂に過ぎないのではないかという、趣味の悪い懐疑主義に馴染んでしまったのは。
窓から漏れ来る朝日で目が醒めた。
カーテンは半ば開いていた。
涼来先輩は抱き枕を抱いて、仰向けに眠っていた。
顔が抱き枕で隠れている。
寝息は、彼がよく眠っていることを伝えていた。
昨夜の出来事をして数年来の俺の望みが叶ったと言うには、幾許かの躊躇いをともなった。ランナーに譬えるなら、ゴールラインを踏んだのにまだ走るべきレーンが残っている気がしてならない心地だ。着地点を見失った落ち着きの悪さが、胸中の片隅に確かに残っていた。
今までに俺が抱いた幾人もの男達。
彼らと一つの部屋で朝を迎えた時に覚えるそれと、よく似た感覚であった。
それが俺に命じる。
この部屋も、もう出なくては。
微睡みの男達を置き、一人で街へと踏み出した幾つもの朝と変わらぬように、だ。
舗道を行き眩しい日射しを浴びるにつれ、この落ち着きの悪さは虚無感へと成長するだろう。
それもまた、幾度も繰り返したことだった。
俺の中に淀む、幾多の男達との夜。
虚無感は、その淀みの深さを以って計ることが出来た。
淀みの中に漂い交叉するのは、すでに顔も姿も朧になった過去達、或いは朧になるのを待つ過去達だ。
涼来先輩との関係をも又、この暗い淀みの中へと手放していいのだろうか。手に入れた直後に、まだ何も手に入れていなかったと悟らずにはいられない虚しさに、涼来先輩を——彼さえも同化させてしまうには、未練があり過ぎた。
一目、その寝顔を見てから立ち去ろう。
俺は、彼の包まる敷布へと手を伸ばす。
「……ん……ん」
涼来先輩が身体を動かす。
わっ!
起しちゃダメっしょ!
だって。
だって。
顔見るのはずかちぃもん。
おれってば、焦っちゃって、慌てて、でも音立てないように服を着て、でもシャツのボタンは留め終ってなくて、でも急いで部屋から出て行くと、廊下のところで涼来さんの弟くんがいて、学校の制服を崩さず着ている子で、わあ真面目、俺ときたら胸をはだけてパンツのファスナー上げているもんだから呆れたような軽蔑したような目で見られたけど、あうあうあう、って俺は走り去ったのでした。
そうそう。
俺ってば、先輩が何をしてもHな連想に結びつけてはすぐ勃起する奴で、ほんと性欲抑えられないアホだけど、昨夜プールに落ちた先輩を救けて抱きしめた時は、勃起していませんでした。
ホントっすよ。
性欲ばかりの俺じゃないって、先輩に知って欲しかったなあ~。
なんて未練を垂らして、階段を駆け下りたのでした。
で、会社。
ふつうに出社する俺。
わが社には、なんでも言ってくれる先輩女性がいてくれて助かります。
「棉吹くん、何か臭うよ。お風呂入ってる?」
風呂入っていないどころか、着替えてすらいません。
「うっす!」
後ろから涼来先輩の声。
俺ってば、椅子から数センチ跳ね上がるほど吃驚している。
涼来さんの声がすると、先輩女性は俺から離れていった。
涼来さん、女性社員に人気ないのよ。
「ケーンタ」
先輩が俺の肩に手を置く。
「あうあうあう」
俺の狼狽え方、さすがになかんべ?不審きわまりないわ。
「ケンタ、お前いつ帰ったの?」
「あの、あの、あの、あの、スンマセン、さ、さ、さ、」
さっきお暇いたしマシタという言葉がこんがらがって出てこないけど、あれ?会社で言っていいのかしらん。だってね先輩のおうちから出社だもんね、と汗かきながら辺りを窺う。
「昨夜、いつまであの店にいた?」
ひょ?
「俺さ、めちゃめちゃ酒弱くて、カシスソーダ3杯でベロンベロンになっちゃうの」
はあ。
「でさ、イタリア料理食ってる途中から記憶が全然なくて」
ふいっ?
「朝起きたら、家にいるじゃん。どーやって戻ったんだろ?昨日お前といつ別れた?頭ん中、白紙なんだよね」
そ、そ、そ、それ聞いている俺の頭の中が白紙です。
「お前が俺を送ってくれたとか?」
「は、は、は、は、ハイ」
「お前どーやって帰ったの?」
「はい、あの、先輩を玄関まで送ったら、す、す、直ぐさま帰りました」
「終電あった?」
「ぜんぜん沢山ありました」
何も疑っていない顔で先輩は、ふ~んと納得して、世話になったなと去っていった。
ふ~。セーフ。
ちょっと待った!
じゃあ、昨夜のあんなことやこんなこと、もろもろ含めて何一つ憶えてないってこと?
しゃぶっただけとは言え、やっちゃったのに。
のどちんこに当たるまで奥に差し込まれた所為で、今でも俺の口はあなたの形を憶えているというのに。
あなたの中ではゼロカウントですか?
先輩の机の方から、実に能天気な声がする。
「あ、給湯室に行く時間だ。お茶にしよ~」
立ちあがって、朝のおやつタイムの準備に行く先輩。
うららかな日射しが窓から差し込んで、こんな日はさぞかし紅茶が美味しいでしょう。
良かったですね、先輩。
じゃなくてよう、ちょっとひど過ぎません?何も記憶にないって。
俺は先輩の背中に向って、手をグーにして誓ったのだ。
絶対に諦めません!とな。
ボ・ボ・ボ・ボ………。
(火の燃えている音っス)
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🐇🐇🐇
「おもらしはソルティドッグのflavorがした」はこれでお終いです。
ケンタと涼来のお話は、まだ続きます。🐇🐇🐇
むずかしい語句の説明。