【詩】遠くへは行かない
煉瓦はいいよ。
頑固だし、重いけど
ふれると案外やわらかい
あたかそうな色だけど
冬の朝なんか
僕を拒絶するみたいに
ちゃんと冷たい
むかしむかし
世界のあちらこちらが
立派になろうと
ちいさなものを押しのけていた頃
あなたはそういう振舞いを
護る外壁として大英帝国印度領に
七千七百七十七階建てのバベルの塔
角が毀れ
色がくすみ
ひとはあなたを
中年の(もしや初老の?)
くたびれた、どこか
粋な人だと見るでしょう
その虚ろがかつて、銃眼だったとも知らず
僕はあたかくなるまで
手をあてています
風とヒタキの通る窓の下
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[あとがき]
作中に出てくるヒタキとは、鳥の仲間です。ヒタキにはいろいろな種類がいて、下の写真は「ジョウビタキ」の雌です。