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linen_on
【詩】ぼくの似顔絵をかくのなら
ぼくの似顔絵をかくのなら
翳はかかないでいておくれ
翳は世界を美しく見せるから
雪嶺の山襞は朝日に青く透きとおり
田を掠める鳥らの羽は地の誠実を知らしめる
ぼくの名前をよぶのなら
歌い終わった後はよしておくれ
歌は世界をまぶしく震わせるから
水は曲がり角で終わらぬクリシェを輝かせ
空を掠める若木の梢はとどかぬ無限を知らしめる
イスラエルのシナゴークを
オハイオのラストベルトを
横須賀の段ボール置き場を
雨が
濡らす
びょうどう・に
尻尾をなくしたぼくたちが
雨のようにこの詞をつかうのは
難しい
湿った溝で瞳をひらく人形を
寺の門前で息絶えた雀を
ハドソン河畔の失業者を
桜が
覆う
いたみを・ぬぐって
尻尾をなくしたぼくたちの
器用な手のひらは又ひとひら
零してしまう
朝
菩提樹の幹に抱きついてみる
きみが日あたる側から抱きつくなら
ぼくは影おびる側から抱きつこう
そっとふれ合う
幹にめぐらせた指と指
くすぐったい・ね
ぼくの青臭い照れ笑いはとどくだろうか
ぼくの中には翳をひいた地声のきみがいる