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講座:ビデオ編集の初歩(1)YouTube"ショート動画"を作ろう

今日は。
皆さんはYouTubeの動画をどのくらいよく見ますか? 私は00年代からよく見ています。

数年前から(正確にはコロナ騒ぎが本格化した2020年以降)、YouTubeには“ショート動画”という縦長で短いフォーマットが現れました。Wikipediaの記事には、中国のTikTokに対抗するためGoogleが決定した戦略だったと書かれています。
縦長の短い動画がネットに普及し始めた背景には、スマートフォン所有者による「自撮り」の流行が当初の中心だった写真から動画にまで広がり、そのような動画を公表できるサービスが求められたということがあるでしょう。
それはともかく、時間が60秒以内の縦長動画が「クリエイター」向けサービスに加わったことで、YouTube自体のイメージもかなり変わったと言えるでしょう(それがクリエイターにとってどんな意味を持ちうるかについては後述します)。


ビデオ編集初心者にとっての“ショート動画”

YouTubeの“ショート動画”は、60秒という時間制限や主にスマートフォンで視聴されることから、複雑なエフェクトや画面転換(トランジション)に凝る余裕が与えられないフォーマットです。CG映像やアニメでない限りは撮影対象の選択が一番重要であり、編集の役割は少ないと思われるかもしれません。
しかし見方を変えれば、それは初心者にとってビデオ編集の基本的な技術と知識を応用するのに最適なジャンルだということです。素材の一つ一つは平凡でも、編集によって変化を付け、元素材よりも面白く見せることはできます。実際にYouTubeでショート動画をいろいろ御覧になればお分かりになれると思います。
題材は大して珍しくもないのに、動画のタイトルや、音楽、効果音、字幕やキャプションの挿入といった、ちょっとした工夫によって面白く見える、という例がいくつも見つかるでしょう。

どんな編集ソフトを使うべきか

ショート動画の最大の特徴は、スマートフォンでの視聴を前提とする縦長画面です。ビデオの縦横比は「アスペクト比」と呼ばれ、横:縦の順で表記されます。ネット配信用動画の最も一般的なアスペクト比は、横長なら16:9、縦長なら9:16です(それぞれ、一般的なPCモニターやスマートフォンの画面に合わせた比率です)。

現在も開発が続いている有名どころのビデオ編集ソフトなら、従来の横長画面(4:3、16:9)以外に、縦長(9:16)という選択肢があるはずです。どの編集ソフトでも、新しい「プロジェクト」を作成しようとすると「プロジェクト設定(Project settings)」の画面が開くはずですが、そこをスクロールしていっても縦長サイズの選択肢がないようなら、そのソフトは時代遅れで使えないということです。

スマートフォンで使うためのアプリケーションの中には、従来の横長動画でなくショート動画の制作を前提しているような設計のものもあります。編集機能は限定されていますが、自分で撮った映像を簡単に切り貼りし、タイトルや字幕やを入れてショート動画としてYouTubeにアップロードするのには十分です。撮影から作品化、公開までのスピードを最優先するのなら、そういうアプリを使うのものありでしょう。
例えば、中国製のInShotが有名です。これには無料版と有料版がありますが、簡単なショート動画制作には無料版で十分でしょう。日本語にも対応しています。無料版にはアプリ内広告が小さく出るので、誤ってクリックしたりしないよう注意が必要です。AppleストアやGoogleストアでダウンロードできます。

ただ私は、ビデオ編集初心者に対してはスマートフォン専用の編集アプリをお薦めしたくありません。限定的な編集機能しかないうえ、制作を通じて様々なビデオ形式やそれらの特徴を知ることもできず、素人の趣味レベルの作業しかできないからです。そもそも、スマートフォンでしか作動しないアプリにそれ以上のことを求めるのは間違いです。

ショート動画から始めて横長のネット動画やその他のフォーマットに守備範囲を広げてゆこうとお考えなら、デスクトップPCやラップトップPCで使えて、Windows、Apple、LinuxといったOSにインストールできる汎用タイプの編集ソフトがお薦めです。
私自身は2000年代からAdobe Premiere Proを使っていましたが、このソフトは初心者にはやや難しいでしょう。個人的なお薦めは無料ソフト、Kdenliveです。このソフトの長所は、普通のラップトップPC上でも動作が軽いことです。ほとんどのビデオや音声の形式に対応していて基本的な機能はそろっています。4Kでの出力にも対応しています。Kdenliveの最新版は、公式サイトから各OS向けをダウンロードできます。

Kdenliveの公式サイト(画像クリックでもリンクが開きます)

他にも似たような無料ソフトはありますが、開発期間が長く安心して使えるという意味で、これがベストの選択だと思います。公式サイトの表示言語に日本語が含まれていないので、インストール完了までは英語表示で我慢してください。
ソフト自体は日本語に対応していますが、もしも最初に立ち上げた際に日本語になっていなければ、SettingのタブからConfigure languageを選んでソフトの表示言語を日本語に変えることもできます(日本語化は完全ではありません)。

Configure Languageを選択
日本語を選択

編集ソフトをPCにインストールして日本語化したら、デスクトップのショートカットやWindowsスタートボタンのアプリ選択の項目などから立ち上げてみてください。次の画像のようなスタート画面が出てくるはずです。
下の方にV1とかV2とあるのが映像(video)、A1とかA2とあるのが音声(audio)のトラックです。

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