編集者の「読みたくなる」見出しのつけ方
書籍や雑誌、noteの記事につけられる「見出し」。
今回は、“読みたくなる”見出しのつけ方をご紹介します。
こんにちは、高橋ピクトです。
池田書店という実用書の出版社で、健康書や趣味の本を編集しています。
私は主に書籍を編集しているのですが、見出しは、書籍づくりのキモです。
なぜならば、書籍は文章の集まりですが、ぱっと見ただけではどんな内容かわかりません。
ただし、文章の要点をまとめた「見出し」があれば、どのような内容が書かれているかわかるので、書籍のどの部分が自分に必要か判断することができます。本を買う前に、中身をパラパラめくり、見出しを眺めて、買うかどうかを決めるという方も多いでしょう。そのくらい大事なのが見出しなのです。
今回は、書籍編集者の見出しのつけ方をご紹介します。
noteの記事を書く時にも役立つようにまとめますので、よろしければお読みください。
見出しはセンスじゃない、技術だ。
見出しをつけることに慣れていないと、どうしたらよいか困ってしまうと思います。でも、ちょっとしたことでよくなりますので、ここからはビフォーアフターで見ていきましょう。
書籍を作るときは、初めから原稿に見出しがついているとは限りません。仮でついていることがほとんど。その仮の見出しを著者、ライター、編集者が共同でブラッシュアップしていきます(とくに書籍の見出しは編集者の責任でつけられるものが多いと思います)。
まず、お伝えしたいのは、見出しはセンスでつけるものではないということです。大事なのは小さな技術の積み重ね。というわけで、超簡単なものからご紹介します。
①「かぎかっこ」でくくると、文字が「目に当たる」
【ビフォー】 地震は備えで大きく減災できる
【アフター】 地震は「備え」で大きく「減災」できる
これは、『マンガでわかる災害の日本史』(磯田道史著 河田惠昭 監修 備前やすのりマンガ)の見出しです。ビフォーとアフターの違いはかぎかっこだけ。でも、その文章が伝えたいことは何かを強調することで、その文章に興味をもってもらうことができます。とくに「減災」という防災に似ているけど聞きなれない言葉を「 」でくくっているのがポイントです。
【ビフォー】 1分以上揺れたら津波が来ると思え!
【アフター】 “1分以上揺れたら” 津波が来ると思え!
これも同じです。ちょっとした違いですが
“ ”でくくることで、1分という長さを強調しています。
どうして1分だろう?と思ってもらうために、本をパラパラとめくっていても目に付くように目立たせる工夫をしているのです。
書籍編集者が考えているのは、立ち読みで「文字が目に当たる」見出しをつけることです。
②短く!文字はブロックで見せる
もう一つ、すぐにできるポイントをご紹介します。
文章は、極力最短にすることです。
【ビフォー】 便秘の人は「軟水」ゆるめの人は「硬水」を飲むべし!
【アフター】 便秘は「軟水」ゆるめは「硬水」を飲む!
これは『新しい腸の教科書』(江田証著)の見出しです。
「便秘の人は」を「便秘は」
「ゆるめの人は」を「ゆるめは」としただけですが、
これも「文字を目に当てる」ための工夫の一つ。
これは紙面を見るとわかりやすいと思います。
左がアフターで、右がビフォーです。
(わかりやすいと言いつつ、細かな差かもしれませんね…)
見出しを改行して2ブロックとして見せられるように、短くする必要がありました。このあたりはデザイナーさんとの共同作業となります。
③なぜ、数字を入れると、興味をもたれるの?
次は応用編です。
実用書の場合、文章のどの部分を要約したら「読みたい!」と思ってもらえるかを考えます。多くの編集者が使うテクニックが「見出しに数字を入れる」ということなのですが、これはなぜでしょう?
【ビフォー】町人たちの助け合いにより進められた復興
【アフター】わずか2年!町人たちの江戸復興
原稿は、江戸時代の町人たちが大地震のあと、信じられないスピードで復興を進めたという内容でした。その期間の「2年」を見出しにすることで、読みたい気持ちを誘っています。
数字を入れると、程度、量が具体的にわかるので、自分の経験や知識との比較がしやすく興味をもってもらいやすいと私は考えています。「復興は時間がかかるけど、たった2年で…?いったいどんな工夫があったんだろう?」という具合に。
④「ふわっと見出し」はもったいない!
具体的にして精読率を上げる!
最後は、最も重要なポイント。
見出しは文章の要約ですから、全体をまとめたくなります。
でも、待ってください。それで文章の魅力が伝わりますか?
あくまで見出しは「読んでもらう」きっかけを作るパーツ。
ですから、要約をしつつ、具体的な情報を見出しにします。
【ビフォー】 知っておきたい腸の構造
【アフター】 腸は“テニスコート”ほど広い!
知っておきたい腸の構造
このページの原稿では「腸の構造」をまとめていたのでそれを伝えることは大事です。でも、それでは情報が「ふわっと」曖昧で興味を持ってもらえません。そこで、意外性のある具体的な内容を見出しに含めました。
【ビフォー】 幸せかどうかは腸しだい?
【アフター】 セロトニンの9割は腸で作られる!
こちらも、セロトニンという具体的な成分や、9割という程度を具体的に示しています。
【ビフォー】 長生きの秘訣は「腹7分目」
【アフター】 「腹7分目」で長生き遺伝子が活性化する
ビフォーだと「腹7分目」だと何がよいのか漠然としています。そこで「腹7分目」が体に何をもたらすのかを示す文章に、そして、遺伝子という言葉を含めることで具体的にしました。
行っているのは文章をよく読んで、特徴的な言葉や文章を見出しにするだけです。見出しというと、一から考えなきゃ!と頭を悩ませたり、逆に何も考えずに漠然とつけてしまう人も多いのでは?
noteなどで記事を書いた場合も、原稿のキーワードを見出しにしてみると普段とは違った記事になるかもしれません。
もし、見出しがない記事であれば、ザっと眺めたり、目次を見るだけで、何を伝えたい記事かわかりやすくなるでしょう。たとえば、1500字程度の原稿であれば、3、4つくらい見出しをいれるのがオススメです。この原稿は、2500字程度で5つの見出しで構成されています。
漠然とつけていた方も、より具体的にすると記事のメッセージが強まります。きっと「読みたい!」と思ってもらえるでしょうし、最後まで読んでもらう「精読率」を上げられる思います。
#仕事の心がけ
【今回、紹介した書籍】
文 高橋ピクト
生活実用書の編集者。『新しい腸の教科書』『コリと痛みの地図帳』などの健康書を中心に担当。「生活は冒険」がモットーで、楽しく生活することが趣味。ペンネームは街中のピクトグラムが好きなので。
今回ご紹介した見出しのつけ方は、良い原稿を読んでもらいたい!という一心で培ったものですが、ちょっと細かいかもしれません…。周りの著者さん、ライターさん、皆さん優秀な方なので、最初から原稿に「読みたくなる」見出しがついていることも多く、編集者がブラッシュアップをするにしても、ちょっとしたことなんですよね。。。でも、少しでも参考になれば嬉しいです。
Twitter @rytk84
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