20240223_再録・黒石寺蘇民祭初参戦記【2】装着(2009.2.1〜2)
うっすらと雪を被った黒石寺に到着。
駐車場はすでに車の熱で雪が溶け、グジャグジャの水田状態。
このような事態を想定していなかったので、履いてきた白のスニーカーがこの時点で半分泥に埋まり涙目。
事前対策に抜かりないDEEDEE'S組は、全員しっかり長靴。もっと早く対策を聞いておくべきだった!
売店で下帯(白ふんどし)と地下足袋を購入して寺の石段を登り、藁ぶきの広い休憩所へ。
壁も藁。ベンチ代わりに巻いて束ねた藁。
その真ん中で、炭火で肩を寄せ合って暖をとる。
2009年とは思えない、原始的かつ幻想的(?)な光景。
だいたい、薪で焚かれる火自体見るの久しぶりだよな……
とにかく一杯飲んで身体をあっためようということで、藤村さん寄贈の喜久盛酒造『藤原酒』(ラベルのイラストは藤原組長!)の熱燗で乾杯。お酒も旨いし、身体もあったまるし、元々テンション上がってるしで、出番前から何杯も熱燗を胃の中に流し込む一同。温まったアルコールが、手足の指先一本一本にまで沁み込む感触を覚える。
あとは夜10時の「水垢離」(みずごり)まで、酒を呑みつつ、焼き芋をほくほくとつまみつつ談笑。
「でもなー、精進してない奴が蘇民祭出たら、絶対ケガすんだってなー」
……………え???
【精進】(しょうじん)
参加者である男子は祭の1週間前から精進潔斎に務めなければならず、肉・魚・ニラやニンニクのような臭いの強い食物、或いはそれらを調理した火を通した食物を口にすることが禁じられる。
(Wikipedia『蘇民祭』より)
もう時効だろうから、正直に白状しよう。
「蘇民祭に参加する者は1週前から精進しなきゃいけない」
という掟に気づいたのがだいぶ遅かったので(言い訳)、僕はまっっっっったく、精進をしていない。
金曜日には「豚のスタミナ焼き」(豚バラ+ニラ+ニンニク)なんて食べてたし……
精進してない不安と、薪で焚いた火による熱で雪が溶けて、休憩所の足元も泥でグジャグジャになったことが相まって、精神状態はかなりダウン。
そして、その落ち込んだ状態のまま、運命の夜10時が近づいた。
休憩所のあちこちで、男たちがズボンを脱ぎだし、着替えを始める。
もちろん我々DEEDEE'Sチームも……
しかし銭湯にいるわけでもないのに、初めて出会ってから数時間でフルチンを見せ合うというのもなんだかなあ…(苦笑)。
「おーい! まだ着替え済んでねえ人いるか~!?」
白髪に眼鏡の、かなり小柄なおじさんがニコニコしながら我々のパーティーに近づいてくる。蘇民祭のベテランの「世話人」だろうか。
「ホレ、前さギュッと押さえててけろ」
僕が一番着替えが遅れていたので、おじさんの助けを借りることに。
言われた通りにイチモツを畳み、その上から下帯で丁寧に包み込む。
おじさんが後で下帯をギュッと引っ張りあげると、尻とイチモツが下帯と激しく摩擦し、痛みとも快感ともつかぬ生ぬるい感触が股間から湧きあがる。
装着完了。
そして一気に、上半身の衣服を脱ぎ去り、下帯一枚の姿に。
一気に全身を駆け抜ける冷気に、洒落抜きにその場で跳びあがる。
しかしここは、薪を焚いた休憩所の中。
ここから外に出たら、どんな地獄が待ち受けているのか…。
「ほれ~気をつけて行ってこ~~~~~い!!!」
さっきの着替え手伝いおじさんに強引に背中を押され、いよいよ下帯一枚の裸で、岩手の寒空に向かう。
【つづく】