フードエッセイ「アイスクリームが溶けぬ前に」 #23 ミニクロワッサン(Mini One)
ある食べ物に初めて出会ったときのことを覚えていればいるほど、その食べ物を好きになる確率は高いように思う。
小学生の頃、祖母が連れて行ってくれた百貨店「西武 沼津店」の中に入っていたMini Oneで、初めてクロワッサンに出会った。11年前の1月末に閉店した「西武 沼津店」という舞台だったのも、その思い出を色濃く残しているのかもしれない。
ドンク(DONQ)から独立したブランド「Mini One」といえば、 "ショーケース越しのミニクロワッサン"という方程式。クロワッサン好きの方とって、受験頻出の公式になっている気がする。
片手で持てる手頃なサイズ感、バターの風味とクロワッサンの上にハケで塗られたシロップ。歯を入れた瞬間にサクッと、断面を見ると層の細かさに感動。手がクロワッサンにのびていく。「みんな…!出来立て・買いたてにすぐ食べてよね…!」と心が叫ぶ。
幼少期は、ミニチョコクロワッサンが好きだったが、なぜかチョコの方はプレーンに比べて少ない量しか買えなかった。今思えば虫歯予防だったのかもしれないが、そういった縛りがなくなった今でも、プレーンのほうを多く食べている気がする。お茶も、紅茶も、牛乳も、どの飲み物でもマッチするからかもしれない。他のものとも相性がいい食べ物は、ひとつの味に飽きたときに強みを発揮する。
量り売りだからこそ、焼きたてのミニクロワッサンを、シーンに応じて買いたい量を買える。帰りの車内でクロワッサンのパンくずをボロボロ落としながら食べたり、祖母の家で二人で仲良く食べたり、家族とのおやつの真ん中にあったり、懐かしさを味わいたくて一人で味わったり。包み紙に描かれているイラストのように、成長と共にミニクロワッサンがいてくれた。
クロワッサンの初めてがMini One(ドンク)で良かった。そんなことを思いながら、淹れたてのコーヒーと共にいただこう。
今日もごちそうさまでした。
*****