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フードエッセイ『アイスクリームが溶けぬ前に』#3|COFFEE HOUSE Winds(裾野)


定期的に通いたくなるお店が出来ると、少し大人になった気分になる。


社会人なりたての頃に行っていたデザインや内装に特徴のあるお店ではなく、若い人が多く訪れているわけでもない。でも、自分の暮らしの近くに感じられて、小さなロッジに来たような感覚になる。そんな定期的に通いたくなる(実際に通っている)『COFFEE HOUSE Winds』は、withと近しいスペルだからか、勝手に親近感を覚える店名だ。

Windsは力強く残っていて、COFFEE HOUSEはちょっと剥がれかけている。
長年ここに店を構え続けているのが伝わってくる写真だ。


いろんな席での会話が混ざり合いながら、天井から降り注ぐラジオが耳に心地よく入っていく。今年から週一で通おうと、小さな決心をした場所だったが、3週間ぶりになってしまった。


どのメニューも美味しいお店での注文ほど、何を頼もうか迷ってしまうのは自分だけだろうか。だが、ここで困ったときは、ミニハンバーグつきのピラフ(Bランチ)を選ぶことをひそかに決めている。暑くなってきたから、アイスティーを食後にチョイスして。



Bランチのピラフ(この日はカニピラフ)が湯気をあげながらピットイン。


あれ、付け合わせのオレンジがメロンに変わってる?と思い、店員さんに聞いてみると、「気まぐれで変えてるんだよ」って笑いながら答える。ちょっとした会話が店員さんと出来ると、そのお店への愛着アベレージがアップする。


あ、ふと気づいたら、ここに来たときのドレッシングはいつもオーロラソースだ。それを思う同時に、幼少期に行きつけのステーキ屋のキャベツの千切りをほぼ残し、父にパスしていた光景を思い出す。キャベツの千切りがつないでくれた、過去と今の架け橋。




暖かくなってきて、ここで頼むセットドリンクがホットコーヒーからアイスティーに変わる。アイスティーの量に比例しないガムシロップ(ガムシロ)がやってきたのを深く気にせず、無意識で7割ほどを投入。


紅茶とガムシロが混ざり会う様子を見て、これは甘すぎる…!と気づくも時すでに遅し。もうこれは甘党好きモードに切り替えるしかないと、思考のスイッチを押す。


いざ飲んでみると、想定よりも甘すぎることはないものの、ガムシロがちゃんと入っていると感じられる甘み、その奥から広がるアイスティー特有の風味が鼻をつく。


でも、この量がちょうどよかった。これより多いと飲みきるまでが大変だから、それを見越していたか分からない店員さんに拍手を送りたくなる。


着信が何度も続いたので、そろそろランチモードから仕事モードへ転換しましょうか。


ランチモードが溶ける前に、ごちそうさまでした。



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