2000年初頭の、とある日の記憶
自分が女性ポートレート専門で、稼いでいた時代の話。
20年前だったかの記憶。博多出張の折、撮影終了後にご接待を受けた時の話。「おふくろの味はコンビニだ」そう言いながら博多の某超高級クラブで、サンマ定食の出前に貪りつくイケメンで、総額1000万超のブランド品を身にまとった某組織の某金庫番のキャバクラ風俗部門の全国統括部長さんの悲しい表情を思い出した。ボトルすら写真でしか見たこともないクソ高い酒をご馳走になりながら「安いイモ焼酎の方が自分は性に合う」と言ったら、イモ焼酎を置いているノーパンキャバレーに連れて行かれた。あの世界の人たちの接待は金の無駄遣いが激しい。落ち着かなさすぎると思ったが、こんなのが普通になったら頭おかしくなるんだろうなとも思った。
その部長さんの統括するキャバクラは全国組織、系列の地元の店で、部長さんのバースデーパーティーが地元従業員全員で行われた時、自分はただのカメラマンだったので、たまたま請求書とデータをフロントに持ち込みに行った時に偶然、泥酔中の部長に出会い、ご挨拶申し上げたら、焼酎のニューボトル持ってきて「飲め!一気で飲め!」とすごんできたので、自分は車で来ていたのだが、こりゃしょうがない様子だなと思ってフロントに代行運転呼んでもらってから一気飲みして、「ごちそうさまです美味しかったです」と言ったら、急に土下座して「申し訳ありませんでした」って、ぺったんこになっておでこ擦り付けるあの業界のジャンピング土下座をしたので超びっくりして、周囲の目もあったので自分も正座して、「いえいえ、ご馳走になってお礼を言うのはこちらですから頭あげてください」としか言いようがなかった。あの世界の無茶苦茶は重々承知の上だったので出入り業者らしさと、せいぜい女性ポートレート専門のお色気写真家としての少しばかりのプライドぐらいしか見せないようにしていた自分なので、こんな状況を流布されたら繁華街を歩きづらくなると内心困っていたのだが、部長に謝られながら抱きつかれて泣きつかれてしまって、何が何だか…の状況だったが、さすがにフロントにいた店長らがその場をうまく収めてくれたので無事帰れることになったのだが、あそこで一気飲みを拒否ってたらどうなっていたことやらゾッとする。
金と欲と上下関係だけの世界においても、一般人にはわからん苦しみと喪失感やら罪悪感に取り憑かれて、それをごまかしながら冷徹に結果のみを集めなければいけない掟に縛られて、ご褒美と脅迫と制裁にまみれているんだろうなぁと、同情心すら持ってしまったのを思い出してしまうと、一概に、下手なことは口にできないなぁという戒めを思い出してしまった。なんだかな。その日、黒服全員90度お辞儀でエレベーターを見送られ、悪酔いしてしまったことも思い出した。全くなんだかなぁ。
20年前の話なのにな。金と欲に溺れて、悪いことに手を出したお偉いさん方も、この時代においては戦々恐々なのだろうなと、そういったところか。
慎ましくも明るく生きていける自分でありたいもんだなぁと、今は心からそう思う。
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