【Text 2008】「アートは「炎」そのもの」 みて・かんがえて・はなす展覧会「Mite!おかやま」出展レポート
(このテキストは、2008年3/25に制作したものを一部追記・修正したものです。)
2006年7月、岡山県立美術館で行われた特別展「Mite!おかやま」での『またたき』出品の様子をお知らせします。
2006年7月21日から、アメリア・アレナスプロデュース「Mite!おかやま」—岡山県立美術館特別展が開催されました。
その展示に、「またたき」という作品を出品するということで、 17日から岡山に入り、展示作業をし、アメリアのレクチャーにも参加してきました。
3日3晩、アレナス氏が、一から展示を作り上げていく様子を見ることができて、夢のような時間を過ごすことができました。
7/17-18に展示会場に入り、作品を展示しました。
アレナス氏の「みる、楽しさ」を具現化した展示方法はとても興味深いものでした。
展示フロアには、キャプションが一切なく、時代や国籍や材料、手法といった情報を与えない。
作品そのものをみて、自分自身が思考することができる展示になっています。
その作品と作品の関係性、異質なものを近くに置いたり、同質なものを近くに置いたり、見る人の思考を考えて、みる人の感覚を狂わしたり、みる人に時に運動を必要とさせたり…。
四千年前のものから、現代のものまで、全ての作品が同質に感じられ「楽しい!」
7/19には、ナビゲートスタッフによる作品のレクチャーが行われました。
『またたき』は作品を見下ろしてみるだけでなく、靴を脱いで作品の上に乗りみることもできます。足の裏でも作品を鑑賞できる仕組みです。
このアイデアは、触ることのできる彫刻を鑑賞した体験にあります。
幼い頃に彫刻を見にいくことがあり、彫刻の内容や価値は理解できなかったけれど、触ることの出来る彫刻は、触った瞬間に身体を通してダイレクトに伝わってくる経験としました。その経験から、私は写真でもそれが出来ないか考えていました。
その考えから、写真をただみるのでなく、身体を通して体験する写真を目指しました。ただみるときと、上に乗ってからみるときとでは感じ方が違うと、多くの方が感じていました。
ナビゲーターの方も、最初は難しい表情や硬い表情をしている方が多くいましたが、作品の上に乗り、作品をみることで笑顔も見え会話が弾みました。ました。この瞬間はとても嬉しかったです。作品に投げかけられる会話がまるで水面に広がる波紋を生み出しているのように感じました。
アレナス氏は、美術作品は、「炎」だと言っていました。
「太古、私達の祖先は、炎を囲み、様々なことを語り合った。美術作品も、他人と様々なコミュニケーションを生み出す「炎」そのものだ」と。
展覧会がスタートし、ナビゲーターを務めてくれた方からの報告では、少女が『またたき』の上で飛び跳ねた姿が蛙のようだったり、作品の周りをクルクルまわったり、ジャンプしたりしゃがんだりする事で作品の見え方が違うのが面白いという意見が出たそうです。
ひとつの作品を目だけでなく身体を使ってみることで様々な見え方があることを私自身も報告を受けて気付きました。
今回もまた、作品を通して、沢山の人と出会うことが出来ました。
作品をつくることは、メッセージを誰かに、発信する事。
アレナスに言われた言葉が、頭をよぎる。
「作品は、見る人がいて、はじめて完成する。それを忘れないで」
今回の展覧会で、沢山の人が私の作品をみて、そして自分のこととして考えて、友人と語り合っていただけたら幸いです。
私もまた、その「火」を絶やさないよう、精進し、常に薪を焼べていきたいと思いました。
⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター