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【Art Project 2022】「文化政策の民主化」とは!?金曜日の芸術学校:「市民参加ってなんだろう!?」森隆一郎さんレクチャーレポート

【SACP2022】

さいたま国際芸術祭レガシー事業「さいたまアーツセンタープロジェクト(SACP2022)」では、月に3種類のプログラムを実施しています。

SACP2022についての詳細はコチラ↓


金曜日は、「金曜日の芸術学校」のプログラムを展開。

2022年は、「市民参加ってなんだろう?」をテーマに、アートの知識や実践を共有するレクチャーを実施しています。

第3回目となる、講師は、森隆一郎さんに御登壇いただき、お話をしていただきました。

冒頭、文化政策の歴史を概観していただき、戦後2次大戦の猛省からイギリスでうまれたアーツカウンシル、また日本国内の「公民館」の設立などの役割とねらいを共有。


(公共における)アートマネジメントのキモは「社会の様々な関係性をアートを通じてマネジメントする」というキーワードから、「自治のツールとしてのアーツセンター」という視点が投げかけられました。昔は、それを公民館が担っていたが現在はその役割は他の場所が担う様になってきている感があり、その場所が「アーツセンター」なのかもしれないという指摘がありました。



その中で、「ツールに囚われると参加人数や事業数などの安易なKPIに引っ張られてしまうが真の目的はそこにはない。アーツセンターが、市民自治を獲得するためのツールならば、市民自治(的な)目標を据えて、そこを見て動きたい」という現場で陥りがちな懸念点についても言及がありました。

そして、森さんが携わった2008 年にオープンした福島県いわき市の公立文化施設「いわき芸術文化交流館アリオス(いわきアリオス)」では、オープン当初よりアーティスト藤浩志と 市民参加による企画会議「アリオス・プランツ!」の事例を概観しました。

最初の固い自己紹介だけの集まりから藤さんとの仕掛けや企画をはじめ、フェスティバルや映画祭など、さまざまな市民の自主的な活動が生まれた事例から「関係性のマーケティング」というキーワードで、森さんが地域の多様な人物との出会いと関わりを生み出していた活動を共有しました。参加者から「どのようにそれらの関係を築いていたのか?」という質問に対し、「街を歩く、面白そうな人に声をかけて来てもらう。またコーディネータのような核になる人が必ず存在する、誰がそこにいるのかをみつける」という回答をいただきました。その後、震災があり施設も避難所になり、人が集まれない時期のこと、他地方に移住した方との出会いにより、再び人が集まる企画を行った時のことなどを共有しました。

最後に、ジェイン・ジェイコブズの都市論とイヴァン・イリイチのコンヴィヴィアリティの道具の視座から、これからの文化政策についての提案がありました。ハコモノ・ハイカルチャー・アーツカウンシルから自立共生の道具・文化の多様性・クラウドファンディングへ、観賞・消費・体験・参加から創造・連携・支援・伴走へ、パッケージソフトからカスタマイズ・創造へ、自主企画から協働・協治へ。一歩方向ではない、双方向の「文化政策の民主化」を創っていくことが大切なのではないかと力強いメッセージが響きました。


さいたまでは、さいたまアーツカウンシルが10月に発足したばかり、そのデイレクターでもある森さん、今後のさいたまのアートの場に注目していただければ幸いです。


ご参加いただいた皆様、御登壇いただきました森さん、ありがとうございました!

●「SACP2022」金曜日の芸術学校「市民参加ってなんだろう」vol.1
さいたまの市民参加プロジェクト:さいたまの「今」を知る!

●「SACP2022」金曜日の芸術学校「市民参加ってなんだろう」vol.2
あらゆる人を巻き込む「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」

プログラムのアーカイブは近日、さいたま国際芸術祭公式Youtubeアカウントで公開予定です。どうぞおたのしみに!


●「さいたまアーツセンタープロジェクト」(以下SACP)は、生活都市さいたまで、ライフスタイルにアートの時間を生み出すプロジェクトです。「さいたま国際芸術祭レガシー事業」として、2022年7月〜2022年11月に展開しています。

2020年、「さいたま国際芸術祭2020」の市民プロジェクトとして実施したSACPは、さいたまゆかりの作家を中心に様々な表現と市民が出会い、関わる約80のプログラムを芸術祭準備期間から会期終了 (2019年8月〜2020年11月) まで実施しました。その中で得た経験と、出会った人々の繋がりを大切に、2022年は、市民サポーター事業と連携し、4つのプログラム(①ウィークデーアーツプログラム・②アーツセンターキャラバンプログラム・③アウトリーチプログラム・④メディアプログラム)を実施し、市民参加型のアートプロジェクトを通して豊かな芸術文化活動の場をつくっています。

・SACP2022の概要

https://www.city.saitama.jp/.../002/sacp/2022/p089326.html

・SACP2022のプログラム予約サイト


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Shunya.Asami NOTE
⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター