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Autumn in love


中学生の頃から、ロックミュージックを聴き始めた。


たくさんの曲の歌詞の中によく出てくるジントニックという言葉の響きがカッコ良すぎて、ずっと気になっていた。


それはおそらくThe大人の味(ジ・オトナノアジ)のお酒なんだろうと想像していた。


初めてジントニックを飲んだ時、

甘くてシュワシュワしていて

飲みやすいお酒だと知った時、少し拍子抜けをした。


僕がよく聞いていた音楽の歌詞の中によく出てくるもので、次に僕が気になっていたのは、金木犀という言葉だ。


なんか惑星の名前みたいな響きだし、金木犀っていう字面がまずカッコいいし、惑星だと思っていたら実はオレンジ色の花みたいだし、甘い匂いがするらしい。


金木犀ってなんやねんとずっと思っていた。


僕が住んでいた北海道には、金木犀は咲かないのだ。咲くには北すぎるし寒すぎるらしい。


フジファブリックの曲では、金木犀の香りを嗅ぐと堪らなくなると言っていて、

きのこ帝国の曲の中では、感傷的な夜に金木犀の香りを辿ってしまう


ヤバめの薬?


甘くて堪らなくなっちゃって勝手に辿ってしまうような花の香りを、ずっと感じてみたいなぁと思っていた。



ある秋の日、母親が東京に実家へ帰省するタイミングがあった。


何かお土産いる?と聞かれた時、

僕は迷わず金木犀の花を持ってきて下さいと言った。


母はポカンとしていた。


数日して帰ってきた母親は、実家の庭に咲いていた金木犀の花を摘んで、タッパーに入れて持ち帰ってきてくれた。


想像していたよりも小さな花で、確かにオレンジ色というより赤黄色だった。

僕はワクワクしながらタッパーを開けて、その香りを嗅いだ。





あ、トイレのやつだこれ。




後に上京して、実際に秋の季節に街で金木犀の香りをかぐと素敵さが全く違ったのだが、小さい頃から本物の金木犀の香りを嗅いだことないこのときの僕にとって、この香りに想起させられるのは公園の公衆便所そのものだった。



わざわざ持ってきてと頼んだ母に対して

「なにこれ?」


と聴き、それに対して母は


「こんなもんよ、こんなもん」


と、こんなもんブラザーズ。


確かにトイレの匂いだったが、自分の中ではずっと嗅ぎたかった匂いを嗅げたという興奮もあり、でも、公衆トイレやんけ。


え、ロックミュージシャンってわからない。
トイレの匂いに感情的になるの?

なんかそんな話古文であったな。
好きな女性のトイレを愛おしく感じるやつ。

そういう感じ?

僕は、金木犀の香りがしてわからなくなった。








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