書評|『詩と散策』(ハン・ジョンウォン著/橋本智保訳)(書肆侃侃房)
〈散策が詩になるとき〉
冬の真っ白い雪と幻想的な光、果物を乗せたトラックと猫、寡黙な川――散策とは、このような散らばりのなかにある存在を拾い集めることかもしれない。それが詩人によるものであれば、散策もまた詩になる。『詩と散策』は、散歩を愛した詩人ハン・ジョンウォンの散文をまとめたエッセイ集だ。
「私が冬を愛した理由は百個ほどあるのだが」とはじまるこのエッセイ集は、散策を通じて、その日常に散らばる「詩の欠片」を拾い集めていくさまを描く。たとえば、冬の雪景から、笑い声が聞こえる