医療介護業界における経営計画と経営戦略:基本のキ
経営計画とは、目指す姿(ビジョン・ミッション)に数字を入れたものです。10年後にこんな世界を作りたい、こんな会社でありたいといった想いに数字を入れたものです。そして経営戦略とは、その経営計画を達成するために、限られた資源をどの順番でどう配分するのか、ということになります。そう考えると、実は経営者なら誰でもやっていることです。でも無意識的な思いつきや、前年踏襲、または常識的にやってしまいがちです。そこで今回は、経営計画と経営戦略を作る上での視点をご提供いたします!
1. 目指す姿の設定
最初に、経営者が事業を通じて達成したい目指す姿(ビジョン・ミッション)を設定します。これが経営計画の基盤となります。経営者の強い想いからすべてが始まります。常識などは必要ありません。経営者自身が心から欲する目指す姿を、描き切ることから始まります。
2. 経営計画の策定
ビジョンを実現するために必要な財務目標(売上や利益)や人材計画(未来組織図)を策定します。財務目標で大切なことは、売上よりも利益です。いくら売上を増やしても、利益がなければ会社にお金が残りません。そのためまず、利益目標を立てます。
人材については、組織の規模よりも、社員の育成を優先します。社長の意思が伝わる社員がいなければ、規模の拡大とともに組織がバラバラとなり、崩壊します。そのため未来の組織図を作り、幹部や管理者といったポジションを想定することで、定着と育成の重要性を認識できます。
3. 市場分析とSWOT分析(自社と競合との位置関係)
市場分析とは、自組織が置かれた外部環境を詳細に把握することです。具体的には、地域の人口統計、医療介護ニーズの動向(要介護者数、受療率、世帯構成など)、競合他社の戦略やサービス内容等を分析し、自組織の位置付けを明確にします。
次に自組織の強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)を具体的に明示します。例えば、「強み:経験豊富なスタッフ陣、弱み:高齢化による労働力不足、機会:高齢者における介護ニーズの増加、脅威:競合他社との競争激化」などです。そしてそれぞれを組み合わせ、攻める(SO)・脅威を回避する(ST)・弱点を改善する(WO)・脅威に備える(OT)の4つのポイントを押さえます。SWOT分析は古臭いと思われがちですが、十分有効です。
4. 戦略の策定
SWOT分析から浮かび上がった、攻める(SO)・脅威を回避する(ST)・弱点を改善する(WO)・脅威に備える(OT)について、それぞれの対策を具体的に策定します。たとえば、攻める(SO)では「スタッフの豊富な経験を活かしてリピートされるサービスを開発する」、弱点を改善する(WO)では「働きやすさと働きがいを追求し、スタッフの定着率を高める」などの戦略を設定します。また具体策を採用する判断基準は、目指す姿に沿っているか、経営目標に沿っているか、となります。
5. KPIの設定
戦略の達成状況を測るための重要業績企業KPI(Key Performane Indicator)を設定します。たとえば、「年間のリピート顧客数」や「離職率」など、具体的かつ測定可能な指標を設定します。このKPIの設定は、経営目標に沿っているか、にて判断します。
6. 戦術を策定する
経営目標・戦略・KPIが決まったら、具体的な戦術を考えます。この段階では、社員から意見を集めることも有効です。たとえば「年間のリピート顧客数」に対しては、「サービスを標準化する、アンケートで満足度を収集する、社員研修を月1回する」などを挙げます。ここでのポイントは、3つ以内から始めることです。経営者としてあまりに多くを挙げたくなりますが、実行するのは社員です。
7. 計画の実行とモニタリング
策定した計画を実行し、その進行状況を定期的にモニタリングします。つまりPDCAサイクルです。計画を実行(Do)し、その結果を検証(Check)、問題点や改善点を明らかにし(Act)、その結果を次の計画(Plan)に反映する。このサイクルを繰り返すことで、組織は継続的に改善し、目標達成に向けた進歩を図ります。また経営計画の全体像については、1年に1度、定期的に見直します。その際も本記事の流れで、目指す形からゼロベースで策定します。前年対比○%といったやり方では、茹でガエル、硬直型組織となってしまいます。
8. 社員への浸透
経営計画や戦略を有効に機能させるためには、全ての社員がその内容を理解し、実行することが不可欠です。ここで重要なのは、具体的な施策です。例えば、定期的な全体会議で経営計画の内容を共有する、物事を判断する際に経営計画を見るようにする、部門ごとに戦略の実行状況を報告させる、一人一人の業務目標を経営計画と連動させるなどの方法が有効です。
おわりに
いかがでしょうか。イメージできないものは、形にできません。経営者の頭の中にある、「こうありたい」という目指す姿(ビジョン・ミッション)を言葉と数値で具体化し、社員と一丸になって徹底的に実行しましょう!
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