描いた絵が異国でタトゥーになった話
ある日突然、私のもとに届いた知らない人からの英語メール。
書き出しはこうだった。
第一印象では「ああ、これはよくある、相手をおだてて調子に乗せ、最終的にはだましてお金を奪い取る系の詐欺メールかな」と思いました。
しかし続きを読むと、どうも少し様子が違う。
え? タトゥー? 何、どういうこと?
想像していなかったアプローチに対して、不覚にも興味をそそられてしまった私。そこからメールのやりとりがはじまりました。
メールの差出人はルーマニア在住の男性、名前はラズヴァン。Webデベロッパーの仕事をしているとのこと。
なんでもネットでこの絵の画像を見かけて、作者である私に辿り着いてくれたらしいのです。
で、この雰囲気の絵をタトゥーにしたい。腕に彫りたいというのです。
彫るの? 腕に? 私の絵を? 本気で?
動物モチーフはいいとしても、タトゥーって、何かもっとこう、強くてかっこいい感じじゃなくていいの? 大丈夫? ゆるすぎない?
頭の中が?でいっぱい。半信半疑ではありましたが、ちゃんとお金も払うからと言うので、作業をはじめることにしました。
はじめに提出したラフデザインです。
これでいいのか?まだ疑っていた私にラズヴァンはこうコメントします。
どうやらとーーーーーーっても気に入ってくれたみたいで。よかった。
その後、完成したデザインがこちらです。
めっっっっっちゃ褒めてくれる。ラズヴァンいいやつだな。ありがとう。
データを渡して、報酬を受取り、お仕事は無事に完了しました。
それからしばらく経って、ラズヴァンから写真が送られてきました。
うおおラズヴァン!本当に彫ってるね!嘘じゃなかったんだね!
(疑っててごめん)
思っていたよりもかなり良い、意外にありかもこのデザイン。と我ながら思ってしまいました。怖くない、周りを威圧しない優しいタトゥー。おかげで新しい扉が開けたかもしれない。
ラズヴァンもすごく気に入ってくれていて、それを見た私も嬉しくなって。出来ることならハグするためだけにルーマニアに行きたいくらいでした。
体に絵を彫るということは、つまり一生を共にするということです。もしかしてそれは絵を描く者にとって最高の喜びのひとつかもしれませんね。
これまでイラストレーターとしていろいろな依頼を受けてきましたが、唯一無二の嬉しいお仕事となりました。ありがとうラズヴァン。
めでたしめでたし。
…と、締めくくりたいところなのですが、みなさん。
先ほどのメールの文章で何か気になるところはありませんでしたか?
”最初の部分”
そうなんです。じつはこれで終わりではありませんでした。今回彫ったのはラズヴァンが思う理想の完成像の8分の1程度。
最終的にはなんと腕1本まるごと、全部絵で埋めたいとのこと。
ということで追加の制作依頼がきまして、今もまだこのデザインは進行中なのです。
上の画像のカラーの動物が彫り終えた部分。太陽が肘の位置に、正面(左側)を陸の動物、背面(右側)を海の動物で埋め尽くしたいそうです。
まいったよ、すごい男だラズヴァン。そんな彼の最新の写真がこちら。
また進捗を報告してくれるそうなので、引き続きこちらnoteでも共有していけたらと思います。気長に待ってくださる方がいらっしゃれば、ぜひフォローお願いします。
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