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コーチング Note【責任のバイアス】

事は十中八九まで自らこれを行い、残り一、二を他に譲りて功をなさむべし(坂本龍馬)

あるニュースを見ながら感じたことがあって、このことをさっとまとめておきたいと。それは、あるプロジェクトを上手にPRし、脚光を浴び、その立役者として寵児のように扱われていた人の卒業ニュース。
 
ただ、実際には、最初の一、二以降は、現場の人に丸投げしていたような状態だったろうし、当人も自身の名声をあげる利己的な活動を優先。プロジェクト自体は丸投げされた名もなき人々によって継続されていたのでは・と。
 
そして、そのプロジェクトを支えようと無理をしてメンタルを病んだ人も目にしたし、こうした報道で目立つ瞬間以外は開業閉店状態だったような実態も長らく見え隠れしていた。
 
利己的な目的を果たした寵児さんのキャリアアップに対する成果は大きかっただろう・・が、まあなんか複雑な心情になりますよね。
 
前記の坂本龍馬の言葉とは真逆で、テイカーにギヴァーが消耗させられた典型例なのかもしれない(あくまでも個人的心情と見解です)ですな。

☆キャリアピーク?

アダム・グラントは上記リンクのギブ&テイクで、ジョナス・ソークのストーリーを引用している。三千人以上の死者と二万人以上の小児麻痺を引き起こしたポリオウィルスに対するワクチン開発に関して、ソークは記者会見を行い自分一人の手柄として公表した。ワクチン製造に重要な役割を果たした3人のノーベル賞受賞者の貢献を認めず、多大な成果をあげた6人の同僚に対してもその功績を認めなかったわけだ。

「責任のバイアス」の有名な実験で、夫婦が互いの貢献度をあげていくと、自分の貢献は11個思いつくが、相手の貢献は8個しか思いつかないという結果がある。ソークに起こっていたのは、まさにこの顕著なバイアスだ。自己を過大評価し、他者を過小評価するの典型であった・と同著では触れられている。

こうしたテイカー気質の人は「名声(ステータス)に無関心なふりをしながら、でしゃばるタイミングだけは抜群にうまい」という特徴がある。

助教授や助手の論文を名前書き換えちゃうような教授だけでなく、対外的には「仲間のお陰」「みんなのお陰」と言いつつも、実際の内部ではそれに見合う対価報酬どころか、感謝の言葉すらないようなリーダーは少なくないだろう。こういう人に限って、部下の表彰や仲間の受賞、評価を得た成果物の公表に対してはリーダーとしてしゃしゃりでて、あたかも自分の成果であるかのように装ったりする。だから、段々と協力しようとか一緒に仕事をしようという人が離れ、いなくなっていく。

先のソークも他者の貢献を搾取したこの瞬間がキャリアピークだった。ノーベル賞どころか、アメリカの科学アカデミーに選ばれることもなかったのだから。そして誰も彼を手伝おうとしなくなり、最後まで仲間の貢献を認めることなくこの世を去った。

☆応援できる人物をリーダー(中心)にする重要性

現在の組織心理学でもリーダーと部下の関係は、たった一度の利己的行為によってあっという間に崩壊してしまうと言われている。この時にリーダーが修復を試みたいのであれば「謝る(逆では赦す)」か「相談する」の二択しかない。また、その謝るにしても①素早く②言い訳しない③下から④相手の尊重⑤変化の約束といった条件は欠かせない。

ソークのように最後まで自己正当化し、謝らない(他責)という悪いループを離れる為には、本当の意味での貢献できるリーダーやチーム、組織としての関係性を見据えること。そのつながりを積み重ねることは不可欠だ。

よく「仕組み」を説く人が多いが、どんな仕組みも悪意のあるたった一人のテイカーによって崩壊してしまうことは繰り返されてきた。この点から重要なリーダーへの基準と考え方としては、

パイ(価値)を増やしてわかちあう行動が出来るかどうか

失敗したときこそ責任を背負うかどうか

という2つのモノサシで測るのが良いだろう。

*勝ち戦には100人もの将軍が名乗り出るが、負け戦は一人で責任を負うのみだ。(J・F・ケネディ)

つまるところ、我々がチームなり、プロジェクトなりでリーダーを選ぼうとするなら、その基準は個人的な「能力」「技術」の高さであることはむしろリスクだ。能力や技術の高さを失敗の回避、自己正当化に対して使ってしまえば、その結末はいうまでもないだろう。

なので、それとは違う軸。責任を引き受け、他者の人生にちょっといいことを起こすことを喜びに出来る人々。そんな人を選ぶ基準を持つことで、チームや人のつながり、関わりはぐっと豊かになっていく。

そのつながりの連鎖と波及こそが、私達の人生、社会をより良い方向へと加速させていくだろう。




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