より面白く観るために *ネタバレ注意
宮崎駿監督「君たちはどう生きるのか」
2度見てきました。
この映画を見て「とても難しい」と思った方は多いかもしれません。
実際、とても難しい。
しかしそれはこの映画を楽しむためのポイントに気づいていないからではないでしょうか。
ということで私がどのような視点を持って「君たちはどう生きるのか」を観たのかについてお話していきます。
①キャラクターたちの心情を想像する
「君たちはどう生きるのか」が難しい、と言われている理由の一つ、特に前半は言葉による説明がほぼないことがあります。
最近のドラマでは、悲しそうにしているヒロインがいたら、「悲しい」と言葉で表現させることを当たり前に行ないます。
「君たちはどう生きるのか」は言葉による表現をせずに、表情、セリフの間、背景の音楽で心情を表現しています。
つまり観ている側はキャラクターたちが、何を思っているのか、を想像しないと訳が分からなくなります。
それを想像せずに分かりやすく表現してくれるのを待っていたら、あっという間に映画は終わってしまうでしょう。
前半は主人公マヒトはほとんど喋らないですし、ナツコは綺麗な日本語を話しています。
けどマヒトは現状への不満と過去への執着があり、ナツコは愛情と不安、罪悪感を抱えていることがちょっとした口元の変化や、ふと見せる表情で表現しています。
キャラクターたちの感情を想像できないと
「何でナツコは寝ているマヒトの顔をじっと見たんだろう?」
とよく分からないまま話が進んでいきます。
ここに注目するとキャラクターたちの抱える複雑な心情が一気に見えてきます。
②マヒトの変化と4人のキーパーソン
「君たちはどう生きるのか」では重要なキャラクターが存在します。
マヒト
ナツコ
アオサギ
キミコ
ヒミ
この5人です。
当然、主人公のマヒトがこのストーリーの中心です。
では残りの4人の役割とはなんなのか。
ナツコはマヒトを大きく成長させる存在
アオサギは導き手であり、悪友
キミコは導き手であり、師匠
ヒミは導き手であり、背中を押す存在
実はヒロイン不在の物語。
この4人がどのようにマヒトを導き、どのような変化をもたらすのか、ここに注目すると一層面白くなるでしょう。
マヒトの言動の変化に注目ですね。
③ 物語を視点を変えて見る
この物語はただ流れるままに見ると訳がわからなくなるかもしれません。
現実と虚構が入り混じり、時間が歪曲し、空間も飛ぶので、シーンごとの繋がりが断絶していると感じることも多いでしょう。
流れる物語をただ観るということは“観客の視点”しかない状態で、それでは足りないのです。
なんせ題名で「君たちはどう生きるのか」という問いを私たちに投げかけているのですから、観客ではなく当事者でいてほしいという願いがあるのかもしれません。
では他にどんな視点を持つといいのか。
それは
・大叔父の視点
・宮崎駿監督の視点
の二つです。
「君たちはどう生きるのか」におけるマヒトの物語は大叔父の意図が始まりと言ってもいいでしょう。
大叔父の発言の理由、どんな思いを抱えているのか、これは物語の後半で分かります。
そこから逆算して物語の前半の意味を考えると意味のよくわからなかったシーンに納得感が得られるでしょう。
そして宮崎駿監督の視点。
つまりこの物語を通して私たちに何を投げかけているのか、ということです。
この物語を一行でもっとも簡潔に語るのなら
「主人公マヒトの成長物語」と言えるでしょう。
正確に表現するとガッツリネタバレになるのでこれぐらいの表現でご勘弁を。
つまり
「マヒトはこんな悩みを抱えていたけれど、このように成長し、乗り越えて、こう生きていく決意をしたよ。君たちはどうなんだい?」
ということかなと。
このマヒトの物語があってからの「君たちはどう生きるのか」という題名にある問いに繋がるのです。
シーンが飛んで繋がっていないように観客側が感じるのは些細なことなのかもしれません。
重要なのはマヒトをいかに成長させるのかということ。
そこから何かを感じ取って欲しい、その感じ取ったものが「私はどう生きようか」という問いであって欲しい。
そんな願いがあるのかもしれません。
まとめ
①キャラクターたちの心情を想像する
②マヒトの変化と4人のキーパーソン
③ 物語を視点を変えて見る
この3つを踏まえた上で「君たちはどう生きるのか」を観ると得られるものが大きく変わるかと思います。
ぜひ映画館で楽しんで頂けたらと思います。