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論理的思考力は筋トレだ(後編)

前半では論理的思考とは何か、また人はどのようなプロセスを経て思考力のようなスキルを身につけるのかということを書きました。そして、思考力の類は一度学んだだけで習得てきるようなものではなく、繰り返し使うことで使えるようになるものだといういことをお伝えしました。

しかし多くの場合、この「繰り返し使う」ことが難しい場合が多いのです。
特に企業においては、社員が論理的思考ができるようになることで、組織としての業務効率を上げたり、コミュニケーションを円滑にしたり、ビジネス上の成果を上げたりしたいわけですが、育成担当者の思惑とは裏腹に、現場での論理的思考の活用は思うように進まない状況がよくみられます。

なぜ業務に戻ると論理的思考を使わなくなってしまうのか

多くの企業にありがちな最大の理由は、職場自体が論理的思考を使う環境となっていないことです。

論理的思考を使う環境になっていない職場においては、論理的に物事を考えられているかをフィードバックしてくれる周囲の人がいないことで、論理的に考える頻度が担保されない状態に陥っていることが多いです。

例えば、あなたが研修で論理的思考を学んだとします。あなたがストイックに「論理的思考力を高めるぞ!」と意気込み、継続して自主トレーニングをする覚悟がない限り、使いこなせるようになる前に、それまでの思考と同じパターンに戻ってしまうことが多いのが現実でしょう。それは、多くの場合、論理的思考を指導してくれたり、適切なフィードバックをしてくれるような周囲の人や上司がいないことが要因です。

さらにタチが悪いパターンもあります。仮にあなたが論理的思考を使ってみようとしても、周囲がそれを使うことを阻害する作用が働いてしまうパターンです。それは、周囲や上司がいつものやり方を推奨し、論理的に考えるといったことを阻害してしまう場合です。

確かに、これまでと違った頭の使い方をしようとするわけですから、最初はうまくいかないこともあるでしょう。例えば議事録を構造的に書いてみようとチャレンジをしようとした時に、「そんな面倒なことを考えなくていいから、今まで通りさっさとやってくれ」と一言上司が言ってしまったらどうでしょう。メンバーは研修で学んだ論理的思考を使った新しい考え方を、わざわざ使おうという気持ちにはならないでしょう。

論理的思考力に限らないですが、何か新しいことをやろうとしたときに、それを阻むような現状維持勢力が現れるものです。

論理的思考を職場に根付かせるためにはいったいどうしたら良いのか?

方向性としては、組織として論理的思考力を使うことが当たり前となり、使うことに一人一人が旨味(メリット)を感じられるような環境を作ることであると考えます。

そのための方法として1つ挙げるとすれば、論理的に思考することを誘因する言葉を共通言語化してしまうことだと考えます。

具体的には、「それはつまり、So Whatするとどういう意味?」「根拠は何?」「MECE(抜け漏れダブりなく列挙できているの?)」といった言葉が、会話の中でなされる状態を作るということです。

言葉は文化です。その言葉が飛び交っている組織では、その言葉が組織の共通言語となります。ゲーム理論的な考え方になりますが、双方向のコミュニケーションにおいては、組織内で多くの人がその言葉を使っている時、自分もその言葉を使うことが合理的な状態となります。(反対に、誰もその言葉をつかっていない時には、自分だけがその言葉を使うことはメリットがないので、非合理的である状態となります)

大事なことは、論理的思考力を使うことを、一部の人だけではなく組織的に推進していくことです。その為の起爆剤として、特に上司にあたる人こそ積極的に使うようにしていくことです。

組織を変えていくということは、簡単にできることではないですが、組織に論理的思考の言葉を根付かせるきっかけを、組織の上層部から作っていくということは一つ有効な打ち手なのではないかと思います。

それではまた。


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