【第三十六場C…はだかになれた王様1】
詩人さんとキリット大統領は、三日間、モンゼン・ラミ太郎の霊を丁重に弔うと、五人のお弟子さんたちと一緒に旅に出ました。もちろん、目指すはドウダ・マイタカ王の住むお城です。
お城に近づくにつれ、大きくて立派な建物が、見えはじめました。弟子たちは、バラバラに分かれて、こんな噂を流します。
「天から紡いだ糸で、はたおり、仕立てまで。空気より軽くて、温かい服を作る職人がいるらしいぞ!」
その噂は当然、マイタカ王の耳にも届きました。
「ほお、それはすごいな。すぐに呼んでまいれ」
すると、隣にいた妃(きさき)のドウダ・マシテヤルカーナが言いました。
「お待ちを、陛下。どうせ、ペテン師ですわ。バカと身分違いの者には見えない服とか、言うんじゃないですか?」
「ああ、それな? 『はだかの王様』なら、わしも王子の時に読んでおる。まあ、よいではないか。それならそれで面白い」
「それもそうですね。それじゃ、もしインチキだったら、こらしめてやりましょう。そんなやつらは、磔(はりつけ)の刑にして見せしめにするのがいいですわ」
マシテヤールカーナ女王は、とても美しい顔をしているわりに、きついことを言います。元々、マシテヤールカーナ女王は、イマワノクニの人間ではありません。海を渡って大陸の半島にあるシコタンターラ王国のダレダ王の娘でした。シコタンターラ国はイマワノクニと親交を深めるために、娘を嫁がせたのです。
当時の王様だったドウダ・ツタカナ王は、二人の結婚に猛反対しました。しかし、ダレダ・マシテヤールカーナ姫を見るや否やマイタカ王子は、その美しさに一目惚れしてしまったのです。さらに、おみやげの宝石やきらびやかなドレスに目のくらんだ女王のマサレタイーノが、結婚に賛成しました。仕方なくツタカナ王は、二人の結婚を認めたのでした。
ダレダ・マシテヤールカーナと結婚して、一年後に父親のドウダ・ツタカナ王が亡くなり、翌年にマシテヤルカーナ女王が亡くなりました。あまりに急な展開に、国民は王子が結婚していてよかったと胸をなでおろしました。
マシテヤールカーナ女王の評判は、うなぎのぼりです。女王が新たに引き寄せたシコタンターラ王国の手下たちは、優秀なエンジニアが多く、たくさんの技術をこの国にもたらしました。