第1 あらまし
令和5年10月24日、株式会社任天堂(以下「任天堂」)から、「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン(以下、「ガイドライン」)」が発表されました。ガイドラインについて、以下で解説していきます。
なお、公式見解ではないことをご了承ください。また、ガイドライン外の法令、例えば著作権法等の詳細な説明はしません。
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第2 ガイドラインが適用される場面
1 コミュニティ大会の意義
(1)前述のとおり、ガイドラインは、「任天堂のゲームのコミュニティ大会を開催する」場合に適用されます。コミュニティ大会ではない大会には適用されません(コミュニティ大会ではない大会については、後述の「コミュニティ大会ではない大会を開きたい場合」をご覧ください。)。
「コミュニティ大会」とは、「任天堂のゲームのコミュニティ大会(ガイドライン冒頭)」であって、次の要件を充足するものとなります(ガイドラインA1)。
(2)上記の要件のうち、①は容易に判断できます。ゲームの公式サイト(の下の方)に「©nintendo」と書いてあれば、該当します。
要件②及び③について、主催者及び参加者が個人(参加者にあっては非営利のチームも可。)であることを求めています。「個人」ではない場合とは、法人又は法人ではないが団体ではあることを指します。法人は、法令に則って設立されていれば法人です。法人ではない団体は、役職がある、経理が行われている等、組織立っているものをいいます。大雑把に、代表者が死んでも別の代表者が現れ組織が続く場合、「団体」と言って差し支えないです。
要件④について、「営利を目的」とは、一般的に、自ら又は第三者に財産上の利益を得させる目的を言います。この要件については、(a)出場料及び観戦料の金額及び目的、(b)スポンサー等の有無から考えます(A3)。
要件⑤について、上限の人数はガイドラインのとおりですが、下限については明示されていませんが、著作権法における「私的利用(同法30条柱書)」の範囲内であれば問題ありません。
また、「大会」とは、
を意味するので、勝敗・順位を競う場合に限られず、広く複数人が集まって遊ぶ場合(所謂単なるオフ会)も含まれます。
2 コミュニティ大会ではない大会を開きたい場合
コミュニティ大会ではない大会を開きたい場合、前述のどの要件を充足しないかによって、開催の可否及び手続きが異なります(①は割愛)。
②及び③ 主催者又は参加者が個人ではない
主催者又は参加者が個人ではない場合、任天堂の許諾を得る必要があります(ガイドラインA8、14)。参加者が個人ではない場合の許諾については、許諾申請の時点で開催の可否が検討されていることから、参加者の側でその可否を検討、申請する必要はありません。
許諾申請のフォームに大会のルールを記載する欄があるため、おそらくここに参加者が団体であると記載されることが予定されており、その諾否について任天堂が審査することとなります。
許諾申請の対象となるのは、法人または団体が主催者となる大会であって、個人はコミュニティ大会の形式でしか大会を開催できません。
なお、学校のサークルは、団体ですが許諾申請が不要な場合があります(ガイドラインQ13。)。他方で町内会は許諾申請が必要です。
④ 営利の大会
営利の大会は開催できません(ガイドラインQ3)。
⑤ オンラインで300人超え、又はオフラインで200人超えの出場者
複数の日付にまたいで開催することができます(ガイドラインA12)。また、主催者が法人又は団体である場合、許諾を得た上でこれらの人数を超えて開催することができます(後述)。
3 今後のコミュニティ大会の運営の仕方
(1)ガイドラインに沿ってコミュニティ大会を運営する場合、以下の要件のもと、参加費や観戦料を徴収することはできます(ガイドラインA4)。
(2)つまり、主催者は、かなりのボランティア精神を持ってコミュニティ大会を開催することが求められています。ガイドラインに沿った上で、可能な限り主催者に負担の少ないコミュニティ大会を開催することが模索されます。例えば以下のような対応が考えられます。
①会場設営費用は、主催者を除いた出場者及び観戦者で負担する。端数は、主催者が負担する(出場料及び観戦料が会場設営費を超えた場合、返金の手間が生じるが、参加者の人数で割り切れるとは限らず、誰に返金するかのトラブルが生じます。例えば優勝者に返金するといったような対応は、実質的には賞金又は参加費による景品に該当し、ガイドラインに抵触します。)。
②paypay等の簡易な決済方法により徴収する。
③大会の様子を配信し、収益化する。
主催者が個人ではない場合、許諾を得ることにより上述の出場費及び観戦料を超えた額を徴収することもできます(後述)。
4 景品
一定の条件のもと、コミュニティ大会で景品を出すことも可能です(ガイドラインQ17等)。
オンラインの大会において、自作のイラストを景品とすることは可能です。よくある旧Twitter現Xのアイコンを書く等のものは問題ありません。ゲーム内アイテム等を景品とすることも可能です。
なお、景品の費用は、出場料や観戦料から購入することはできません。主催者が自腹を切る分には問題ありません。
第3 許諾申請
1 許諾申請の対象となる大会
主催者又は参加者が法人又は団体である場合、許諾申請をして許諾番号を付与されることによって、大会を開催することができます。参加者が個人ではない場合については、許諾申請をする際に、大会のルールを記載する項目があるため、この項目において参加者が個人ではないことが記載されることにより任天堂の審査を経ることとななるため、参加者側から許諾申請をする必要はありません。
2 ガイドラインの適用
(1)法人又は団体が許諾番号を得た上で大会を開催する場合であっても、ガイドラインを遵守する必要があります。つまり、主催者が法人又は団体であるだけで、原則として、開催される大会は上述のコミュニティ大会の要件である、①、④及び⑤を充足する必要があります。
(2)もっとも、ガイドラインに従わないと許諾番号を得ることができないわけではないようです。会計の報告と出場料及び観戦料の用途は会場設営費のみであることに変わりはありません。
(3)また、特定の法人又は団体は、許諾を得ることはできません。
(4)窓口が異なる法人又は団体もあります。
第4 雑感
以上でガイドラインについて解説しましたが、規定としては分かりづらく、情報が整理されていないという印象を受けました。ガイドラインの要であるコミュニティ大会の条件がガイドライン冒頭及びQ&Aに散らばっている、Q&Aの質問部分が冗長である(例えばQ12)等、規定としては改善すべき点が多く見られます。ガイドラインを策定したことは画期的ですが、もっとわかりやすくすることもできたと思います。
解説の「その2」では、ガイドラインとポケモンシリーズの関係について個別に解説します。
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