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【Behind The Scenes】showme「Marmalade」のMVを監督した話。

○はじめに
今回は2021年2月公開のshowme「Marmalade」のMVについて、制作の背景などを書いていきます。もう一年以上前の作品になりますが、初めての試みを沢山盛り込んだものでした。
「リファレンスとなったCM」「セリフ入りの脚本が必要な理由」「編集でよりシネマティックに」「ワンカットの難しさ」
このあたりを掘り下げて書いていきます。
音楽が好きな人、映像が好きな人が、ミュージックビデオというものにもう一歩踏み込んでもらえるように、なるべくわかりやすい言葉で書いていきます。
それでは、一つよしなに。

〇リファレンスとなったCM
制作にあたり参照したのが、ダイハツ「ムーヴ キャンバス」という車のCM。これをはじめてテレビで見た時からめちゃくちゃ好きでした。CM曲である藤原さくらさんの歌う"君は天然色"がとても素敵です。
このCMのポイントの一つは、引きの絵(遠景)で構図が美しいこと。人の配置、車の配置、背景の情報量、バランスが絶妙です。
もう一つは、ストーリー性があること。それもたった15秒の間に、限られた情報で視聴者に想像させるのです。セリフが聞こえるわけではなく、登場人物の表情もあまり見えない。なのにここに映る一枚の映像は、僕らがよく知る生活や思い出の情景なので、グッと入り込むことができる。
これをなんとかMVという形にできないかと考えました。

スクリーンショット 2022-04-25 11.06.56

こちらが初期段階の資料。他の設定案もありつつ、ロケ場所としてConnecter Tokyoの店頭をお借りすることが決まり、現在のかたちになりました。

〇セリフ入りの脚本が必要な理由
このCMのようなスタイルで、およそ4分半の曲のMVを作るには「どうやったら最後まで見られるか」という壁があります。寄り絵(アップショット)を入れてカットを割れば見やすいものは作れますが、それは今回やりたかったことではなく…。
そこで、まず「脚本」を書くことにしました。ただ設定を書き込んだものではなく、セリフまで書き込んだものです。
しかし!MVの音声は、基本的に楽曲だけが流れているものです。つまり撮影時に現場でセリフを喋っても、その音声はMVには使われない。ではなぜ脚本にセリフを書き込んだのか?
一つは、演者(今回はshowmeの二人)はセリフがあることでよりリアリティを持って設定に入ることができ、結果的に映像のクオリティを上げてくれるためです。
もう一つは、視聴者にストーリーをより想像させやすくするためです。画面内の情報がより豊かになります。

スクリーンショット 2022-04-25 11.15.46

こちらの脚本(のようなもの)をもとに、当日現場でリハをしながら少しずつ内容は変わっていきました。歌詞とMVのストーリーが重なりすぎないように心がけました。

○編集でよりシネマティックに
撮影後の段階で、よりイメージに近づけるための編集を施しています。
縦横比16:9のサイズで撮影したものに、上下に黒い帯を入れてシネスコサイズに見せています。
カラーグレーディングはハイライトをオレンジ系、シャドウをブルー系、全体をややグリーン系に寄せています。この頃の自分の好みですね。
画像の上部が撮影したままの元素材、下部が編集後のものです。

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〇ワンカットの難しさ
ドラマや映画を見てもわかるように、「視聴者に見せたいモノや人に、カメラを向ける」というのが基本的な作り方です。その時セリフを話している人をアップで映す、というような。しかし今回は引きの絵(遠景)のワンカットで作りたいので、この作り方が通用しません。カメラは固定です。
しかも楽曲4分半分のストーリーはあります。「1サビの終わりでこのセリフを言って…間奏のタイミングでこのシーンに入って…」ということまで決めてしまってるわけです。
特にギターソロのタイミング!(02:42~)今までパラレルに進んでいた楽曲とMV内のストーリーが、ここだけ重なり合うようにしました。
このため撮影の難易度が爆上がりし、己の首を絞めています…!
撮影当日は数時間のリハで細かい部分を調整して、では本番となってからもかなり時間がかかりました。撮影開始時は昼ぐらいでしたが、御覧の通り、ちょっと日が暮れてきてます。
ここまでワンカットワンカットと言い続けましたが、楽曲の終わりにおまけ的にもう1シーン入れてしまいました。そう、厳密に言えばワンカットではない。
いやでも!(言い訳)この最後のシーンで、MVのストーリーを補足できて、4分半我慢して(!)見てくれた皆さんにはカタルシスを感じられるようになったのではないかと。そしてこの楽曲のCDジャケットとのつながりも映っています。探してみてください。

〇おわりに
以前書いたBTSでも「準備が大事!」という話はしてましたが、今回は特にそれを感じた制作でした。
一般的なMVの作り方とは異なりますが、舞台演劇を作るようなこのスタイルは、僕はとても好きでした。余談ですが、セットではなくリアルな街やお店を使った演劇公演って楽しそうですね。やってみたい。
とはいえ、視聴者の皆さんの力を借りる部分が多いスタイルだとも重々承知してます。(想像力とか我慢とか…)もっとうまくやる方法を探っていきたいです。
ではこのままもう一回通してご覧ください!

最後まで読んでいただきありがとうございました。
公開している他の作品もぜひぜひご覧ください。

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