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模倣者の再解釈「コピーキャット」

こんにちは、ナカムラです。今回は「コピーキャット」という書籍を紹介したいと思います。

「真の先駆者は誰も覚えていない。」

このショッキングな帯が目を引きますよね。Google(検索)、Facebook(SNS)、Dropbox(ストレージ)、メルカリ(フリマアプリ)など、それぞれのカテゴリを代表するプロダクトですが、実はすべて後発プロダクトだったりします。

イノベーションの必要性が叫ばれて久しいですが、本書は「イミテーション(模倣)」に焦点を当てて、模倣とは卑しい真似事ではなく、イノベーションと併用すべき戦略であると説きます。

今回は、模倣というものへの考え方をアップデートできるような紹介をしていきたいと思います。

1)模倣(イミテーション)という戦略

模倣という言葉からは、ネガティブな響きを感じる方が多いのではないでしょうか?

模倣に対するネガティブなイメージには、いくつかの理由があると思います。

直感的な部分だと、倫理的な問題がありますよね。先駆者が基礎研究や市場開拓に投下したコストや背負ってきたリスクを差し置いて、いわば他人の労力にタダ乗りしているという見方ができます。

また、経済成長の観点では同質化を促進させてしまいます。似たようなプロダクトを市場に出回らせて、価格競争を誘引することにつながります。

ただこれも結局は見方の問題で、

・他社の成功や失敗から学ぶ
・重複投資を防ぎ、同一製品の再開発をしない
・良いものがより安く普及する

と捉えることもできます。

先ほど例に出した「メルカリ」も、フリマアプリを最初に生み出した先駆者ではありませんが、とても優れたユーザー体験を提供しています。(日本では「フリル(現ラクマ)」の方が1年早かった)

そんな模倣は、ビジネスにおける一つの戦略と考えられており、大きく3つのパターンに区別されます。

ファストセカンド戦略…できるだけ素早く二番手に躍り出る
カム・フロム・ビハインド戦略…差別化要素を伴って追撃する
パイオニアンインポーター戦略…別の領域(国・産業)に参入する

メルカリはまさにファストセカンド戦略に当てはまりますね。アメリカでサウスウエスト航空がはじめた格安航空のモデルをヨーロッパに移植したライアンエアは、パイオニアンインポーター戦略に該当します。

2)成功させるための十ヵ条

いずれの戦略においても、成功させるための共通のポイントがあり、本書では「イモベーションの十ヵ条」として紹介されています。(イモベーション=Innovation+Imitation)

第1条:車輪の再開発はするな
第2条:模倣を熱狂に変えろ
第3条:類人猿に倣え
第4条:すぐに頭に浮かぶものを集めるな
第5条:物事の文脈を読み取れ
第6条:ピースを正しく合わせろ
第7条:タイミングがすべてではないと心得よ
第8条:より価値の高い新製品を作れ
第9条:攻撃して防御せよ
第10条:Innovateして、Imitateして、Immovateせよ

言い換えると、

第1条:すでにあるものをわざわざ発明し直すな
第2条:模倣のマイナスイメージを払拭し、正当に評価せよ
第3条:模倣能力を組織力として獲得しろ
第4条:成功事例だけでなく失敗事例からも学べ
第5条:模倣対象の成功要因とその環境との関連性を把握しろ
第6条:オリジナルとコピーが持つ要素を一つ一つ比較し対応づけよ
第7条:「いつ」だけでなく「どこの/誰の/何を/どのように模倣するか」を考えよ
第8条:模倣のリスクとコストを鑑みて戦えるプロダクトを作れ
第9条:自分たちが模倣されるリスクに備えよ
第10条:イノベーションと模倣を融合させて競争優位を生み出せ

となります。

この中でも、特にこれは見落としがちだなと思ったものが第2条と第6条です。

冒頭に触れたとおり、大前提として模倣=ネガティブなイメージがあり、「イノベーションを起こそうぜ!」と「模倣しようぜ!」では熱狂度が圧倒的に違いますし、なんなら罪悪感すら感じうるでしょう。

その状態ではチームパフォーマンスが上がらず、模倣戦略が成功しないと言われています。なのでここの意識改革はかなり重要ですね。

もう一つ、本書で何度も登場する対応づけという概念について。コピーするにしても、目に見える表面的な部分を真似するだけではコストだけ掛かって失敗に終わるから、何が成功に寄与している要素なのかを丁寧に分解して一つずつ整理し、自社の場合どう適応できるかを考えましょう、ということです。

なのですが、ここに落とし穴があるんですね。人間は複雑な問題を極端に単純化して、情報の負荷を減らそうとしがちで、上記の対応づけも相関分析とかで明らかにしようとするのですが、それでは本質的な因果関係は見えてこないのです。

これはシステムシンキングという概念を知っていると分かりやすいと思います。対比概念として分析的思考というものがあるので、比較して整理してみましょう。

分析的思考
問題を静的に捉え、細部の複雑さを見ていく
=原因-結果が直線的につながっていると捉える(ロジックツリー)
システムシンキング
問題を動的に捉え、変化の過程の複雑さを見ていく
=原因-結果の相互関連を考えて循環していると捉える(ループ図)

一つ例をとって説明します。あなたが病院を経営しているとします。病院への来院者数を伸ばしたいと思い、相関のある要素として「病院の評判」を発見します。画像1

「よし、口コミが広がるようにしよう!」ということで、施策を打ち、はじめの内は来院者数も増えていったのですが、徐々に「病院の評判」が下がっていき、来院者数も減っていってしまいました。さて、何が起こっているのでしょうか。

ここで登場するのがシステムシンキングです。システムシンキングの場合、こうした変化の過程をループ図で整理し、因果関係を明らかにしていきます。今回でいうと、「来院者数の増加」が「待ち時間の増加」につながり、結果的に「患者の満足度」を下げてしまっていたわけです。

画像2

これはかなり単純なケースですが、より複雑に要素が絡み合う問題においては、このシステムシンキングが役に立つと思うので、気になる方は下記リンクから詳細をチェックしてみて下さい。

少し話が逸れましたが、模倣といえども「海賊版を作って売りさばく」という話ではないので、成功させるためには入念な準備と慎重な判断が求められる、ということです。

3)最後に

約8年前の書籍なので、事例やビジネス構造の捉え方がやや古く感じる部分もありましたが、2020年代に置き換えても通用する考え方だったと思いますし、模倣のスピードは一層加速しているとすら思います。

模倣者と聞くと、いやらしい笑みを浮かべたずる賢い存在のように思いますが、メルカリやSpotifyやAmazonPrimeに対してそんな印象は持っていないと思います。彼らはより良いものを提供すべくプロダクトを磨き続けていますし、「楽して儲けてやろう」などという視座ではないと分かっているからですよね。

この本を読んで、模倣に対するイメージが少しでも変わり、前向きに捉えることができれば、新たなチャンスとの出会いが生まれるのではないでしょうか。

以上、模倣者の再解釈「コピーキャット」でした。最後までお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m

ナカムラ

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