第34回日刊スポーツ映画大賞
まず日刊スポーツ映画大賞とは、日刊スポーツ新聞社が主催する映画賞で、石原プロモーションが運営に全面協力し、作品賞とは別に最も支持を得たスケールの大きな作品に贈られる石原裕次郎賞があります。
選者は日刊スポーツの選考委員と著名人により毎年流動的になっているようです。
映画ファンとしてはキネ旬よりは大衆的だけど、日本アカデミー賞よりはまともな選考をする賞という印象ですかね。
それでは今年のノミネートについて書いていきます。
◎作品賞
『ドライブ・マイ・カー』
『空白』
『すばらしき世界』
『孤狼の血 LEVEL2』
『護られなかった者たちへ』
ここはまあ順当と言えるでしょうか。ただ、『護られなかった者たちへ』が入ったのは意外です。これは僕は観ていないので何とも言えないんですが、Filmarksでは3.9とかなり高い評価となっているので良作なのでしょうか。あまり話題に上ることが少なかった作品ではありますね。
どれも男性主人公の映画なのが気になります。女性主人公で評価の高い『茜色に焼かれる』『あのこは貴族』『由宇子の天秤』が入ってもよかったように思います。
◎監督賞
西川美和『すばらしき世界』
濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』
吉田恵輔『空白』『BLUE ブルー』
瀬々敬久『護られなかった者たちへ』『明日の食卓』
石井裕也『茜色に焼かれる』『アジアの天使』
西川美和、濱口竜介、石井裕也は納得ですし、この後のどの映画賞でも候補入りする三人ではないでしょうか。
吉田恵輔はどちらもそこまでヒットはしませんでしたが、評価の高い二作を手がけていると言うことで意外でしたが納得できます。吉田恵輔監督はこれからまだ伸びる監督だと思うので入ったのは嬉しいですね。
瀬々敬久は最近ハイペースで中規模のメジャー作品を手がけていますが、果たして『騙し絵の牙』吉田大八や『あのこは貴族』岨手由貴子、『あの頃』『街の上で』今泉力哉を押しのけてノミネートされるべきだったでしょうか?
『護られなかった者たちへ』は観ていませんが、『明日の食卓』は僕ははっきり酷いと思いました。クリシェにまみれた設定や不自然なセリフだらけでメッセージはともかく出来としてはよくないと思います。『糸』や『楽園』もそうですが瀬々監督はなんか冗長なんですよね。
『騙し絵の牙』はあまり話題にならなかったこと、『あのこは貴族』は新人作品であること、『あの頃』『街の上で』は低予算映画であることから無難で映画業界から気に入られている瀬々監督が入ったということでしょうか。
◎主演女優賞
尾野真千子『茜色に焼かれる』
瀧内公美『由宇子の天秤』
有村架純『花束みたいな恋をした』
吉永小百合『いのちの停車場』
天海祐希『老後の資金がありません!』
まずいいですか?また吉永小百合かよ!もういいよ!
尾野真千子、有村架純、瀧内公美に関しては異論ありません。ただ、今後瀧内公美は新人監督作品の主演と言うことで無視される可能性もあると思いますが、映画ファンからしてみればこの三人は納得じゃないでしょうか。
ただ、吉永小百合と天海祐希は妥当でしょうか?『あのこは貴族』の門脇麦と水原希子を押しのけてまでノミネートされるほどの演技なのでしょうか?
吉永小百合はおそらく映画業界での人気、天海祐希はコメディ演技が評価されての候補入りなんだとは思います。どちらも世間からの好感度も高いでしょうしね。でも個人的には納得いきませんね。
◎主演男優賞
西島秀俊『ドライブ・マイ・カー』『きのう何食べた?』
沢田研二『キネマの神様』
松坂桃李『孤狼の血 LEVEL2』
佐藤健『るろうに剣心 最終章 The Final / The Beginning』『護られなかった者たちへ』
岡田准一『燃えよ剣』『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
あのー、やっぱり複数作品でまとめてノミネートされるのはズルいよって思っちゃうんですがどうです?こうなっちゃうとそれは総合評価になってしまって、多くの出演作品がある人が有利じゃないですか。例えば英国アカデミー賞では数年前にマーゴット・ロビーが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と『スキャンダル』で助演女優賞にノミネートされましたが、それは別々でしたよ。欧米に倣えというわけではないですが、やはりその映画でどういう演技をしているかで評価すべきだと思います。
まあそれは一旦置いとくとして、役所広司が外れているのはどう考えてもおかしいでしょう。作品賞と監督賞でノミネートされているのに肝心の主演男優賞でノミネートされないってどういうことなんですかね。
西島秀俊、岡田准一、松坂桃李は順当だと言えるでしょう。沢田研二は作品自体の評価もあまり良くなく、興行的にもあまり奮わなかったですが、志村けんの代役という難しい立場を乗り切ったと評価されたのでしょうか。僕は作品を観ていないので何とも言えませんが。功労賞的な側面もあるのかもしれませんね。
佐藤健はまあ人気のある俳優ですし、唯一実写化として成功しているといえるるろうに剣心での演技が評価されるのは分かります。そして若い才能を評価していこうというのは分かります。
ただやはり役所広司の自然にそこにいるだけなのに醸し出される危うい狂気を表現した深みのある演技や、『空白』の古田新太の鬼気迫る演技と比べてどうでしょう?
◎助演女優賞
三浦透子『ドライブ・マイ・カー』
永野芽郁『キネマの神様』
片山友希『茜色に焼かれる』など
寺島しのぶ『キネマの神様』『ヤクザと家族 The Family』など
清原果耶『護られなかった者たちへ』など
だから「など」ってなんだよ!単体の映画の演技で評価しようよ!
しつこいですね、すみません。
ここはまあ妥当なところでしょうか。三浦透子と片山友希の演技がちゃんと評価されているのは嬉しいですね。どちらもそこまで知名度が高いわけではないですが、今後の映画賞でも評価されてほしいなと思います。そして寺島しのぶは『空白』でもすばらしい演技をしてらっしゃいましたし、納得です。
永野芽郁、清原果耶は若い才能として入っているのは良い傾向ではないでしょうか。『キネマの神様』『護られなかった者たちへ』を観ていないので彼女たちの演技への評価ができませんが、どちらも才能ある役者さんだと思いますのである程度納得です。
私が先日の記事で書いた『空白』の片岡礼子さんは出演時間が極端に短いこと、『哀愁しんでれら』のCOCOは作品自体への賛否が分かれることから厳しいことは予想していました。
◎助演男優賞
舘ひろし『ヤクザと家族 The Family』
鈴木亮平『孤狼の血 LEVEL2』
仲野太賀『すばらしき世界』など
岡田将生『ドライブ・マイ・カー』など
山田裕貴『燃えよ剣』『東京リベンジャーズ』など
ここは山田裕貴だけがちょっと謎ですが、それを除けば予想の範囲内です。確かに『ヤクザと家族』の舘ひろしはカッコよかったですよね。
山田裕貴は『燃えよ剣』でも確かに重要な役ではありましたが、印象的な演技があったかと言われると微妙です。それならす主演とのWノミネートになりますが『空白』の松坂桃李を入れた方が良かった気がします。また若手俳優枠としても『ヤクザと家族』の磯村勇斗の方が重要でいい演技をしていたように思えてしまいます。
先日の記事では『茜色に焼かれる』の和田庵を予想しましたが、やはり知名度不足は否めないですね。仕方ないです。
◎石原裕次郎賞
『キネマの神様』
『キャラクター』
『燃えよ剣』
『ヤクザと家族 The Family』
『るろうに剣心 最終章 The Final / The Beginning』
これについてはノーコメントでいいですか?ダメ?
圧倒的に話題になった大作といえるのは間違いなく『るろうに剣心』でしょうね。『燃えよ剣』も時代物ということ、『キネマの神様』『ヤクザと家族』はスケールの大きさという点でここに入るのは妥当なところでしょう。『キャラクター』はどうなんですかね。意外と面白いという声も聞くのですがどうしてもFukaseが演技しているのを観たくなくて・・・
ということで日スポ映画大賞の個人的雑感でした。良くも悪くも無難、という印象ですね。『あのこは貴族』と『騙し絵の牙』が完全無視されたのは意外でした。今泉監督の作品群や『由宇子の天秤』は規模の小ささから無視されるだろうなとは思っていました。
また逆に『キネマの神様』がここまで入ってくるとは予想外でした。山田洋次ブランドが未だに健在と言うことがよく分かりますね。
もう吉永小百合にはうんざりです。あのお年であの美しさというのは分かりますが、肝心の演技がダメなのにノミネートされるのってやっぱりおかしいですよ。あと役所広司の候補漏れは不可解すぎますね。
一方で監督賞の吉田恵輔監督や、助演女優賞での三浦透子と片山友希など入って嬉しい面々もありました。
この賞自体を否定したいわけではないということは最後に付け加えておきます。
まあこの後の報知映画賞、毎日映画コンクールなども要チェックですね。見守っていきたいと思います。