見出し画像

現役限定!愛してやまない映画監督たち②

塩田明彦

ベスト3
①さよならくちびる
②黄泉がえり
③どこまでもいこう

最初に塩田明彦監督の作品を観たのは『さよならくちびる』でした。小松菜奈さんと成田凌さんが好きというだけであまり期待せずに行ったのですが、想像以上に心を抉られた作品になりました。主題歌である「さよならくちびる」の歌詞で「溢れそうな言葉を慌ててタバコに火を点け塞いだ」というのがあるのですが、まさにその通り、観終わってその後ボーッとしながらカフェで泣きながらタバコを吸いました。

これはすごい監督かもしれないということで、ヒット作である『黄泉がえり』を観ました。柴咲コウの歌「月のしずく」が有名ですね。もちろん商業的な感動作ではあるのですが、邦画独特の病理のようなものはなく、抑えた演出と巧みな構成の優れた作品でした。

また、塩田監督は『映画術 その演出はなぜ心をつかむのか』という著書がすごく有名で、映画ファンのみならず映画を作る人の必読書ともなっているような本です。とても面白い本なのでぜひ読んでみてくださいね。

キネマ旬報には『どこまでもいこう』『カナリア』『さよならくちびる』が入選を果たしていますが、全てが高評価というわけではありません。特に最新作の『麻紀のいる世界』ははっきり酷いと思いました。故にまだ観ていない作品もあるのですが、そのうちに全制覇したいなと思っています。

中島哲也

ベスト3
①来る
②告白
③嫌われ松子の一生

中島哲也監督はCMディレクター出身で、ポップな世界観とそこに潜む悪意を描くことを得意とする監督です。2004年の『下妻物語』はその年のキネマ旬報ベストテンで3位に選ばれるのみならず、2000年代トップ10でも15位に選ばれるなど高い評価を受けました。そんな『下妻物語』ですが、僕はまだ未見なのですぐにでも観たいと思います。

そしてそのイメージのまま撮ったのが『嫌われ松子の一生』で、和製『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とも言うべきポップだけどかなり話はエグいミュージカルです。本作で松子を演じた中谷美紀は国内の女優賞を総ナメにしました。

一方、湊かなえのベストセラー小説を原作とした2010年の『告白』は、その作風が反転しました。この前後でやはり変わったと思います。それまでのポップな世界観で悪意や人間の醜さを描く作風から、悪意あるポップ表現で人間の醜さを描く作風になったと思います。国内の賞はもちろん、その年のアカデミー賞日本代表作品に選出され、ショートリスト(最終選考)まで残るという快挙を成し遂げました。

そして中島哲也作品で一番好きなのが『来る』です。中島哲也作品初のホラーなのですが、『呪怨』『リング』などのJホラーというよりもっと景気が良くておどろおどろしい描写が中島哲也監督の資質にぴったり合い、全編楽しくて怖くて最高な作品です。役者陣もみんな良いのですが、特に柴田理恵が素晴らしい!こんな柴田理恵の使い方があったのかと舌を巻きました。原作も読みそちらもとても面白かったのでぜひ読んでみてください!


ギレルモ・デル・トロ

ベスト3
①シェイプ・オブ・ウォーター
②クリムゾン・ピーク
③パンズ・ラビリンス

もう映画ファンには説明不要でしょう。『パンズ・ラビリンス』でメキシコの怪奇映画ながらアカデミー賞で複数部門で受賞を果たし、『シェイプ・オブ・ウォーター』では半魚人と耳の聞こえない女性のラブストーリーというジャンル感全開の物語ながら作品賞や監督賞を受賞、今最も注目される作家です。

特徴はなんといっても細部までこだわり抜いた美しい世界観の構築、奇想天外な造形でしょう。

デルトロ作品で最初に観たのは『パンズ・ラビリンス』だと思います。本作はアカデミー賞で美術賞、撮影賞、メイク&ヘアスタイリング賞を受賞しました。美しくもグロテスク、そしてワクワクしながらも哀しいストーリーテリングに夢中になりました。なにより強烈だったのは中盤登場する「ペイルマン」です。手に目玉を装着するという奇想天外な造形が気持ち悪くて最高!大好きな作品です。

そして次に好きなのは『クリムゾン・ピーク』です。フィルモグラフィー的には地味で人を選ぶ作品ではあると思いますし、欠点がないわけではないのですが、どうしようもなく大好きなんです。やはり赤い土地の上に立つ屋敷でのゴシックホラー、なおかつ幽霊の造形も素晴らしく、これぞデルトロ!と堪能できる作品です。トム・ヒドルストン、ジェシカ・チャステイン、ミア・ワシコウスカの三人が織りなすアンサンブルが最高に美しいんです。特にトムヒはまあ美しい。この作品でファンになってしまいました。

やはり最高傑作だと思っているのは『シェイプ・オブ・ウォーター』です。モンスターと人間のラブストーリーというデルトロらしさもありつつ、そこに移民や黒人、ゲイ、障碍者という弱者を重ねる手腕は流石デルトロだし、この時代に相応しい作品だと思います。悪役であるはずのマイケル・シャノンもとても哀しく、誰も安易に悪役にしないというデルトロの美学がとても好きですし誠実だとおもいます。

新作の『ナイトメア・アリー』は1947年のノワール『悪魔の往く町』のリメイクですが、今年のアカデミー賞でどうなるか注目されます。日本公開が延びてしまったのは本当に残念ですが楽しみに待ちたいと思います。

マッテオ・ガローネ

ベスト3
①五日物語 3つの王国と3人の女
②ドッグマン
③ほんとうのピノッキオ

『ゴモラ』でカンヌ映画祭審査員特別賞、『リアリティー』でカンヌ映画祭グランプリを獲得、イタリアを代表する監督の一人です。ていうか今初めて監督の写真見たんですけど意外とイケメンなんですねぇ。益々好きになっちゃった。

『ゴモラ』『ドッグマン』などリアリティー重視の作品もあれば『リアリティー』『五日物語』などファンタジックな作品もある、多彩な監督です。

最近公開された『ほんとうのピノッキオ』はファンタジー路線の作品ですが、アカデミー賞では衣装デザイン賞とメイク&ヘアスタイリング賞にノミネートされました。先に紹介したデルトロと同じくこだわり抜いた美しく残酷な世界観が素晴らしく、画面を見ているだけで幸せでした。

『ドッグマン』はかなり厳しい話で、イタリアの田舎をリアリティーたっぷりに描き出した作品です。理不尽に搾取され続ける気の弱い主人公はもう観ているだけで痛々しいですし、終盤はもう救いようがないけど湧き上がる高揚感と虚無感が止められませんでした。

そして一番好きなのは『五日物語 3つの王国と3人の女』です。3話の残酷ファンタジーのオムニバスになっているのですが、衣装や美術などが幻想的、そしてリアルさもあり非常に美しい作品です。マッテオ・ガローネがいいなと思うのは、ファンタジーにしても人間の嫌〜なところをエグく、残酷に、でも徹底して美しく描くところです。


ということで今回も4人の監督を紹介しました。読んでいただきありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?