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【作品紹介】第23回東京フィルメックス

みなさんこんばんは。
今回は東京フィルメックスのラインナップが発表されたということで作品の紹介を書いてみようと思います。

https://filmex.jp/2022/

〇コンペティション

『地中海熱[Mediterranean Fever]』(パレスチナ / マハ・ハジ監督)

カンヌ映画祭ある視点部門脚本賞

カンヌ : 『Omor Shakhsiya』(ある視点部門)
ヴェネツィア : なし
ベルリン : なし

占領下に置かれたパレスチナ人のアイデンティティの問題を背景に、二人の中年男の思いがけない友情の帰結を皮肉たっぷりに描く、マハ・ハジの長編第2作。

 パレスチナの女性監督、マハ・ハジ監督の第二作です。自身のアイデンティティをベースに膨らませた物語でしょうか。二作連続である視点に入るというだけでもかなりすごいことですよね。

『ダム[The Dam]』(レバノン / アリ・チェッリ監督)

カンヌ映画祭監督週間出品

カンヌ : なし
ヴェネツィア : なし
ベルリン : なし
その他 : 『The Disquiet』(2013 / ドバイ映画祭短編部門監督賞)

ナイル川の大規模ダムのほとりの村で、川で生まれた泥と水でレンガを作る職人の男。やがて彼が作り続ける不思議な泥の建造物が独自の生命を獲得していく。レバノン出身のビジュアル・アーティスト、アリ・チェリの長編デビュー作は魅惑的な寓話である。

 物語がかなり独特ですね。建物が生命を持つ…?どういうことなのでしょうか。ビジュアル・アーティストということで美しいビジュアルが期待できそうです。

『ソウルに帰る[Return to Soul]』(フランス / ダヴィ・シュー監督)

カンヌ映画祭ある視点部門

カンヌ : 『Diamond Island』(2016 / 批評家週間SACD賞)
ヴェネツィア : なし
ベルリン : 『Le sommeil d'or』(2012 / フォーラム部門出品)
その他 : 『Le sommeil d'or』(2012 / 台湾国際ドキュメンタリー映画祭アジア・ビジョン部門スペシャル・メンション)

韓国で生まれ、フランスで養父母に育てられた25歳のフレディが初めて韓国に降り立ち、実の両親を探し始める。エレガントな撮影と編集で、瞬間を生きるフレディの存在そのものが力強く迫りくる作品。

 監督は実際にカンボジア系フランス人であるようで、自身のルーツとなるアジアとフランスを題材にした作品であるようです。カンヌでの評判もなかなかよかったようで楽しみです。

『自叙伝[Autobiography]』(インドネシア / マウバル・ムバラク監督)

ヴェネツィア映画祭オリゾンティ部門国際映画批評家連盟賞

その他 : 『The Malediction』(2016 / シンガポール映画祭東アジア短編部門スペシャル・メンション)

青年Rakibは地元の首長選挙に立候補を表明した家主の選挙キャンペーンを手伝うことになるが…。父親的存在からの承認を求める一人の青年を通じ、暴力と欺瞞に満ちたインドネシアの近過去を寓話的に描く。

 これはヴェネツィアで受賞したときから気になっていました。今年のフィルメックスで一番楽しみです。ムバラク監督はいくつかの短編で存在感を発揮してきましたが、今作が長編デビュー作のようです。宣材写真もすごくいいし話も面白そう…

『アーノルドは模範生[Arnold is a Model Student]』(タイ / ソラヨス・プラパパン監督)

ロカルノ映画祭新進監督コンペティション

カンヌ : なし
ヴェネツィア : 『Death of the Sound Man』(2017 / オリゾンティ部門[短編])『Pid pokati mai』(2021 / オリゾンティ部門[短編])
ベルリン : なし
その他 : 『Dossier of the Dossier』(2019 / ロカルノ映画祭短編コンペティション)『Digital Funeral: Beta Version』(2020 / ロカルノ映画祭短編コンペティション)

数学オリンピックでメダルを獲得したアーノルド。だがある日、彼は大学入試で学生のカンニングを助ける地下ビジネスに加担してしまう。ソラヨス・プラパパンの長編デビュー作。

 タイは最近存在感が出てきましたよね。『バッド・ジーニアス』に『ハッピー・オールド・イヤー』、『プアン 友だちと呼ばせて』…
 もちろんアピチャッポンという存在がいますが、アート映画以外でも頭角を現してきたなという印象です。
 本作はマスクをしていてコロナという状況下にあるのでしょう。物語は『バッド・ジーニアス』そのままな気がしますがどうなんでしょう。

『石門[Stonewalling]』(日本 / ホワン・ジー&大塚竜治監督)

ヴェネチア映画祭ヴェニス・デイズ部門

カンヌ : なし
ヴェネツィア
ベルリン : 『Ben Niao』(2017 / ジェネレーション部門作品賞)
その他 : 『Trace』(2013 / 香港映画祭ドキュメンタリー部門)

妊娠に気づいたものの、今子供を持つことも中絶も望まなかった20歳のリンは、診療所で死産の医療訴訟に巻き込まれている両親を助けるために、自分の赤ん坊を提供しようとする。

 大塚監督は『再生の朝に ある裁判官の選択』(2009)で撮影監督を務め、ホアン・ジー監督の『卵と石』(2012)で撮影、編集を担当、本作が監督としては初めてのようです。
 ストーンウォールというとどうしてもアメリカで起きた「ストーンウォール事件」を連想してしまうのですが関係あるのでしょうか。
 宣材写真はどれもやはり撮影が素晴らしく、ビジュアル的な完成度は間違いないあたりではないでしょうか。

『同じ下着を着るふたりの女[The Apartment with Two Women]』(韓国 / キム・セイム監督)

釜山映画祭ニューカレンツ賞
ベルリン映画祭パノラマ部門

その他 : 本作(2021 / ウディネ・ファーイースト映画祭出品)

中年シングルマザーの母親と20代の娘の、暴力と依存の悪循環に陥った親子関係を描く。2021年10月に初上映された釜山映画祭でニューカレンツ賞を受賞し、その後はベルリンを始めとする多くの国際映画祭で紹介されてきた新鋭キム・セインの驚くべき長編デビュー作。

 タイトルが面白いですね。どういうことなのか気になります。釜山とベルリンで上映されたということはかなりの力量なのは間違いないですね。それにしても韓国は新しい才能が次々と…素晴らしいです。

『Next Sohee』(韓国 / チョン・ジュリ監督)

カンヌ映画祭批評家週間

カンヌ : 『私の少女』(2014 / ある視点部門)
ヴェネツィア : なし
ベルリン : なし
その他 : 『私の少女』(2014 / 東京フィルメックスコンペティション)

プロバイダーにサービスを提供するコールセンターの職に就いたソヒは、仕事に意欲的に取り組んでいたが……。韓国で実際に起きた10代の若者の自殺事件から着想を得たというチョン・ジュリ監督の待望の長編第2作。

 ペ・ドゥナ主演の『私の少女』がデビュー作ながら世界的に評価されたチョン・ジュリ監督新作です。
 『私の少女』に引き続き厳しい社会問題をテーマにした女性の物語となりそうです。ある程度覚悟が必要かもしれませんね。引き続きペ・ドゥナが主演です。

『遠いところ[A Far Shore]』(日本 / 工藤将亮監督)

カルロヴィヴァリ映画祭コンペティション

沖縄の地で、貧困に晒され、暴力と隣り合わせで暮らす若い母親が、依存と自立との狭間で葛藤しながらも、自分の足で歩いていこうとする様を描く。

 工藤監督は森田芳光、行定勲などに師事し、MVやドラマなどを手掛けてきました。初監督作品である『アイムクレイジー』(2017)がプチョン国際ファンタスティック映画祭に出品され、最優秀アジア映画賞を受賞します。そして三作目の本作ではカルロヴィヴァリ映画祭に選出されました。

〇特別招待作品

『ノー・ベアーズ[No Bears]』(イラン / ジャファル・パナヒ監督)

ヴェネツィア映画祭コンペティション特別審査員賞

カンヌ : 『白い風船』(1995 / 監督週間ゴールデンカメラ)『Talaye Sorkh』(2003 / ある視点部門審査員賞)『ある女優の不在』(2018 / コンペティション部門脚本賞)
ヴェネツィア : 『チャドルと生きる』(2000年コンペ・金獅子賞)
ベルリン : 『オフサイド・ガールズ』(2006年コンペ・審査員グランプリ)『Closed Curtain』(2013年コンペ・脚本賞)『人生タクシー』(2015年コンペ・金熊賞)

映画監督ジャファル・パナヒの目を通して並行して語られる2つの愛と抵抗の物語。ここ十数年、芸術的自由に関する自己言及的作品を作り続けてきたパナヒの最新作。

 三大映画祭で受賞、ベルリンとヴェネツィアでは最高賞を受賞しているイランの巨匠ジャファル・パナヒ監督新作です。低調だったヴェネツィア映画祭コンペ作品でもかなり好評で、最高賞を予想する人もいました。
 イラン当局に不当に収監されており、作品を上映することだけでも大いに意義があると思います。そしてやはりパナヒ作品は面白いんですよね。そこがすごいと思います。
 MUBIで『Hidden』という短編ドキュメンタリーを配信中なので予習がてら観てみたいと思います。

『すべては大丈夫[Everything Will be OK]』(カンボジア / リティ・パン)

ベルリン映画祭コンペティション芸術貢献賞

カンヌ : 『Neak sre』(1994 / コンペティション)『Un soir après la guerre』(1998 / ある視点部門)『S21, la machine de mort khmère rouge』(2003 / アウト・オブ・コンペティション)『消えた画 クメール・ルージュの真実』(2013 / ある視点部門作品賞)『Exil』(2016 / 特別上映)
ヴェネツィア : 『Les tombeaux sans noms』(2018 / ヴェニス・デイズ部門)
ベルリン : 『Irradiés』(2020 / コンペティション部門ドキュメンタリー映画賞)
その他 : 『最初に父が殺された』(2017 / 英国アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)『消えた画 クメール・ルージュの真実』(2013 / アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)

カリスマ的なイノシシの将軍に率いられた動物たちが人間たちを奴隷として支配するディストピアの世界。カンボジアの大虐殺から、近年は一般的な専制政治や虐殺をテーマにしつつあるリティ・パンの最新作。

 リティ・パン監督はカンボジアを代表する人物でありながら日本で紹介された作品は少ないですよね。カンボジアの負の歴史を人形を使って表現するドキュメンタリックでアーティスティックな作家です。
 アカデミー賞にノミネートされた『消えた画』とは異なり本作はフィクション、寓話的な作品のようです。やはり人形を使った手法は健在なようでどのような語り口になっているのか楽しみですね。

『ホテル[The Hotel]』(香港 / ワン・シャオシュアイ監督)

トロント映画祭現代世界映画部門

カンヌ : 『Biandan, guniang』(1999 / ある視点部門)『Er di』(2003 / ある視点部門)『シャンハイ・ドリームズ』(2005 / コンペティション部門審査員賞)『重慶ブルース』(2010 / コンペティション部門)
ヴェネツィア : 『Chuang ru zhe』(2014 / コンペティション部門)
ベルリン : 『北京の自転車』(2001 / コンペティション部門審査員グランプリ)『我らが愛にゆれる時』(2008 / コンペティション部門脚本賞)『在りし日の歌』(2019 / コンペティション部門)

COVID-19の影響でチェンマイのホテルに足止めされた宿泊客たちの間に次第に巻き起こる波紋。『在りし日の歌』のワン・シャオシュアイ監督が実際に2020年の旧正月を過ごしたホテルを舞台に描く人間模様。

 ワン・シャオシュアイ監督は中国第六世代を代表する人物ですが、『在りし日の歌』しか鑑賞できていません。『在りし日の歌』はその年のベストテンに入れたくらい素晴らしい作品だったので期待しています。
 夫婦の何十年を叙事詩的に描いた前作とは異なりかなりミニマルな作品となっていそうです。

『ナナ[Before, Now and Then]』(インドネシア / カミラ・アンディニ監督)

ベルリン映画祭コンペティション部門最優秀助演賞

カンヌ : なし
ヴェネツィア : なし
ベルリン : 『鏡は噓をつかない』(2012 / ジェネレーション部門)『見えるもの、見えざるもの』(2018 / ジェネレーション部門国際審査員グランプリ)
その他
: 『鏡は嘘をつかない』(2012 / 東京国際映画祭アジア映画部門スペシャル・メンション)『見えるもの、見えざるもの』(2017 / 東京フィルメックスコンペティション部門グランプリ)『ユニ』(2021 / 東京フィルメックスコンペティション部門)

1960年代のインドネシアで紛争に巻き込まれ、親族や家族を失ったナナが、思いがけない友情を通して自分自身を解放し、自由な人生を再び希求し始める姿を描くカミラ・アンディニの長編第4作。

 インドネシアの女性監督カミラ・アンディニ作品です。『見えるもの、見えざるもの』と『ユニ』を観ていますが、極めてアート色の強いインディペンデント作品を得意とする監督です。前作『ユニ』はアカデミー賞代表作に選ばれました(ノミネートはされず)が、今回も選ばれるかと思いきや『Ngeri-Ngeri Sedap』というよくわからない作品に決まったようです。

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