【作品紹介】第23回東京フィルメックス
みなさんこんばんは。
今回は東京フィルメックスのラインナップが発表されたということで作品の紹介を書いてみようと思います。
〇コンペティション
『地中海熱[Mediterranean Fever]』(パレスチナ / マハ・ハジ監督)
カンヌ映画祭ある視点部門脚本賞
カンヌ : 『Omor Shakhsiya』(ある視点部門)
ヴェネツィア : なし
ベルリン : なし
パレスチナの女性監督、マハ・ハジ監督の第二作です。自身のアイデンティティをベースに膨らませた物語でしょうか。二作連続である視点に入るというだけでもかなりすごいことですよね。
『ダム[The Dam]』(レバノン / アリ・チェッリ監督)
カンヌ映画祭監督週間出品
カンヌ : なし
ヴェネツィア : なし
ベルリン : なし
その他 : 『The Disquiet』(2013 / ドバイ映画祭短編部門監督賞)
物語がかなり独特ですね。建物が生命を持つ…?どういうことなのでしょうか。ビジュアル・アーティストということで美しいビジュアルが期待できそうです。
『ソウルに帰る[Return to Soul]』(フランス / ダヴィ・シュー監督)
カンヌ映画祭ある視点部門
カンヌ : 『Diamond Island』(2016 / 批評家週間SACD賞)
ヴェネツィア : なし
ベルリン : 『Le sommeil d'or』(2012 / フォーラム部門出品)
その他 : 『Le sommeil d'or』(2012 / 台湾国際ドキュメンタリー映画祭アジア・ビジョン部門スペシャル・メンション)
監督は実際にカンボジア系フランス人であるようで、自身のルーツとなるアジアとフランスを題材にした作品であるようです。カンヌでの評判もなかなかよかったようで楽しみです。
『自叙伝[Autobiography]』(インドネシア / マウバル・ムバラク監督)
ヴェネツィア映画祭オリゾンティ部門国際映画批評家連盟賞
その他 : 『The Malediction』(2016 / シンガポール映画祭東アジア短編部門スペシャル・メンション)
これはヴェネツィアで受賞したときから気になっていました。今年のフィルメックスで一番楽しみです。ムバラク監督はいくつかの短編で存在感を発揮してきましたが、今作が長編デビュー作のようです。宣材写真もすごくいいし話も面白そう…
『アーノルドは模範生[Arnold is a Model Student]』(タイ / ソラヨス・プラパパン監督)
ロカルノ映画祭新進監督コンペティション
カンヌ : なし
ヴェネツィア : 『Death of the Sound Man』(2017 / オリゾンティ部門[短編])『Pid pokati mai』(2021 / オリゾンティ部門[短編])
ベルリン : なし
その他 : 『Dossier of the Dossier』(2019 / ロカルノ映画祭短編コンペティション)『Digital Funeral: Beta Version』(2020 / ロカルノ映画祭短編コンペティション)
タイは最近存在感が出てきましたよね。『バッド・ジーニアス』に『ハッピー・オールド・イヤー』、『プアン 友だちと呼ばせて』…
もちろんアピチャッポンという存在がいますが、アート映画以外でも頭角を現してきたなという印象です。
本作はマスクをしていてコロナという状況下にあるのでしょう。物語は『バッド・ジーニアス』そのままな気がしますがどうなんでしょう。
『石門[Stonewalling]』(日本 / ホワン・ジー&大塚竜治監督)
ヴェネチア映画祭ヴェニス・デイズ部門
カンヌ : なし
ヴェネツィア :
ベルリン : 『Ben Niao』(2017 / ジェネレーション部門作品賞)
その他 : 『Trace』(2013 / 香港映画祭ドキュメンタリー部門)
大塚監督は『再生の朝に ある裁判官の選択』(2009)で撮影監督を務め、ホアン・ジー監督の『卵と石』(2012)で撮影、編集を担当、本作が監督としては初めてのようです。
ストーンウォールというとどうしてもアメリカで起きた「ストーンウォール事件」を連想してしまうのですが関係あるのでしょうか。
宣材写真はどれもやはり撮影が素晴らしく、ビジュアル的な完成度は間違いないあたりではないでしょうか。
『同じ下着を着るふたりの女[The Apartment with Two Women]』(韓国 / キム・セイム監督)
釜山映画祭ニューカレンツ賞
ベルリン映画祭パノラマ部門
その他 : 本作(2021 / ウディネ・ファーイースト映画祭出品)
タイトルが面白いですね。どういうことなのか気になります。釜山とベルリンで上映されたということはかなりの力量なのは間違いないですね。それにしても韓国は新しい才能が次々と…素晴らしいです。
『Next Sohee』(韓国 / チョン・ジュリ監督)
カンヌ映画祭批評家週間
カンヌ : 『私の少女』(2014 / ある視点部門)
ヴェネツィア : なし
ベルリン : なし
その他 : 『私の少女』(2014 / 東京フィルメックスコンペティション)
ペ・ドゥナ主演の『私の少女』がデビュー作ながら世界的に評価されたチョン・ジュリ監督新作です。
『私の少女』に引き続き厳しい社会問題をテーマにした女性の物語となりそうです。ある程度覚悟が必要かもしれませんね。引き続きペ・ドゥナが主演です。
『遠いところ[A Far Shore]』(日本 / 工藤将亮監督)
カルロヴィヴァリ映画祭コンペティション
工藤監督は森田芳光、行定勲などに師事し、MVやドラマなどを手掛けてきました。初監督作品である『アイムクレイジー』(2017)がプチョン国際ファンタスティック映画祭に出品され、最優秀アジア映画賞を受賞します。そして三作目の本作ではカルロヴィヴァリ映画祭に選出されました。
〇特別招待作品
『ノー・ベアーズ[No Bears]』(イラン / ジャファル・パナヒ監督)
ヴェネツィア映画祭コンペティション特別審査員賞
カンヌ : 『白い風船』(1995 / 監督週間ゴールデンカメラ)『Talaye Sorkh』(2003 / ある視点部門審査員賞)『ある女優の不在』(2018 / コンペティション部門脚本賞)
ヴェネツィア : 『チャドルと生きる』(2000年コンペ・金獅子賞)
ベルリン : 『オフサイド・ガールズ』(2006年コンペ・審査員グランプリ)『Closed Curtain』(2013年コンペ・脚本賞)『人生タクシー』(2015年コンペ・金熊賞)
三大映画祭で受賞、ベルリンとヴェネツィアでは最高賞を受賞しているイランの巨匠ジャファル・パナヒ監督新作です。低調だったヴェネツィア映画祭コンペ作品でもかなり好評で、最高賞を予想する人もいました。
イラン当局に不当に収監されており、作品を上映することだけでも大いに意義があると思います。そしてやはりパナヒ作品は面白いんですよね。そこがすごいと思います。
MUBIで『Hidden』という短編ドキュメンタリーを配信中なので予習がてら観てみたいと思います。
『すべては大丈夫[Everything Will be OK]』(カンボジア / リティ・パン)
ベルリン映画祭コンペティション芸術貢献賞
カンヌ : 『Neak sre』(1994 / コンペティション)『Un soir après la guerre』(1998 / ある視点部門)『S21, la machine de mort khmère rouge』(2003 / アウト・オブ・コンペティション)『消えた画 クメール・ルージュの真実』(2013 / ある視点部門作品賞)『Exil』(2016 / 特別上映)
ヴェネツィア : 『Les tombeaux sans noms』(2018 / ヴェニス・デイズ部門)
ベルリン : 『Irradiés』(2020 / コンペティション部門ドキュメンタリー映画賞)
その他 : 『最初に父が殺された』(2017 / 英国アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)『消えた画 クメール・ルージュの真実』(2013 / アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)
リティ・パン監督はカンボジアを代表する人物でありながら日本で紹介された作品は少ないですよね。カンボジアの負の歴史を人形を使って表現するドキュメンタリックでアーティスティックな作家です。
アカデミー賞にノミネートされた『消えた画』とは異なり本作はフィクション、寓話的な作品のようです。やはり人形を使った手法は健在なようでどのような語り口になっているのか楽しみですね。
『ホテル[The Hotel]』(香港 / ワン・シャオシュアイ監督)
トロント映画祭現代世界映画部門
カンヌ : 『Biandan, guniang』(1999 / ある視点部門)『Er di』(2003 / ある視点部門)『シャンハイ・ドリームズ』(2005 / コンペティション部門審査員賞)『重慶ブルース』(2010 / コンペティション部門)
ヴェネツィア : 『Chuang ru zhe』(2014 / コンペティション部門)
ベルリン : 『北京の自転車』(2001 / コンペティション部門審査員グランプリ)『我らが愛にゆれる時』(2008 / コンペティション部門脚本賞)『在りし日の歌』(2019 / コンペティション部門)
ワン・シャオシュアイ監督は中国第六世代を代表する人物ですが、『在りし日の歌』しか鑑賞できていません。『在りし日の歌』はその年のベストテンに入れたくらい素晴らしい作品だったので期待しています。
夫婦の何十年を叙事詩的に描いた前作とは異なりかなりミニマルな作品となっていそうです。
『ナナ[Before, Now and Then]』(インドネシア / カミラ・アンディニ監督)
ベルリン映画祭コンペティション部門最優秀助演賞
カンヌ : なし
ヴェネツィア : なし
ベルリン : 『鏡は噓をつかない』(2012 / ジェネレーション部門)『見えるもの、見えざるもの』(2018 / ジェネレーション部門国際審査員グランプリ)
その他 : 『鏡は嘘をつかない』(2012 / 東京国際映画祭アジア映画部門スペシャル・メンション)『見えるもの、見えざるもの』(2017 / 東京フィルメックスコンペティション部門グランプリ)『ユニ』(2021 / 東京フィルメックスコンペティション部門)
インドネシアの女性監督カミラ・アンディニ作品です。『見えるもの、見えざるもの』と『ユニ』を観ていますが、極めてアート色の強いインディペンデント作品を得意とする監督です。前作『ユニ』はアカデミー賞代表作に選ばれました(ノミネートはされず)が、今回も選ばれるかと思いきや『Ngeri-Ngeri Sedap』というよくわからない作品に決まったようです。
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