2024 World Triathlon Long Distance Championships Townsville
【スタート前】
8月25日6時頃に会場入りし、バイクのセッティング。まだ暗い中で、タイヤの空気、補給食、ドリンクをセットし、バイクシューズ、ヘルメットなどを並べながら、近くの選手と健闘を誓い合ったり、写真を撮ったりしました。
7時前に、ゴールに持っていってもらう荷物を預けて、ビーチのスタート位置に向かいました。7時に第1ウェーブはスタートします。MCが盛り上げる中、心地よい緊張感も高まりつつスタートを待ちます。いつも通り、スイムだけは上位に!と言う気持ちで最前列に位置取りしました。
そして、ついに7時25分、エイジグループ50-54はスタートしました。
今回のレースは4月に出場した宮古島トライアスロンとほぼ同じ距離なので、その時のタイムを目標にしました。スイムは同じ距離なので60分。バイクはちょっと距離が短いけどコースがフラットなのを考慮して平均スピード30km/hで、3時間45分。ランも距離が少し短いので平均ペース5:30/kmで、2時間45分。全体で7時間30分が目標です。
【スイム】
スイムは1.5kmを2周回のコース。日本のレースでは経験したことの無い波のあるコースでした。もともと水泳をやっていたのと、海で泳ぐのも得意な私にとっては好都合なコンディションでした。
最初の500mは、ウオーミングアップのつもりで、大きなフォームを意識して、泳ぎました。思ったより感覚が良かったので、少しだけペースを上げながら1週回目を終えました。ラクだった理由の一つは、人がばらけていたことです。宮古島は1000人以上が一斉にスタートするので、最初は特に混雑をかき分けて泳がなければならず、コースもペースも乱れがちですが、今回のタウンズビルは100人程度のウエーブスターで、しかも、前後のウエーブと5分離れていたため、ほぼぶつかること無く泳げたのでラクでした。海で波や流れのあるコースでは、最短コースを泳ぐのは非常に難しいのですが、後で確認したら、コースも最短で泳げていました。
1週回目を終えるといったん浜に上がってブイを回る時、応援の友人に「全体10位くらい!日本人1位!いけー!」と言われて、調子いい感じがウソではなかったと分かって、気分良く2周回目に入りました。
2週回目になると5分前にスタートしている前のウエーブやその前のウエーブの選手に追いつき始めて、少し混雑したところもありましたが、上手くすり抜けて最後までペースを落とすことなくスイム終了。
時間は50:21でした。目標よりも10分近く早く泳げました。スイム終了時の順位は11位でした。
【T1】
スイム終了後はトランジッションエリアまでは、砂浜と芝生の道を約400m駆け上ります。心拍を整えながら、ウエットスーツを上半身だけ脱ぎつつ、バイクの場所に辿り着きました。ウエットスーツがいつもよりスムーズに脱げ、タオルで手を拭いて、ヘルメットを被り、足を拭いて靴下とシューズを履き、バイクスタートに走ります。いつもはトランジットに手間取って順位を落とすのですが、今回は初めてトランジットで順位を上げ10位で、バイクスタートしました。
【バイク】
バイクは一番の苦手種目。練習していないから当然なのですが、今回はフラットなコースなので、何とか少しでも粘って、少しでも順位を維持してランまで逃げたいと思っていました。
コースはフラットですが、最初は待ちの中を走ります。途中でサーキット場の中もあって、おもしろいコースでした。その後は海沿いの直線をひたすら走ります。日差しは強いけど湿度が低いので汗が直ぐに乾きます。景色も良いし走りやすくて本当に気持ちの良いコースでした。
宮古島の時ほどは抜かれませんでしたが、まあ、抜かれていきます。エリート選手も周回しているので、その時には猛スピードで抜かれていきます。
日本のレースだとほとんどドラフティング(前の選手の後ろを走る)違反を取ることはないのですが、海外では警告無しで直ぐに取られると聞いていたので、いつも以上に気をつけながら走りましたが、コースが広くて長いので、故意にやらない限りドラフティングにはならない点も良いコースでした。それでも、計測ポイント毎に順位は、11位、13位、14位、16位、19位、19位、22位、23位、23位、24位、25位と下がり続け、26位でバイクフィニッシュしました。予想通り抜かれたのですが、宮古島の時よりはだいぶ速く、平均速度は32.0km/h。時間が3:32:14で、目標よりも10分以上早く走れてました。
【T2】
ランへのトランジットは、バイクを置き、シューズを履き替え、ゼッケンベルトを着けて、補給食をポケットに入れて一つを手に持ち、ランスタートに向かいます。このトランジットでもいつもは順位を下げるのですが、今回は順位を二つあげて24位でランスタートしました。
【ラン】
ランのコースは、最初はバイクコースの後半と同じ海沿いの道を走ります。木が多く日陰が多いのですが、暑かった。汗がみるみる乾いて、顔もウエアも塩でざらざらになっています。2km毎にあるエイドステーションでは、水をかけ、電解質ドリンク、期待していたモルテンの補給食が無いので、糖質はコーラで補給しました。
既に脚の疲労はかなりあって、腿裏、腿表、ふくらはぎなどが痙りそうになります。微妙なその予兆を感じかけたら、少しペースを落として回復し、回復したら少しペースを上げるの繰り返しでした。だいぶペースが遅くなっていることを覚悟したのですが、最初の折り返しまでの6kmのペースが5:00/kmと、思ったよりスピードは上がっていました。それを知って結構行けそうな気がしてました。ペースがダラダラと落ちないように維持できれば、目標を大幅に超えるタイムでゴールできることを確認し、何とかペース維持して走りました。
周回は12kmのコースを2周回し、3周回目は半分くらいで折り返して6kmの合計30kmです。
周回の最後は海辺から丘の上の公園までの木製のスロープがあり、これがホントキツかった。カーブを曲がったところでスロープが始まり最後までの手すりが見えるのが、それが絶望しかけます。
「苦しいときは遠くを見ない。無心になって1歩を踏み出す。それをただ繰り返す!」「苦しいのは自分だけじゃ無い。みんな苦しい」など、念仏のようにつぶやきながら、決して止まらず脚を前に出し続けました。そして、その坂を登り切ると、応援に来てくれてた友人や、その他日本の方々から、声をかけられ元気を取り戻して、下りながら次の周回に入ります。
今回、始めて思ったのは、日の丸はよく目立つ。フェンスに付けてあったり、振ってくれてたり、帽子に付けてたりしてもらえると、よく分かる。そして、日本語の声援が有り難いし嬉しくて、エネルギーをもらえて、もう少しだけ頑張れる気になりました。
もちろん、英語での応援も嬉しいです。Nice Run Japan!とか、GANBATTE Japan!などと声をかけられると、それもまた、元気が出ます。
日の丸と自分の名前の入ったユニフォームを着て走るのはこんなに気持ちが良いのだと、レース後半の脳内麻薬効果もあって、幸福感がドンドン増加していきます。苦しさも限界に来てますが、その幸福感で走り続ける事ができます。
24位でランをスタートし、最初の計測ポイントで23位、その次に22位に上がり、しばらく22位をキープして、最終周回に入る頃に20位になりました。
なんとか2周回目を終えて、あと6kmとなると、ギリギリ寸止めで耐えてたふくらはぎや膝が、もう本当にヤバくなってきました。念仏は「神様あと30分だけ走らせてください」となります。基本的に私は無宗教なのですが、レース最終盤の脳内麻薬大放出期になると、もう、ラブアンドピース満載、沿道の皆さんも、世界中の皆さんもありがとう!全ての神様ありがとう!なので、ちょっとだけ願いを叶えてください。
最後の折り返しをして、あと3km。神様あと15分だけ走らせてください。と念仏を唱えながら、エイドで足や頭に水をかけながら走り、最後の絶望坂を登り切り、坂を下りながらビクトリーロード入り口で、友達から日の丸を渡され、応援してくれた皆さんありがとう!世界中の皆さんありがとう!最後まで走る願いを叶えてくれた神様ありがとう!と、脳内麻薬の大放出で最高に気持ちよくブルーカーペットをゴールゲートに向かって走ります。
そこで、少し冷静になり「はて?日の丸はどうやって持ってゴールすれば良いのかな?」と思いましたが、考えても分からないし、ゴール迫ってるし、何か振ったり掲げたりしながらゴールしました。ゴールゲートの電光掲示板に自分の名前も表示され、最高の瞬間でした。
【ゴール】
完走メダルとタオルを掛けてもらい、ゴール後の選手溜まりで、水を飲んだり、プロテインを飲んだり、他の選手と健闘をたたえあったりしながら、至福の時間を堪能しました。
【結果】
結果は7時間03分41秒
50-54歳クラスでは43人中19位でした。全体では458人中162位
まあ、順位は比較するものがないのでどう評価して良いかわかりませんが、欧米の人たちはめちゃくちゃ速いことを思い知り、そんな中で完走できて、真ん中よりも上にいたのだから自分としては順位も満足です。
そして何よりも、全種目で頑張り切れた感があり、スイムは11位という上位で終えられたし、苦手のバイクでも宮古島ほどは抜かれなかったし、最後の最も苦しいランで粘って、順位を上げ続けてのゴールできたことが、大満足です。
エイジグループのトライアスロンは、敵は自分のみ、他の選手はみんな同じゴールを目指す仲間だと思います。自分に負けずに完走し、満足してたらそれが最高の勲章です。
素晴らしい環境で、素晴らしい応援を受け、大満足のレースができて、本当に幸せでした。
本当のドラマ
レース結果だけでも超絶大満足なのですが、今回の大会は30年前にオーストラリアで出会った友達と、昨年の年間ランキングで3位と4位に入賞し、一緒にオーストラリアで開催されるこのワールドチャンピオンシップ大会に出場して凱旋すると言う別の話もありますが、それは別の記事で書きたいと思います。
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