闇雲ネットサーフィンと真夜中散歩
突然、なにもできなくなるときがある。そうなるとわたしはベットに逃げ込んで、時間が解決してくれるまでネットサーフィンをしていた。そうして朝日が昇り始めたころ、ようやく動けるようになって、垢まみれのからだをシャワーを洗い流し、そっと眠りにつく。
闇雲なネットサーフィンで心が安らいだことはなかった。頭のごちゃごちゃを片付ける方法、正体不明の不安や焦燥感を癒す術はインターネットのどこにもなかった。本当はわかっている。抱えてしまった物事の優先順位が付けられず頭がパンクし、逃げている案件に向き合う気力がないだけってことに。だから、気を紛らわせるためにスマホに手を伸ばしていることに。
また、動けない夜がやってきた。いつものようにネットサーフィンをしてしまう。これでは同じことの繰り返しではないか。なにか、ワクワクすることがしたいと思った。
外に出ると、金木犀の香りがした。鈴虫も鳴いている。少し肌寒い空気と、空には半月と、名前を忘れてしまった星座が輝いていた。都会に移り住んでよかったことは、真夜中でも外には人がいることだった。少し明るい商店街を通り抜け、コンビニに入り、アイスと少し高い珈琲を買い、来た道を戻る。ランドリー前で煙草を吸っている人や居酒屋の中から漏れる笑い声にひとりではないという安心感を抱き、珈琲を啜りながら歩く。
アイスと珈琲を用意して、映画を観よう。それがワクワクしたことだった。逃げていることはわかっている、決して根本的な解決方法ではない。けれど、闇雲ネットサーフィンよりはずっと心が安らいでいたのだった。
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