eスポーツ振興策は、クールジャパンの二の舞に……。
自民党がeスポーツの推進を提言というニュース。
記事によると、eスポーツを「スポーツ振興の一環」と位置付けて、障害者や高齢者の健康増進、身体機能回復のために活用することなどが必要と提言されたという。
僕は、短大の非常勤講師として、競技だけでなく、eスポーツを活用した社会的課題解決の可能性について講義する『ソーシャルeスポーツ』という科目を担当をしているので、歓迎すべきニュースではあるのだけど……。
かつての「クールジャパン」に似た臭さを感じる。
世界的に、eスポーツはエンタテインメント産業
1972年10月19日にアメリカのスタンフォード大学の人工知能研究所に、アメリカ各地の学生などが集まって世界初のeスポーツ大会『Intergalactic Spacewar Olympics』が行われた。
ビデオゲームやeスポーツは、元々はアメリカの大学や研究室の産物である。
それ以降、1980年代には、ギネスの世界記録のためにゲームのスコアを競う大会の運営を行うナショナル ビデオ ゲーム チームが創設するなど、ゲーム大会(eスポーツ)をビジネスチャンスと捉え、アメリカやヨーロッパで、イベント運営会社やチームなどが創設され、発展してきた。
日本でも、喫茶店を中心としたインベーダーゲームが普及して、大人がスコアを競い合う大会が盛り上がった時期もあるが、その後、任天堂のファミリーコンピュータ(ファミコン)が、子どもたちを中心に爆発的な人気を誇ることになる。
そして、ハドソンなどが「全国キャラバンファミコン大会」などが大々的に行われるなどしたが、ゲーム会社や販売店の販売促進を目的としたもので、子ども向けのイベントというイメージを日本に根付かせることになる。
一方、海外では、1990年代になるとネット通信技術の発展や、WINDOWS95の発売などにより、パソコンによるオンラインゲームの普及が進む。
当然、これらを好むユーザーは、子どもではなく、大学生を中心とした大人で、ハイスペックなパソコンと通信環境を手に入れることができる富裕層が主流となる。
世界中からゲーマーが、パソコンを持ち寄りネットワークを繋ぎ、オンラインゲームをプレイをするLANパーティは、1994年にスウェーデンで始まったとされ、現在ではESLゲーミングが運営する世界最大規模のイベントになっている。
他にも、世界各国でビデオゲーム大会・eスポーツ大会をプロデュースするイベント運営制作会社が登場することになる。
アメリカやヨーロッパを中心に1990年代後半には大規模な商業的eスポーツ(ゲーム)大会やイベントが行われ、それに付随してプロチームなども続々と登場し、エンタメ産業としてビジネスエコシステムが出来上がってくる。
現在、海外の大学では、eスポーツのイベントやチーム運営などのビジネスエコシステムの研究が進められ、それらを学べる大学も創設されている。
オリンピックにこだわる日本のeスポーツ業界
遅れること約20年、日本では2018年がeスポーツ元年とされているが、未だに「eスポーツはスポーツか?」が度々、話題にあがる。
この背景は、やはりオリンピック種目として、eスポーツの採用を睨んだ動きがあることは間違いない。
その裏には、世界的なeスポーツのビジネスエコシステムに乗り遅れた日本の業界の思惑が垣間見える。
すでに海外の企業や業界は、オリンピックにあまり関心を抱いていないように思える。
現状として、オリンピック種目として採用されるよりも、すでに独自に開催されていてブランド力があるプロリーグや世界大会の運営に、注力した方が企業としてのメリットは大きいだろう。
しかし、このエンタメとしてのeスポーツの潮流に乗り遅れた日本の業界としては、オリンピックeスポーツの種目に、日本の企業のゲームタイトルが採用され、ある種の利権獲得を目論むのは、当たり前の流れとも言える。
ちなみに2023年に行われたオリンピックeスポーツシリーズ2023の種目は、以下のとおり。
eスポーツタイトルとして有名なものとしては、射撃の『フォートナイト』だが、競技として行われたマップ(モード)を制作したのは、日本の高校生クリエイターYANOSさんで、本流であるバトルロイヤルとは別ゲームである。
あと、コナミのeBaseball:パワプロが採用されているが、他は聞いたことのないゲームタイトルばかりである。
世界的なeスポーツタイトルを持つIPホルダーが、積極的にオリンピックに関わろうする意図は感じない。
補助金・助成金投入なら、クールジャパンの二の舞に?
サウジアラビアは、700億円をかけてeスポーツの街を建築しようとしている。
他にもアメリカや、中国、カナダなどで、大規模なeスポーツスタジアムが建設されている。
世界では、eスポーツは、富裕層をターゲットとしたエンターテイメントとして、ビジネスチャンスとして捉えられている。
一方で、日本はどうだろうか?
メインストリームは、エンターテイメント産業としてのビジネスエコシステムを日本でも確立すること。
お金がきちんと流れ回る仕組みをつくる事ができたうえで、副次的に社会福祉や教育などの分野に波及するようになるのが理想だと思う。
しかし、今回の提言のニュースを見る限り、補助金や助成金の影があり、クールジャパン戦略の時のように、果たしてお金はどこに流れて、結局あれはなんだったの?
となるのではないでしょうか?
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