僕がCallaway Golfで学んだこと<Be Honest 編>
"Be Honest"
全てにおいて正直であれ
「正直であれ」とはシンプルで明快な言葉ですね。誰でも理解できる言葉ですが、実際これを実践することはかなり難しいのです。
人は1日に少なくとも数回小さな嘘をつくそうです。それは女性より男性の方が統計的には多いと言われています。
この小さな嘘とは見栄や少し不都合なことに対する答えとして使われるケースが多いのですが、その小さな嘘(正直でないもの)をつくと、それを正当化するためにさらに嘘を重ねてしまう怖さがあります。
それが雪達磨式に大きくなると、大変な事態になってしまうことは案外多いのではないでしょうか?
キャロウェイゴルフの創業者のイリー・キャロウェイ(以後イリー)はビジネスを成功させブランドを構築できることは「今まで正直に活動してきたことが評価を受け、製品や会社に対する信頼の積み重ね、日々の努力の証である」と考えていました。
だから不正直なことは信頼をいただいている消費者に対する裏切り、と言う認識でした。
一つの例ですが、ワインビジネス時代、天候が不純で葡萄の成育が悪く良いワインを作るレベルに達しない年がありました。彼はその年、ワインを作ることをやめることを社員に伝えたのです。まさに苦渋の決断です。
従業員の一人は会社の経営を考えて、せめて収穫した葡萄だけでもどこかのワイナリーに買ってもらいましょう、と提案したのですが、イリーは「この葡萄はキャロウェイの畑から取れた葡萄だ、といずれ知られることになる。そうしたら君達が苦労して築き上げた評価を一瞬で失ってしまう。それでもいいのか」と言って諭したのです。
「葡萄が不作で良いワインを作ることができない年もある。そのような時は正直に行動すべきだ」ということをワインビジネスを始める時にロバート・モンダミ(カリフォルニアワインの重鎮)から言われた言葉をイリーは躊躇なく実践したのです。
イリーが"Be Honest"に込める意味は、誰もがミスをしたり予想外のことが起こった時、一人で抱え込まず、素早く仲間とシェア(共有)して欲しいと思っていたからです。
小さなミスをリカバーしようとして一人で行動することは結果としてより悪い方向に行きがちです。取り返そうとすればするほど無理を重ねることになり気がついた時点では大きな問題となるからです。
だからイリーは「ミスはしょうがない、誰でもありうることだ。それが起こった時点でみんなと共有することで素早く解決できる。小さなミスのまま終わることができるからだ。正直に話すことで、心も軽くなる、そして何より仲間との連携も深まる」と強く社員にはことあるごとに伝えていました。
もう一つ小さなエピソードがあります。社会学習の一環として近くの小学校の生徒が工場見学に毎年来ます。一通り工場を見た後イリーは来てくれた小学生の前で簡単な挨拶をするのですが、そこで正直であることの大切さを子供達に話すのです。
話はゴルフのクラブを作っている会社なのでゴルフに関することです。
「ゴルフは審判にいない唯一のゲームでそれはなぜだか分かるかな? プレイヤーが正直にプレイすればお互いを信じられる関係を作ることができ、ゴルフも成績に関係なく楽しむことができるからです。つまり相互の信頼の上で成り立っているゲームがゴルフというものです」と話すのです。
そして、正直でない場合の
実例も話します。
ある地方で行われたトーナメントのプロアマ競技で地元でも有名な企業の社長さんがミスショットをして林の中にボールを打ち込んだのですが、この人は誰も見ていないと思ったのか、ボールをこっそり拾い上げて、打ちやすいところに運び、そこから黙って何事もなかったように打っていったのです。たまたま地元のTV局がそれをカメラで捉えていたのです。
そのシーンを見た地元の人たちは、「大きな会社の社長があんなことをするなんて、とても信用できない人だ」となり、そんなことをする人が経営する会社の製品も不誠実なものではないかと思い始め、不買運動が始まったのです。売り上げは急激に落ち込み半年後にはとうとう倒産してしまったのです。社長さんにとってはほんの小さなことだったのですが、その小さなことが会社がなくなるほど大きな問題に発展してしまう怖さを伝えたのです。
この"Be Honest"という言葉は今、混迷し始めている世界のリーダーたちに実践してもらいたい言葉ではないかと強く感じています。国のトップや社会的にも立派な地位にいる人たちが正直でないことを平気でするようでは、誰も信じられない世界となり、将来が危険な状況になるからです。
反対にリーダーたちが率先して正直であるならば、信頼を築き上げ、国や自治体そして企業もチームとして強い絆で結ばれる理想的な組織に変貌していくからです。
誰でも自己の保身や見栄のために小さな嘘をつくことが最終的には取り返しのつかない事態にまで進展する怖さを知るべきです。
リーダーこそ率先して"Be Honest"を実践すべきことなのです。
イリーが一番言いたかった部分がそこにあると信じます。