稚拙な試作

8月の金曜日の夜。茹だる暑さで床に融けていた。かつては虫の声も聞かれたが、今やエアコンの音しかしない。虚空を一点見つめて、声にもならない息を吐いた。僅かに温かい手をして、風呂上りか微睡か、考える気概も湧かなかった。
 その日は青天井は見えず、明日から下り坂らしかった。俺は雲が好きだ、青に映える鮮やかな白! 思いに耽っていると、冷たいのが手に当たった。
「少しは動いたらどうだ」
思わず、徐に、漏らしてしまった。はあっと息も漏れた。彼女は何も言わずに目を閉じていた。全く、俺の冷感マット付のベッドで贅沢な奴だ。尤も、自分から横たえたのだが。揺さぶったり足を持ち上げたりしてもウンともスンともいいやしない。こうなるとコイツは全く面白くない。
「はあ…」
ため息を吐いて、未来のことを思案した。これからの2人の事を。まだどっちも若いから、手を引いて逃げてしまうというのもアリはアリだと思った。どうせ両親は許さないだろうだし。
 もうこうなった以上は覚悟を決め込むしかない。だが、まずはコイツをどうするか… 俺は頭を抱えた

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