自重しないエニアグラムタイプ4:自分に溺れるロマンチスト
今回はエニアグラムにおけるタイプ4を見ていきたいと思います。
タイプ4の感受性は、他の人たちと比べても群を抜いています。
自分に正直でどのタイプよりも自分の心を理解し、矛盾や葛藤も含めてすべて受容し、それを独特の表現で表出することに長けています。
よく芸術家と言い表され、実際に何らかの自己表現に突出した才能がある彼らですが……繊細で個性を求めるがゆえに抱えた問題も、決して少なくありません。
個性的な人
タイプ4は「個性的な人」の異名を持つタイプ。
独特で不思議な雰囲気を持つ人が多く、特定の物事に強くこだわったり、繊細で不思議な雰囲気を身にまとっていたり、あるいは詩的で芝居がかった表現を好んだりと、異名に恥じない個性的な人が多いです。
なんというか、とにかく自分色に染まりきってる人が多い感じですね。それぞれ独自のマイワールドを少なからず展開させており、その内に引きこもる感じといえばいいのでしょうか。
一方で他人の世界観をしっかりと尊重することができ、多少不快な考え方や相容れない価値観でも「ああ、あなたはそういう人か」と澄ました態度でスルーできます。
とにかく「みんなから理解されたい願望が薄い人」「変なことがむしろ誇りにすらなっている人」というのがタイプ4の姿ですが……こういう態度を取ってると、まあ集団からも現実からも孤立していきますよね。
タイプ4の欠点は、そんな「いろんなものからいつの間にか離れてしまう」というところにあります。
自分らしさへの執着の裏
このように周囲との関わりや現実的・実質的なアレコレとは一線を引いて我が道を進むタイプ4ですが……その裏には自惚れとも誇りとも、あるいは諦めとも言える1つの固定観念を抱えています。
「自分は自分であり、何者でもない。誰にも理解できない、特別な存在なのだ」
タイプ4の根底には、タイプ2やタイプ3と似たような承認欲求と、「誰も素の自分を認めてくれない」という無力感が存在します。
ですが、タイプ2のような人に取り入って認めてもらう才能もない。タイプ3のように人々を注目させる自己PR能力も無い。
親からの愛情も社会の承認も受け取るだけの価値が無く欠落だらけ。自分が生きていてはいけない存在のような感覚すらある。
こういう複雑な感情の中で、タイプ4は「自分は変わった人間なのだ」と認識し、やがて「変な奴」という自己認識が一種の誇りに変わっていくのです。
変な奴であることで、自分は世界に認識される。人と違うことでのみ、自分が得られなかった物が手に入る。
とにかく「人とは違う特別な存在である」という自認こそが何もかも欠落したタイプ4の拠り所であり、周囲との差別化こそが無力で無能な自分を守る最後の砦ともなるわけです。
そんな強固な個性探究のために現実が犠牲になることもしばしばですが、もとより自分は現実に生きられるような人間でもなし。ある意味無敵の人と化すことも少なくありません。
また、極端に尖りすぎるとそれだけ人もなかなかついてこない事もあるかもしれません。人から関心を持たれるために自分を装飾した「特別な人」が、むしろその特別さのせいでみんなに腫れものとして扱われる……そんなこともあるかもしれません。
陰鬱な激情家
タイプ4は人間関係において、「本当の自分を見てくれる人がほしい!」と願っているところがあります。誰からも興味を持たれなかった分、「本当の自分」を通して最大限の関心を得ようとします。
で、それと同時に、タイプ4って天邪鬼な性格でもあるんですよね。本当の自分を見つけてほしいのに、本心はなかなか話しません。
本心も本性もひた隠しに隠し、それでも相手が全部を暴いて見つけてくれることを願いながら、ぶっきらぼうに、時には自分の本心を見抜いてくれないことに理不尽に逆上したりしながら、心の中で「私を見つけて!」なんてロマンチックなことを叫んでます。
キーワードはこんな感じでしょうか。
「本当の私を見つけられるものなら見つけてみなさい」。無論、簡単に言い当てられても外れても、ふてくされる人は少なくありません。
まあそんな感じに面倒くさい性格のタイプ4ですが、あくまでこんなややこしい本性を見せるのはある程度以上心を開いた相手だけなんですよね。
なんだかんだ、相手に嫌われてるどうかは案外気にします。
とはいえ、当然いろいろ抱えてて不安定なタイプ4です。気分や精神的な健全さにはムラがあり、調子が悪いと溜めてきたいろいろが無尽蔵に爆発するかもしれません。
たとえば私が見てきた中では、みんなで楽しそうに集まってるサークルに割って入って、「うるさい」「つまらない馴れ合い」とよくわからない理由で解散を求めたり、何が迷惑なのかもわからないままお隣さんに「迷惑」「顔を見るのが不快」とクレームを入れたりした人もいます。
おそらく、どれもこれも何かしら妬ましく思うことがあったのでしょう。
こうして時折大爆発を起こしては孤立するのがタイプ4。もっとも、彼らは心の奥底ではそんな不幸を嘆きながらも楽しんでそうではありますが……。
タイプ4の人間関係
基本はネオロマ・ドラマティック。心惹かれる出会いを求め、心惹かれる人を求め、気に入った相手を理想化しては失望し、また理想化の繰り返しです。彼らは人生ではなく、人生を題材としたドラマの世界に生きているのです。
どうしても自分や他人に酔いやすいため、性格に真正面から評価できる人を好きになれればワンチャン現実世界に戻れますね。
タイプ4の囚われは「嫉妬」
タイプ4の囚われは「嫉妬」です。
何かと普通の人とは違ったこと、ダイナミックでドラマチックな出来事を求めがちなタイプ4ですが……そういう感情を抱くに至った経緯は単なるナルシズムでは語りきれません。
タイプ4は、「自分には普通の生き方ができない」と嘆いています。自分には、普通の人と違って致命的な欠陥があるように見えて仕方ないのです。
彼らが特別な存在であろうとすること、自分だけのオリジナリティあふれる世界観を大事にすることは、ある意味どうやっても勝てない「普通の人」への対抗戦略なのです。
健全度ごとのタイプ4
健全状態のタイプ4
現実との調和を選び、改めて自分の夢や理想を、より地に足ついた手段で目指す姿。「自分は特別」という陶酔も「自分は欠陥品」という劣等感も捨て、等身大の自他を見る人たちです。
結果としてタイプ4が繰り返しがちな自己否定に陥ることも少なく、わざわざ特別な存在を目指さなくても自分のオリジナリティに気づいている人たちです。
通常状態のタイプ4
普通の人生を当たり前に生きられる他者への羨望・嫉妬と、自分の理想像を演じてみたり気に入った相手に理想を重ねることによる自己陶酔を繰り返す傾向があります。
感受性が強く心優しい人物ですが同時にヤンデレ気質でもあり、繊細で不安定な人物です。
不健全状態のタイプ4
「どうせ誰もみてくれないんでしょ!」という周囲への恨みに似た感情を見せることも多く、被害者を演じて自己憐憫に浸ってみたり、他人に対して優しくしたり不満をぶつけたりを繰り返します。
他人も嫌い。世界も嫌い。そんなすべてに受け入れられない自分も嫌い。全部を嫌うあまり八方塞がりになりやすく、通常段階よりもさらに危うさを増します。
ウィング
ウィングの解説は以下をご参照ください。
4w3:貴族
自分らしさへのこだわりが高いほか、承認欲求も高いタイプです。
唯一無二の自分自身を見つけて「自分はこんな人なんだ!」と周囲に喧伝し、それを認められることを好みます。そのためには時折自分自身とはかけ離れた自己像を持ったり、弱みや隙を見せずに知的でスタイリッシュな自分を演じようとするところがあります。
自分自身の性格や本質がどうというよりは、「特別な自分を周囲に受け入れさせたい、尊敬されたい」という自己顕示欲を満たす方に興味を持ちやすいですね。
4w5:ボヘミアン
タイプ4の「本当の自分を探したい」「特別な自分を演出したい」という欲求のうち、特に前者が強く出やすいのがこのウィングです。
4w5の人たちは、人からどう思われるかとかあまり考えていません。そんなことより自分探しです。自分とは何者かとか自分のもっと深いところを知りたいとか思いながら、自分の殻に引きこもります。
自分を演出してウットリする4w3と違い、自分という人間を考え、想像してウットリしている人たちですね。
本能のサブタイプ(自己保存、ソーシャル、セクシャル)
サブタイプによっても、タイプ4の性格は大きく変わります。
自己保存 :我慢と不幸が持ち味タイプ
ソーシャル:誰かが助けてくれることを願う人
セクシャル:嫉妬と敵意、自分こそナンバーワン
一言で表せば、だいたいこんな感じでしょうか?
詳しくは、以下をご覧ください。
一歩引いた視線を持つのが大事か
タイプ4がこれだけ面倒くさい人物になってしまった理由は、ひとえにいろんな感情や思いが大きすぎるからといえるかもしれません。
嫉妬心や羨望、優越感といったいろいろな感情が入り混じり、もしかすると自分でもよくわかんなくなってることもあるかもしれません。
感受性が強くアンテナが敏感なのがタイプ4ですが、それだけに自分の気分に自分で振り回されてるところもあるのでしょう。
人生の酸いも甘いも最大限まで噛み締めて自分の個性へと変えていき、見えるものだけでなくその裏まで見ようとする。この姿勢は非常に強い独自性と感性を生み出すタイプ4の強みの1つですが、それが行き過ぎると今度は別の問題点も生まれます。
悲しみや苦しみなどなど、いろいろな思いを感じてしまう前に、1歩引いて自分の感情と事実が合致しているかを俯瞰して確認。これができるだけで、タイプ4は見違えるほどに生きやすくなります。
冷静になって事実だけを考えることは、必ずしも自分らしさや自分の世界を損なうものではありません。まずは試しに、「事実」と「感想」の区別、時折の「今置かれた現状や現実のチェック」といったところから始めてみてはいかがでしょう。
1日1度でも、自分の感情を抜きにした事実だけの確認を行うだけで、気持ちも楽になるかもしれません。
あとは、自分の理解者を感情のはけ口にしないこと!残念ながら、周囲がどれだけ関心を持っていてもあなた以外の存在を頭から抹消することはできません。
本心を見つけるための探偵ゲームだけが、人との深い係わり合いではありません。あなたのためにすべてを捨てる覚悟がなくても、「ちょっと面白そう!」「少ししゃべってみたい!」と思ってくれる人もいます。そのことを頭に入れて、もう一度世界を見てみてください。たぶん、あなたの味わっている深みもロマンスも、案外失っていないはずです。
※なお、不健全な場合はその限りではありません。詳細は以下をご参照ください。
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