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真実だけの世界・国際編(SS;2,500文字/エレクトロニック・ショート・ショート・カタログ)印刷版に掲載されていない作品です

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 ニューヨークの国連本部では、総会の一般討論演説が始まろうとしていた。
 演壇には、各国代表者の皮切りに、A国のチャランプ大統領が上がった。

「いよいよですね」
「ああ。これほどの宣伝舞台は他にない」
「うまく行きますかねえ」
「機能自体は問題ない。心配は、各国首脳の反応だ」
「でも、知らせてはいないんでしょう?」
「ああ、事前に知らせたらたいへんな騒ぎになる。事務総長と、ごく一部の人間しか知らないはずだ」
 エレクトロニック・ショート・サーキット(ESC)社の幹部は、固唾かたずを呑んで中継のモニター画面を見つめていた。

 日本で高性能の《ウソ発見器》、通称《ライファイ》が開発され、国会は《真実だけの世界》に変わった。それが事務総長の耳に入り、国連でも試用したいと引き合いがあったのだ。

「今回、ブザーは鳴らないんですよね?」
「ああ。ただし、ほら、演説台の右側に小さなランプがあるだろ? あれが点灯するんだ」
「……なるほど」
「これで、事後にメディアにリークすれば、《ライファイ》の国際市場への展開には一挙に弾みがつく」
「……はい」

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