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プロスポーツと『距離』

先週、岐阜県可児市の富士カントリークラブ可児ゴルフ場で日本プロゴルフ選手権大会が開催された。
知人の厚意でチケットをいただき、生まれて初めてプロゴルフのギャラリーなるものに参加してみました。
ゴルフ自体、ジジイになってから始めたので知識が乏しいのですが、PGA選手権は参加資格がかなり限定されるメジャー大会のひとつだそうです。

これまでの人生でプロスポーツの観戦といえば、野球にほぼ限定されます。
NPBで中日球場、名古屋ドーム、神宮球場、後楽園球場、横浜球場、西宮球場、MLBではシアトル、デトロイト、ミネアポリスの球場を訪れている ── あ、AAAのToledo球場にも行っている!

野球以外では『再勉生活!』時代にプロレスの試合、米国勤務時代にアイスホッケーの試合を1回ずつ観戦したことがありますが、カウントする必要はないかな……。

さて先週土曜日、開始30分ほど前に会場に乗り込み、1番ホールの最前列に折り畳みのキャンピングチェアをセットして待ち構えます。

1番ホールのティーイングエリアに陣取る

ここで最終組の杉浦悠太プロ、蟬川泰果プロ、清水大成プロの3人までずっとティーショットを観ていました。
(近いなあ……)
プロ野球との違いは選手との『距離』の近さですね。バックネット裏よりさらにさらに近い……2 mぐらいかな。間にはネットもないし。
ずっと見ていると、やはり金曜までにいい成績を出した最終組の3人はショットの距離も正確さも断然すごかったですねえ。
「スゲー!」
同行者と顔を見合わせます。
それはいいのだけど、右隣に座っているジーサンとの距離も近く、こいつが毎回、デカい声で、
「ナイスショット!」
「グッドショット!」
と叫ぶ、しかもボールの飛んだ方向 ── そして、それは私の顔の方向でもある ── に向かって ── には参りましたねえ。
(オレの耳に向かって叫ぶな!)
そして、小さな声ではあるが、
「……あああ、バンカー……か?」
なども口走る ── 選手にも聞こえるだろう。
(……いやいや、オレじゃないよ、隣のジーサンですよ)

最終組のショットになると、取り囲むギャラリーは何重にもなり、彼らが打ち終えると、ぞろぞろと2打目に向けて移動する。

うん、この『移動』というのも野球などのスタンド座りっぱなし観戦にはないポイントですね。
いや、それ以前に、人気プロ・活躍プロとそうでない人たちとのギャラリー数の差は歴然で、これもスタンド観戦とは異なる、ある意味残酷シビアな特徴です。

1番ホールのティーイングエリアから、9番ホールのグリーン周りに移動します。
さすがにプロなので、ほとんどのショット(パー4のセカンドショット)はグリーンをとらえますが、中にはギャラリーの中に飛び込んで来るボールがある。
プロ野球でも外野席にはホームランボール、そして1塁側3塁側の観客席にはファウルボールが飛びこんできますが、野球と違って小さく、空の色に溶け込んでいるので、すぐそばに来るまではわからない。

「ボールには十分ご注意ください。万一の場合、応急処置はしますが、補償はいたしません」
最初にアナウンスがありましたが、これは確かにある確率で事故は起き、ある確率で大事おおごとになるでしょうね……。

うーん……しかし、これは、『トレードオフ』というものかもしれない。選手との距離が近ければ近いほど、こうしたリスクもあるわけだ。

AAAの記事に書いたけれど、マイナーリーグでは、

日本の球場と違って、1塁側・3塁側に「防球ネット」がない。当然、ライナー性のファウルボールが飛び込んでくる場合もあります。

「真のアメリカ野球文化はAAA(トリプルA)にこそある」説(エッセイ)|Pochipico (note.com)

しかし、防球ネットがあるMLBと比べて、選手とファンとの間の(精神的)距離がかなり近く、ファンの間にも『オレたちのチーム』感が強い。
全ては『トレードオフ』であーる!

9番グリーンにやってきた最終組;(左から)蝉川さん、杉浦さん、清水さん

『距離』の話はここまでですが、野球とゴルフの最大の違いは当然、チームスポーツか個人競技か、という点でしょう。
(キャディさんと2人のチーム、ではあるけれど)

野球の場合はヒットを打っても後続が凡退してホームに戻れなかったり、いいピッチングをしたのに味方がエラーした、なんてこと、頻繁にありますよね。
でも、ゴルフはひとりで全責任を背負わなくちゃならない。
「今日は低めを審判がストライクにとってくれなかった」
なんてことも言えない。言い訳ができない。全てが自己責任です。
もちろん、突然強風が吹いたとか、木の根元にボールが転がったとか、制御困難な突発インシデントはあるでしょうが、それも含めての全てが自己責任なのでしょうね。

途中段階でのスコアボードにギャラリーが集まっていた

『個人競技』── だからこそ、ギャラリー(そのほとんどはアマチュア・プレイヤー)は(技量に相当な差があったとて)自身と選手を重ね合わせて観ているのかもしれない。
それも、スタンドで観る野球などとは違う点なのでしょう。

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