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ごあいさつ

 時下、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、このたび、ショートショート風・弊社商品カタログをお届け申し上げるにあたり、ひと言ご挨拶をさせていただきます。

 20世紀は機械文明と都市文明の時代でした。電子機器や移動機器に代表される数々の装置が発明され、それらの装置が都市文明を牽引し、その都市文明がまた新たな機器を必要とし開発を促す ── 即ち、機械文明と都市文明が互いに刺激し合い、スパイラル(螺旋)的発展を遂げてきたわけです。
 その中で、不便さや問題点を解決するために開発した機械や装置が、さらにやっかいな問題を引き起こしているのではないか ── という警鐘も鳴らされ、その反省から反・文明的思想も生まれてきました。

 そして迎えた21世紀は、飽和に近づいた機械文明・都市文明から「自然」「人の心」への回帰の時代、言い換えれば「環境との共生」「優しさと癒し」の時代、などと言われています。同業他社を見ましても、このような単語を盛んに散りばめたイメージ広告を多用し、企業が本来持っている「売らんかな」という欲望の隠れ蓑にしております。

 しかし、その中にあって我がエレクトロニック・ショート・サーキット(ESC)社はあえて、
・21世紀こそむしろ、「人の心」と「機械・装置」との融合、いや、相互作用しながらもう戻れない道を暗闇に向かって突き進んでいく、行方知れないスパイラルの時代である
── ととらえております。
 すなわち、
・20世紀型の機械や都市文明が引き起こす、人と人の心の軋轢あつれきを解決するための機械や装置を開発すること、そしてさらにその機械や装置が人間関係にもたらす、より深刻な諸問題を解決するためにさらに別の装置を開発すること
── これこそ、我がESC社の使命であり、弊社が永遠に利益を上げ続けることができる、ビジネスのスパイラルです。

 世の中では自然への回帰主義も台頭しておりますが、むしろ我が社はその中で居直り、人工世界に居座り、お客様の真のニーズにお答えしていく所存でございます。

 今後ともますますのご支援をお願い申し上げます。


2003年5月15日
エレクトロニック・ショート・サーキット社
代表取締役社長
羽仁 寅彦


単行本『エレクトロニック・ショート・ショート・カタログ』発売時の序文です。

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エレクトロニック・ショート・サーキット(ESC)社は、今日もトンデモ商品を開発して世に送り出し、社会に幸福と混乱を巻き起こします。 かつて…

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